「牡蠣(かき)」を食べすぎるとどうなる?知っておきたい牡蠣のメリット&デメリット

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牡蠣に含まれる栄養素には、健康によい作用を持つものが多い反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!

管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、牡蠣の食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。

免疫維持やアンチエイジングに!牡蠣を食べる「メリット」

牡蠣は世界中で食べられている貝の一種で、うま味がたっぷりと詰まった食べごたえのある身が特徴です。日本では、おもに冬から春にかけて真牡蠣が、夏は岩牡蠣が出回っています。生のままはもちろん、焼いたり煮たり揚げたりしてもおいしく食べることができ、栄養の豊富さとクリーミーな味わいなどから「海のミルク」と呼ばれることも。

そんな牡蠣には、おもに次のような栄養素が多く含まれています。

・ビタミンB12
・亜鉛
・銅
・タウリン

これらには、神経機能や血液細胞の機能や発達を維持する、正常な免疫機能を保つ、動脈硬化を予防する、心臓や肝機能を高める、などといった働きが期待できますよ。

このように、牡蠣を上手にとり入れることで健康増進だけでなく老化防止にもよい影響が期待できるでしょう。

痛風発作や貧血も?牡蠣を食べすぎる「デメリット」

多くのメリットが得られる牡蠣ですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。

痛風の原因になる

牡蠣にはプリン体という成分が含まれています。100gあたり184.5mg含まれており、むき身の牡蠣(※)8個ほどで、尿酸値が高かったり痛風のリスクがあったりする人は1日の摂取制限(400mg)のほとんどを摂取してしまうことに。

食品中のプリン体は、体内で分解されると尿酸という成分へ変わります。通常であれば尿酸は腎臓から尿とともに排泄されますが、過剰にプリン体を摂取したり排泄が間に合わなくなったりすると血液中で結晶化しやすくなってしまうのです。
結晶化した尿酸は関節などで炎症を起こし、耐えがたいほどの激痛や腫れを伴った痛風症状を引き起こします。

痛風は、足の親指の付け根に多く発症しやすいことは知られていますが、それ以外にも足・膝・手などの関節に生じることも……。
悪化していくと、腎機能が低下したり尿路結石などができたりすることもあるため、プリン体を含む牡蠣の食べ過ぎには注意が必要です。

※……大きめのもの1粒25gで計算しています。

ミネラルの吸収をさまたげる

牡蠣に豊富に含まれる亜鉛は、体内で銅や鉄と働きを打ち消し合う作用(拮抗作用)があります。そのため、亜鉛の過剰摂取によって銅や鉄の体内への吸収を抑えてしまい、銅欠乏症や貧血が起こることも……。

このほかに、免疫力の低下や、頭痛、胃の不快感、嘔吐、腹痛、下痢などが見られることもあるのです。

亜鉛の効率よい摂取源である牡蠣ですが、牡蠣ばかりに偏った食事になってしまうとこのようなほかの栄養素の欠乏を引き起こす可能性があることを知っておくといいでしょう。

牡蠣を楽しむ量とタイミングは?

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上記のとおり、牡蠣に含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。

そこでここからは、安心して牡蠣を楽しめる量とタイミングについて解説していきます。

健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?

プリン体の摂り過ぎを気にする人であれば、1日の摂取量は400mgに収めることが「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」に示されています。

プリン体は、牡蠣以外の水産物や肉類にも多く含まれているため、これらも食べることを考慮すると牡蠣からの摂取は半分くらいにしておくのが安心でしょう。その場合、牡蠣の摂取量は4粒(100gほど)が相当します。

また、亜鉛の過剰摂取にならないようにするために、健康被害を防ぐための耐用上限量を確認しておきましょう。

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、18~29歳男性で40mg、30~64歳男性で45mg、18~74歳の女性は35mgと設定されています。

生の牡蠣100gあたりには14mg、水煮の牡蠣には18mgもの亜鉛が含まれていることから、250gも食べてしまう場合には耐用上限量を超えてしまうことになるのです。

ほかの食品からも亜鉛を摂取することを考え、125g(5粒相当)ほどに留めておくのがよいのではないでしょうか。

どのタイミングで食べるのがいい?食中毒にも要注意

亜鉛などの栄養素は、食べるタイミングによって吸収率などが大きく変わることはありません。そのため、そういった点からはいつでも好きなタイミングに食べてよいと言えるでしょう。

なお、牡蠣にはグリコーゲンと呼ばれる成分も多く含まれています。グリコーゲンは、運動中に筋肉のエネルギー源として使われたり、血糖値を一定に保つために体内で使われたりしています。

これが不足してしまうと疲れやすくなったり、グリコーゲンには体タンパク質の分解を抑える作用もあるため、不足によって筋肉力の減少を招くことなどが考えられます。

効率よく体づくりを目指している場合や、強度の強い運動を行っている人であれば、運動前の食事で牡蠣を食べることをおすすめします。

ただし、消化吸収の時間を考慮すると、直前ではなく1~2時間前までには食べ終えるようにすることをおすすめします。

また、牡蠣を食べる際には食中毒の予防にも、気を配るようにしましょう。

加熱用の牡蠣を中心部まで十分に加熱しなかったり、生食が可能な牡蠣であっても、食べ過ぎることで食中毒の原因となる細菌を多くとりこみやすくなってしまうことが原因となります。

加熱用と生食用では、そもそも細菌の含まれている数に違いがあります。保険所が定期的に検査した衛生的な海域で養殖されていたり、数日かけて殺菌された海水で浄化したものだけが生食用として出荷されているのです。

そのため、生食用の牡蠣には食中毒の原因となる大腸菌などの細菌数は少なくなっているのですが、ウイルスやウイルスの作り出す毒素まで減らすことは難しいのです。

よく加熱しないで牡蠣を多く食べたり、免疫力が低下している人や体調が優れない場合には食中毒のリスクが高くなってしまうことに……。

そういったことからも、適度な量で楽しむことを心がけるようにしたいですね。

正しい量を把握できていれば、牡蠣はメリットが多い食品です。牡蠣のメリット・デメッリトを理解し、上手にとり入れていきましょう。

参考サイト

タウリン|e-ヘルスネット(厚生労働省)

食品・飲料中のプリン体含有量|公益財団法人 痛風・尿酸財団

素早くエネルギー源となる糖質|大塚製薬

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