パリ五輪の新競技ブレイキンでShigekixら日本勢が世界に旋風を起こす可能性

Ⓒゲッティイメージズ

男子の半井重幸は代表決定、女子の福島あゆみ、湯浅も有力

7月26日開幕のパリ五輪は、観光名所コンコルド広場を舞台に実施される新競技のブレイキン(ブレイクダンス)で日本勢の活躍が期待される。

大会終盤の8月9日と10日に行われるのは男女個人2種目。それぞれBボーイ、Bガールと呼ばれる男女16人ずつが初代金メダリストを争う。

2月18日、年末恒例の紅白歌合戦の会場にもなる東京・NHKホールが異様な熱気に包まれた。ブレイキンの全日本選手権が行われ、DJが流す音楽に合わせて即興で踊る1対1のバトル形式で火花を散らしたのだ。

男子は18歳の菱川一心(ダンサー名・ISSIN)が初優勝。パリ五輪代表で大会4連覇を狙った半井重幸(Shigekix)を準決勝で破り、勢いそのままに会場と一体になるダイナミックな踊りで頂点に立った。

女子は40歳の福島あゆみ(AYUMI)が決勝でShigekixの姉・半井彩弥(AYANE)に勝って3連覇を達成した。

5、6月にはパリ五輪出場を争う「予選シリーズ」を控えているが、日本勢は2019、2022年の世界選手権覇者で25歳の湯浅亜実(AMI)が五輪予選ランキングでトップ。経験豊富な2021年世界選手権女王で足技を得意とする福島あゆみは4位につける。

男子はShigekixこと半井重幸が2位につけ、成長著しいISSINは9位と好位置だ。

起源はギャング抗争、日本では「ダンス甲子園」が追い風に

ブレイキンは都市型のアーバンスポーツの一つで、1970年代に米国ニューヨークのサウスブロンクス地区のアフリカ系、ラテン系米国人の若者たちが広めたストリートダンスといわれている。もともと縄張り争いを繰り広げていたギャングの抗争で、銃や拳の暴力ではなく踊りで平和的に対決するようになったのが始まりと伝えられる。

同地区を舞台とした映画「ワイルド・スタイル」が1983年に公開されたことなどを機に世界的に広まった。日本では1980年代に米国からいち早く「輸入」し、人気テレビ番組「ダンス甲子園」も追い風となり、世界の強豪国に成長した背景がある。

ブレイキンの基本的な要素は4つある。1つ目は立って踊る「トップロック」。2つ目はしゃがんだ状態で足さばきやステップで魅せる「フットワーク」。これは福島あゆみの真骨頂でもある。3つ目は高速スピンなどのアクロバティックな動きをする「パワームーブ」。全日本を制した菱川一心の得意技だ。そして4つ目は一連の激しい動きを止めて体を固める「フリーズ」がある。これはShigekixの代名詞ともいわれる。

4つの要素の中に基本技があり、構成は無限。各選手が音楽に合わせて独創性を追求するスタイルも競技の魅力だろう。

採点基準は独創性や技術、ISSHINは大技で日本一に

ブレイキンは従来「どっちが格好いいか」「どっちが音楽とマッチしているか」とジャッジの主観に頼っていた面もあったが、五輪に合わせてスポーツとして独創性や技術、音楽性などの項目で採点されるようになった。

パリ五輪で初代金メダル候補になるShigekixは、頂点に立ってパリ切符を獲得した2023年秋の杭州アジア大会でも「音楽」と融合した独創性が支持された。

一方、全日本選手権の準決勝でShigekixを破ったISSHINは足を持ちながら肩で床から跳ね上がるようなダイナミックなパワームーブを武器に、憧れの絶対王者の牙城を崩した。繰り出したのが「足持ち肩キャッチ」と名付けた大技だ。 エースの背中を追う新鋭は「オリンピックまで突っ走って、世界の舞台で自分のダンスをぶちかましたい」と若々しく意気込む。

女子の第一人者、湯浅亜実、福島あゆみも含めて日本勢がどんな旋風をパリで起こすのか。五輪に新たな風が吹きそうだ。



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