3月15~16日、ブラジル・サンパウロにて2023/2024年“シーズン10”ABB FIAフォーミュラE世界選手権の第4戦サンパウロE-Prixが行われ、サム・バード(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)が2年ぶり自身12回目の勝利を飾った。そして、シーズン9から参戦を始めたマクラーレンにとっては待望の初優勝となった。
日本から参戦するニッサン・フォーミュラEチームは、オリバー・ローランドが2戦連続の3位表彰台を獲得。サッシャ・フェネストラズは14番手から3ポジションアップの11位でレースを終えている。
今年で2回目の開催となったサンパウロE-Prix。小刻みなバンプも見られる当地の市街地コースは、サンバのカーニバルが有名なアンヘムビ・サンバドロームをメインストレートに据え、直線区間と激しいブレーキ区間が交互に続くレイアウトが特徴となる。
このコースは中速コーナーが少なく、アクセル全開時間も増えるために回生給電がしづらいレイアウトであると言われている。さらに、長いストレートで先頭を走るマシンにとっては、空気抵抗が増えるためにエネルギーのロスが大きくなることも懸念事項のひとつだ。
午前中に行われたデュエル形式の予選では、今季の優勝者が早々に敗退を喫してしまう波乱もありながら、最終デュエルでパスカル・ウェーレイン(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)とストフェル・バンドーン(DSペンスキー)が激戦を演じ、0.002秒の超僅差でウェーレインがポールポジションを獲得した。
迎えた決勝は気温35度、路面温度60度の猛暑となり、普段はスタート前に熱入れとして行うバーンアウトを避けるほどの暑さのなかでスタートが切られた。クリーンな幕開けとなったレースは、先頭スタートのウェーレイン、バンドーンに続いて、昨年の同レースを制したミッチ・エバンス(ジャガーTCSレーシング)、ジャン-エリック・ベルニュ(DSペンスキー)、バードらがなす先頭集団がリードしていく。
フォーミュラEの決勝レースでは、50kwの出力向上が可能なアタックモードを2度使用することが義務付けられている。決められたコーナーのアウト側に設置されている所定のエリアを通過することで、アタックモードを1度使用することができるが、それに伴ってポジションを下げてしまうことが多く、使用のタイミングが勝敗を大きく左右する傾向にある。
先にアタックモードの使用を選択したのは、ウェーレインとバンドーンの2台。入り乱れる集団を切り抜けて先頭に立ったバードは、アタックモードを使用しながらも首位をキープし、すぐさま2度目のアタックモードを使っていち早く2度の使用義務を消化した。
8周目には、後方で起きた接触によって出たデブリの回収のためにセーフティカー(SC)が導入されるも、ここでは1周でレース再開。リスタート直後に、先頭集団は各車アタックモードの使用を選択し、順位が目まぐるしく入れ替わる。
ここで、予選で中盤に落ち着いていたデニスもペースアップし3位に浮上、先頭集団に加わっていく。以降もポジションの奪い合い、もしくはエネルギーキープのための譲り合いが続く展開となる。
しかし迎えた16周目、ポイントランキングをリードするキャシディが、ターン9アウト側のウォールに接触した影響でマシンをストップ。これを見た各車はすぐさまアタックモードを使用し、レースは2度目のSC導入となった。
レースは20周目に再開。残り周回が10周と少なくなってくると、バード、エバンス、ウェーレイン、デニスの順となった先頭集団の戦い方は一変し、バッテリー残量を見ながら状況を静観する展開となる。
先に牙を剥いたのは2番手のエバンス。首位を奪って逃げを図るも、バードがただひとり追随していく。ふたりに絞られた優勝争いは、迎えた最終周のラストセクションまで白熱し、追いかけるバードがアウトから華麗に抜き去って決着となった。今年マクラーレンに移籍した彼にとっては自身2年ぶりとなる、12回目の勝利を決めた。
また、レース再開時に7番手にいたローランドは残り3周でスパートをかけ、5番手に浮上。迎えたラストラップの最終コーナーにて、目の前で3番手を争うデニスとウェーレインのインを突いてオーバーテイクし、2戦連続となる3位表彰台を獲得した。
ポイントランキングでは、キャシディが57ポイントで首位をキープ。そして4位獲得のウェーレインが53ポイントで2位に浮上している。次の大会は初開催となる第5戦東京E-Prix。3月29~30日に、江東区有明の東京ビッグサイト周辺にて開催される予定だ。
■2023/24年フォーミュラE第4戦サンパウロE-Prix 順位結果
Pos. No. Driver Team Time/Gaps Grid
1 8 S.バード ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 53:03’071 5
2 9 M.エバンス ジャガーTCSレーシング 0.564 4
3 22 O.ローランド ニッサン・フォーミュラEチーム 3.540 11
4 94 P.ウェーレイン タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 3.629 1
5 1 J.デニス アンドレッティ・フォーミュラE 3.722 10
6 13 A.F.ダ・コスタ タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 5.567 8
7 25 J-E.ベルニュ DSペンスキー 6.006 3
8 2 S.バンドーン DSペンスキー 6.817 2
9 7 M.ギュンター マセラティMSGレーシング 8.085 22
10 16 S.ブエミ エンビジョン・レーシング 8.610 18
11 23 S.フェネストラズ ニッサン・フォーミュラEチーム 9.277 14
12 48 E.モルタラ マヒンドラ・レーシング 9.762 6
13 11 L.ディ・グラッシ ABTクプラフォーミュラEチーム 10.819 15
14 21 N.デ・フリース マヒンドラ・レーシング 13.677 13
15 18 J.ダルバラ マセラティMSGレーシング 14.379 16
16 33 D.ティクトゥム ERTフォーミュラEチーム 17.884 20
17 17 N.ナト アンドレッティ・フォーミュラE 18.889 21
18 4 R.フラインス エンビジョン・レーシング 19.124 17
0 5 J.ヒューズ ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム DNF 12
0 37 N.キャシディ ジャガーTCSレーシング DNF 9
0 3 S.セッテ・カマラ ERTフォーミュラEチーム DNS 19
0 51 N.ミューラー ABTクプラフォーミュラEチーム DNF 7
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