刺身で食べられるサバ「お嬢サバ」に続く新ブランド・妹分の「さばみちゃん」誕生 “女性ができる水産業”目指して…開発の思い

「サバを生で食べる」と言うと、首を傾げる人も多いかもしれません。
でも、きれいな水で大事に育てたサバなら、寄生虫などの心配もなく“生”で食べられるんです。鳥取県岩美町で行われているサバの陸上養殖で、「お嬢サバ」に続いて「さばみちゃん」というブランドが誕生しました。

鳥取県岩美町の網代漁港。
海に突き出た突堤に、9つの水槽を備えたマサバの養殖施設があります。
ここでは2015年にJR西日本が養殖事業を始め、当初から水の確保などに携わっていた鳥取市のタシマボーリングが2021年に事業を引き継ぎました。
JR西日本から受け継いだブランドが「お嬢サバ」、タシマボーリングは更に「べっぴんサバのさばみちゃん」という新しいブランドでも生産を始めました。

タシマボーリング 地下海水井戸陸上養殖センター 田島美佳センター長
「さばみちゃんはお嬢サバとはエサを変えてまして、特に岩美特産のものとかを使ってみたりしています。」

さばみちゃんのエサにはこれまでなかったユズの皮やビール酵母、地元で獲れた海産物の粉末を加え、お嬢サバとの差別化を図りました。
エサも特別な妹分が「さばみちゃん」なのです。

この陸上養殖センターの最大の特徴が、地下からくみ上げた海水を使っていること。井戸や温泉を掘る技術を有するタシマボーリングが畑違いの養殖事業に当初から関わっていたのは、これが理由です。

サバに寄生虫が付くのは外海を回遊しているからですが、地下からくみ上げた海水はきれいで、そんな心配が要らなくなります。

タシマボーリング 田島大介社長
「まずは、寄生虫ですとか不純物が地中の土に濾過されることによって入ってこないというところがメリットです。あと、地中熱ですね。地下の熱によって水温が安定化されて、魚たちが最も食欲がわく温度が保たれる、そこもメリットになります。」

悪い虫がつかないお嬢様のようなサバだから「お嬢サバ」、そしてその妹分のさばみちゃん。
エサのビール酵母を提供する地元の人に料理してもらいました。

サバは火を通さないと…というのが一般的なイメージですが、寄生虫の心配が要らないのでここのサバは刺身で、つまり生のまま食べられます。
季節による海水温の変化の影響を受けず、温度が保たれる地下海水だから一年中が旬の味。
最後に皮を炙って仕上げたお造りとお酢でしめた「きずし」をいただきます。

日野彰紀記者
「では頂きます。私がイメージしているサバとは全く違うんですね、トロトロで甘みのある、そんな味ですよ。」

陸上養殖センターの仕事は、エサやり、水槽の掃除、そして出荷作業など。
中心となって働くスタッフは女性だけでまかなっています。
そのひとり、橋尾さんは、2月からここで働き始めました。

スタッフ 橋尾佳那さん
「自然に関わる仕事がしたかったので、丁度その機会をいただいて。色々これから学ばせてもらおうかなという感じで。美味しいサバを育てるのに、水槽の掃除とかもしっかり自分たちがやっていかないといけないので、やりがいもあって楽しいです。」

女性に過度な負担がかからないようにと、職場の働き易さも考えています。
楽に水槽を掃除できる専用の道具を導入したほか、紫外線を防ぐ屋根やネットを取り付けて、日焼けしないよう配慮しました。

タシマボーリング 田島大介社長
「女性ができる、やれる水産業を作ることによって、永続的に続けられる水産業というものが構築されるんじゃないかということを考えて、そこを目指してやっています。」

出荷のためにサバを締める作業をしているのは、田島みよさん。
社長とセンター長の娘です。

Q.この仕事をすると思っていました?
田島みよさん
「思ってなかったです。色んな経験ができて楽しいです。」

お嬢サバ、さばみちゃんと実の娘。
社長はどちらも大切にしたいと思っています。

タシマボーリング 田島大介社長
「ある種サバを育てるよりも難しいところもあったりして、大変なところもあるんですけど、すごく楽しんでやっているんでこちらも活気をもらいながらやれています。」

JR西日本から受け継いだブランド、「お嬢サバ」だけを頼りにするのではなく、独自のブランドも加えて販路拡大を目指す。
つまり養殖事業の命運を託すのが、新ブランドの「さばみちゃん」。
社長はそのネーミングの由来を、妻の美佳さんと娘のみよさんの名前の「み」だと明かしました。

タシマボーリング 地下海水井戸陸上養殖センター 田島美佳センター長
「一番最初はやっぱり大変かなと思ったんですけど、色々設備とかもきちんとしてくれているので、その辺はやりがいをもってできています。」

栽培漁業センターから買ってきたサバの稚魚が出荷できるようになるまでにおよそ1年。
きれいな地下海水で大切に育てられたさばみちゃんは、今年の夏頃に本格的な出荷の季節を迎えます。

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