オフロードはもちろん、オンロードの走りも侮れない実力モデル 三菱・トライトン 試乗インプレッション

画像(10枚)

スポーツトラックは走破性能も売りのひとつだが、久々の国内復帰となった新型トライトンは、最新メカニズムが惜しみなく注がれたこともあって、本領発揮のオフロードはもちろん、オンロードでも侮れない走りが楽しめる。抜群の積載性能もあって、アウトドアユースの道具車として、魅力的なモデルに仕上がっていたのだ。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

スポーツトラックの裾野を広げてきた、パイオニアの一台

ピックアップトラックは日本では「働くクルマ」のイメージが強いが、北米ではアウトドアで活躍する「レジャーカー」としてのイメージが強い。実際、土木や農水産業の現場での資材運搬に使われるほどの積載能力は、大きなアウトドアレジャーの用品も難なく運ぶことができるし、石だらけの河原や荒れ地を走破できる悪路対応力の高さも、アウトドアレジャーで頼もしい。

今回発売されるトライトンは、原点となるコルトトラック(1966年デビュー)から、これまで幾たびかの車名変更を経ているが、トヨタ・ハイラックスや日産・ダットサントラックと並び、日本のピックアップカテゴリーを支えてきたモデルだ。

ただ、コルトトラックからトライトンに繋がる長い系譜の中でも、今回導入された新型は少しキャラが異なっている。先代トライトンも後期モデル以降は、フロントマスクを三菱SUVに共通するテイストで仕立てていたが、新型はその雰囲気をさらに強化。頑強なボディパーツを積極的に魅せることで、よりオフローダーの雰囲気を濃くしたスタイルを採用している。純正スタイルのままでも、すでにカスタマイズ仕様に思えるほどだ。

実際、公式ホームページでは、商用車ではなく、SUVカテゴリーに分類されている。アウトランダーPHEVやエクリプスクロスと並べても違和感はなく、最高のオフロード性能が与えられた本格クロカンモデルとみなされている。

前後シートを備えるダブルキャブボディを採用したのは、レジャーユースを狙っていきたいという意向によるもの。上位グレードのGSRは、純正スタイルのままでもカスタマイズモデルに見えるほど。

実用車ベースで加飾はほどほどだが、むしろ無理をしていないことが好印象

トライトンのキャビンは4ドアの5座仕様。ピックアップとしては後席のゆとりも確保したダブルキャブと言われるキャビン形式だ。ただ、その本質は荷台に荷物を積載して運搬を行うための車両であり、車体寸法に比べるとキャビンサイズは小さい。

後端まで高い室内高を与えたキャビンデザインや室内幅の余裕により一定の実用性を確保しているが、室内長はコンパクト2BOXと大差ない。ただ、後席の造りや着座姿勢は長時間乗車も考慮されたもので、実際に座った時の収まりは悪くない。寸法的な余裕が少ないわりに居心地は良好だ。

内装デザインは、目につきにくい部分を中心に“働くクルマ”を意識させる部分もあるが、インパネやトリムまわりにほどよい加飾を施すことで質感と機能感を上手に演出している。ことさらプレミアム路線を追求していないことも、トライトンのキャラには似合い。シート座面の高さや、アップライト気味の運転感覚はいかにもトラック的だが、これもトライトンの個性のひとつといえる。

キャビンまわりの細部の造形や加飾は「働くクルマ」を意識させる部分もあるが、トリムや使用頻度の高いスイッチ類はミドルクラス相応な仕上がり。変に華美になっていないことも、このクルマのキャラには似合っている。

大柄な男性の4名乗車ともなるとレッグスペースは心もとなくなるが、長時間乗車にも一定上の対応力を持つ。後席まわりの仕立てや加飾は前席と大きな違いはなく、少し小振りながらもシートの座り心地も良好だ。

荷台の奥行きは約160cm。アウトドアのレジャー用品を積むレベルなら大型SUV以上の積載性と利便性を持つ。社外用品も豊富で、アウトドアの楽しみ方に合わせたカスタマイズも楽しみのひとつになっている。

侮れないオンロードの走り、ハンドリングの良さに驚き

ラダーフレームにリヤリーフリジッドサスを用いたシャシーは、悪路踏破性を追求しながらも、オンロードでの運転しやすさも考慮した設計。リヤサスは柔らかめに設定されたこともあって、トラックというよりオフローダーに近いサスチューニングだ。

オフロードでは、長いストロークを活かした接地性の高さと、センターデフロック機構付きフルタイム4WD、さらに悪路用に設定された電子制御の駆動力分配などが相まって、ハードなトライアルセクションはもちろん、緩めの泥濘なども難なくこなしていく。試乗コースの大半は4Hモードとトラクションコントロールだけで走破できてしまったほど。悪路走破性は国産車全体の中でもトップ級なのは間違いない。

2.5ℓ4気筒のディーゼルターボの最高出力は204psだが、最大トルクは47.9kg-mに達する。許容回転数は4000回転に設定されており、乗用車系ディーゼル車に比べると高回転の伸びやかさに欠ける。ただ、低回転域から太く安定したトルクは扱いやすい。2.1t前後の車両重量にも不足を感じさないパワースペックだ。

そして少し驚いてしまったのが、オンロードの走りだ。リーフリジッドながら車軸周りの揺動が少なく、ライントレース性に優れたハンドリングが印象的で、さらに2.4Lディーゼルターボと6速ATのマッチングも良く、速度コントロールも容易。本格オフローダーに不慣れなドライバーにとっても、馴染みやすい運転感覚を持っている。路面あたりも上手な処理も含めて、開発陣がオンロードの走りも相当煮詰めてきたことを実感させられた。

大柄な車体サイズや少し強気な価格設定もあって、万人にオススメできるクルマではないが、パジェロ無き時代の三菱オフローダーの新たなフラッグシップと考えれば、性能面で不満は感じない。アウトドアの相棒として十分すぎる実力を備えている。

ゆったりと動くラダー車特有の癖はあるものの、車体挙動そのものは安定感に富んでいる。オンロードを得意とまではいえないが、NV性能の追求もあって、キャビン快適性もなかなか良好。

次ページ 【画像】この記事に関連する写真をすべて見る(全10点)

※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

© 株式会社 内外出版社