住宅ローン控除は借り換え後は原則適用されない
住宅ローンを利用し、確定申告など所定の手続きを行うと住宅ローン契約者の所得税などが一定期間にわたって減税される「住宅ローン控除」が利用できます。
しかし、金利負担の軽減などを目的に、より条件のよい住宅ローンに借り換えを行った場合、原則として借り換え後は住宅ローン控除は適用外となってしまいます。
これは、住宅ローン控除がマイホームの購入や注文住宅の建築、リフォーム資金などマイホームを取得することを目的とした借入金であることが前提のためです。
住宅ローンの借り換えた場合、その資金性質はマイホームの取得ではなく借入金の返済が目的と解されるため、住宅ローン控除の適用外となってしまうのです。
借り換え後も引き続き住宅ローン控除を受けるにはどうしたらいいか
金利負担が減っても住宅ローン控除が受けられなくなってしまったら結果的に損をしてしまうかもしれません。そこで、一定の条件を満たすことで、借り換え後も引き続き住宅ローン控除の適用を受けることができるようになっています。
具体的には、借り換えが住宅ローンの返済であり、借り換え後の住宅ローンの返済期間が10年以上あるなど、従前の住宅ローン控除を受けるための条件に合致していれば借り換え後も住宅ローン控除の適用を受けることができます。
しかし、住宅ローン控除の期間や控除率などの諸条件は従前の住宅ローンのものを引き継ぎます。2回以上の借り換えを行った場合も条件を満たせば適用を受けることができますが、借り換えにより住宅ローン控除の期間などがリセットされるわけではないので注意しましょう。
住宅ローン控除の特例が受けられないとどれくらい損をするのか
もし借り換えによって住宅ローン控除が適用外となってしまった場合、どれくらいの損失になるのでしょうか。
4000万円(元金の年間返済額100万円)の住宅ローンを組んでおり、住宅ローン控除を10年間・年末残高の1%で所得税などの控除を受けていた場合に5年経過時点で適用外になったとして、その損失額を計算してみます。
住宅ローン控除の控除額は住宅ローンの年末残高が算定の基準となるので返済が進むにつれて控除額は減少していきます。
今回の試算では毎年100万円ずつ返済するため、控除額は1万円ずつ減少するとして、返済1年目~5年目の控除額の合計は185万円。そして本来受けられた6年目~10年目の控除額の合計は160万円となり、これが損失額となります。
まとめ
住宅ローン控除は原則として借り換え後は適用外となってしまいますが、借り換えの目的が住宅ローンの返済であることや借り換え後の住宅ローンの返済期間が10年以上あることなどの一定の条件を満たせば借り換えの回数にかかわりなく引き続き適用を受けることができます。
しかし、従前の住宅ローン控除の条件を引き継ぐため、借り換えによって控除期間が延長される訳ではありません。
住宅ローン控除は金額が大きいため適用外になってしまうと借り換えのメリットが損なわれてしまいます。借り換えの際は適用外とならないように注意して行うようにしましょう。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表