【独自解説】200年の中立を捨てスウェーデンがNATOに加盟 バルト海を“封じられた”プーチン大統領 次なる一手は“核の脅し”⁉さらに、期待する「トランプ氏の再選」

【動画で見る】【タカオカ解説】実は軍事大国のスウェーデンがNATO加盟 バルト海を“封じられた”プーチン大統領が期待するのは「トランプ氏の再選」⁉

2月26日、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟をめぐる採決が行われ、加盟が承認されました。スウェーデンはロシアのウクライナ侵攻を受け、200年超続いていた軍事的中立の立場を転換し、フィンランドと共にNATO加盟を申請していました。スウェーデンがNATOに加わったことで、ロシア海軍にとって要衝であるバルト海がNATO加盟国に囲まれることになり、ロシアへの抑止力を高めることにつながるとみられています。果たしてウクライナとの戦争に影響はあるのか?「読売テレビ」特別解説委員・高岡達之が徹底解説します。

ウクライナ戦争から2年、“軍事大国”スウェーデンがNATO加盟 ロシアが支払う「高い代償」

(「読売テレビ」特別解説委員・高岡達之)

「ウクライナの戦争が始まって約2年、全く終結の方向が見えていませんが、2月26日さらに世界情勢を揺るがす大きなニュースが入ってきました。予想されていたことですが、NATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請していたスウェーデンの加盟を全加盟国が賛成したということです。『平和を愛する“軍事大国”』のスウェーデンがNATOに入ったということは、ロシアからすると『入られてしまった』ということになります。ロシアは大変高い代償を払うことになった、というのが今回の解説です」

(高岡)

「世界がトップニュースにする理由は、スウェーデンは、200年以上『どこの陣営の味方もしない』中立の方針を続けてきましたが、それを切り替えて、NATO 陣営に入るということです。最後まで反対をしていたのがハンガリーです。それはハンガリーの悲しい歴史を見れば分かります。ハンガリーは、今NATOの加盟国ですが、ずっとスウェーデンの加盟に反対していました。ハンガリーは、今はロシアと接していませんが、ソ連時代はソ連に接していました。ウクライナの戦争が始まったとき『「ロシアには腹が立つし、抵抗して欲しいが勝てないだろう。だからロシアを刺激しない方がいい」とハンガリーの政治家たちはずっと言っていました。ハンガリーは1989年、旧ソ連が崩壊するまで30年近くに渡ってロシアの戦車によって自分たちの国を事実上占領されるような時代を過ごしました。ものすごく市民は戦って、たくさんの人が亡くなりました。アメリカが支援するといったのですが結局アメリカ軍は来ませんでした。今のウクライナと全くそっくりの流れでした。だからハンガリーは『ロシアを刺激しない方がいい』と言っていたのです」

(高岡)

「そのハンガリーが、最終的にスウェーデンの加盟に合意をした理由について、ハンガリーの首相は、『とてつもない信頼をスウェーデンからもらった』と言っています。スウェーデンの民話に出てくる翼を持った架空の獅子『グリペン』の名を冠する戦闘機があるのですが、そのかなり新しい型をハンガリーに渡します。これはロシアにとってか大変な脅威です。この戦闘機は、機体が小型で、整備も3人でエンジンが交換できるほど簡単で、電子戦に強いものです。ロシアを想定してロシアに勝つために作られた戦闘機だといわれています。ロシアが得意なのは、色んな電波を使って相手をかく乱することですが、この戦闘機はロシアの能力をさらに上回るといわれています。例えば、1機しかいないのにロシアのレーダーには何機にも映るという技術を持っているといわれています」

(高岡)

「また、この戦闘機は雪の中でも離着陸できます。雪の中の作業にも慣れています。しかも、スウェーデンの高速道路は幅17mに統一されていて全部滑走路になり、高速道路に離発着できます。そして、普通の戦闘機は1回作戦が終わると次まで3時間ぐらい準備がいるのですが、この戦闘機は最短10分でまた空に上がれます。そういった恐ろしいものをスウェーデンは作って、それを諸外国に渡すことで力を維持してきました」

(高岡)

「もう一つロシアが嫌なのは『浮かんでこない潜水艦』です。ロシアとスウェーデンの間にはバルト海という海があります。日露戦争で有名なバルチック艦隊の名前はこのバルト海から来ています。このバルト海はロシアにとっては“自分たちの海”なんです。同時にスウェーデンはたくさんの小型の潜水艦を持っています。この小型潜水艦は浮かび上がらなくてもいいんです。普通ディーゼルエンジンだと空気がいるのですが、大きなバッテリーが開発されて、酸素も液体で積んでいるので、原子力じゃないのに上がってこない。そしてロシアの潜水艦の動きが筒抜けということになります」

(高岡)

「さらに、スウェーデンはロシアの飛び地・カリーニングラードの真正面に細長い島『ゴットランド島』を持っています。ここはアニメ『魔女の宅急便』のモデルにもなった、大変穏やかで豊かで静かな島なんですが、ここにはグリペン戦闘機が悠々と離発着できる空港があります。現在、基地はありませんが軍人は居ます。スウェーデンはNATOに入ってしまったので、この島の空港の滑走路を伸ばしてアメリカ軍の大きな偵察機が降りられるようになったら、ロシアとしては全部筒抜けになるので、プーチン大統領としては、大変高い代償を払わされたということになります。ロシア軍を再配備するとなると大変なお金が掛かりますし、動員令までかけてウクライナに投入しているロシアの若い人をここへ持ってこないといけなくなります。ですので、この次に欧米が警戒しているのが『核の脅し』をまた言いだすのではないかということです」

プーチン大統領が期待するのは「トランプ氏の再選」⁉アメリカ大統領選へ介入の可能性も…

(高岡)

「そんな中、やっぱりプーチン大統領はトランプ前大統領の再選を期待しているんだろうと思います。トランプ前大統領は、良い悪いは別にして現状を変えてしまう人です。この人はもともとNATO嫌いで有名です。どういう思い込みか知りませんが、『NATOはカネを出さない。なんで俺たちが守ってやらなければならないんだ』というのが自説の人です。2月にも『軍事費を払わないNATO加盟国は守らない。ロシアに好きに振る舞うように促す』とまで発言しています。プーチン大統領は『バイデン氏が勝つ方が望ましい』といっていますが、『バイデン氏は予測しやすい古いタイプの政治家だ。』とも言っています。ということはバイデン大統領が続投すると、結局はアメリカのウクライナ支援は変わらないということです。しかし、トランプ前大統領が大統領になればウクライナへの支援は止めるということです。『バイデン氏が勝つ方が望ましい』というのは裏返して、トランプ前大統領に勝って欲しいと解釈する専門家の方が多いわけです」

(高岡)

「そうすると、アメリカでこれから警戒されてくるのが『ロシアのアメリカ大統領選への介入』です。ロシアは以前にもコンピューターやSNSを使って介入した疑惑があります。プーチン大統領は『是が非でもとなると何でもする人だ』といわれています。今後スウェーデンのNATO加入がどういう波紋を巻き起こすのでしょうか?」

(「かんさい情報ネットten.」2024年2月27日放送)

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