残業規制まで半月 青森県内運送業者、運行回数削減を決断 値上げ交渉は進まず

青森定期自動車(青森市)の10トントラック。同社は4月以降、首都圏への長距離輸送を減らす予定だ(画像を一部加工しています)

 4月からのトラック運転手の残業規制開始まで半月を切った。複数の青森県内運送業者は運転手の残業を規制内に収めるために長距離輸送の回数を減らすことを決断。回数を減らしても収益や運転手の給与水準を維持するには運賃の引き上げが不可欠だが、荷主側との値上げ交渉は依然として十分に進んでいない。本年産の農産物を県外に運ぶ運賃は今後決まっていくが、県内業者は「根気強く交渉を続ける」構えだ。

 「運行回数の削減分、売り上げは減るが、ドライバーの給料は何とか維持したい。燃料も高騰しているので赤字になる可能性がある」。青森定期自動車(青森市)の齋藤武男社長は残業規制導入後の経営に頭を悩ませる。

 運転手の残業時間は4月以降、年960時間以下に制限される。同社は首都圏への長距離輸送を運転手1人当たり月7、8回から6回程度に減らす方向だ。

 対策として、運転手1人が行っていた荷積みと首都圏までの輸送を2人で分担する方法を昨年から試験的に導入。長距離担当の運転手に県内輸送の仕事を割り振ることも検討している。

 他の業者も運行回数を減らしたり、九州地方への運送の仕事を断るなどしたりして残業規制に対応する予定。減収が避けられない中では運賃の値上げが必要だが、荷主側との交渉に苦労するケースが少なくない。

 運送業者は仕事を発注する側の荷主よりも立場が弱く、長年低運賃を受け入れてきた。他社との競争から、低運賃を提示する業者が後を絶たないことが交渉の妨げになっており、「値上げに向けて業界が一枚岩になれていない」(県内運送業者)。県トラック協会の調査では、交渉しない理由を「他業者に切り替えられる懸念」のほかに「荷主の経営も厳しい」とする意見もあった。

 県トラック協会の森山慶一会長(八戸市・共同物流サービス社長)は、2024年問題について「運送業者側の対応に遅れがあった」と自戒を込めて語る。働き方改革関連法が施行された19年から5年間、運送業など4業種は残業規制の適用が猶予されていたが「業界が24年問題に本格的に取り組み始めたのは23年春ごろから。認識が甘かった」と明かす。

 県内業者は24年産のリンゴや野菜などを県外に配送する運賃を巡り、荷主側と交渉中。弘南運輸(弘前市)の小山内芳親社長は「期待通りに進んでいないが、値上げに理解してくれる荷主も出てきている。交渉のトーンを上げていきたい」と話す。

 国も、運送業者が受け取る目安となる「標準的な運賃」を平均で8%引き上げるなどして、賃上げを後押しする方針。ただ標準的な運賃は強制力がない。

 県トラック協会の佐藤豊副会長(弘前市・弘前貨物社長)は国の方策がかけ声倒れに終わることを危惧し、「残業時間を法律で規制するならば、標準運賃も目安ではなく法制化するべきだ」と強調する。

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