稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾、独自のプロデュース観とブレない姿勢 3人が第一線で活躍し続ける理由

稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾によるレギュラー番組『7.2 新しい別の窓』(ABEMA)が、『ななにー 地下ABEMA』(以下、『ななにー』)にリニューアルされて約5カ月。この期間に定着した『ななにー』らしさのひとつと言えるのが、従来であればカメラの入らない会議室で行われるはずの企画会議がコンテンツとして成立しているところではないだろうか。

これまでも新進気鋭のクリエイターたちから、さまざまな企画を持ち込まれてきた。なかには、企画段階だからこそピックアップできる尖った内容のものもあり、番組として成立するのかを稲垣、草彅、香取の3人が“ななにーファミリー”のキャイ~ン、みちょぱ(池田美優)、EXITと検討していく姿が届けられた。時には、その企画内容に付随して、3人の知られざる一面が紐解かれるという展開もあり、単に企画を決めるだけではない実りを感じられる時間だ。

3月10日放送の「#16」では、3回目となる企画会議の様子が届けられた。ところが、登場したのは番組のプロデューサー・高橋弘樹と、総合演出の矢部宏光。これまでは、映画や舞台、ウェブなど各分野で活躍するクリエイターたちをゲストとして招いていただけに、いきなりの身内登場に拍子抜けといった様子。草彅が「もう誰も来てくれなくなっちゃったの?」なんてツッコミを入れたくなるのも、納得だ。

高橋プロデューサーが言うには、「クリエイターのみなさんが(企画提案を)やってるのを見たら、楽しそうだなと思って。企画、私たちも出したいなって」というのが今回登場した理由とのこと。たしかに、この企画会議を見ているうちに「どんなことをしている3人が見たいかな」という想像を膨らませずにはいられない感覚もわからなくない。見ているうちに一緒に参加したくなる空気が漂う、それこそがこの3人の国民的アイドルとしての変わらぬ親近感でもある。

そんな香取曰く「リアル企画会議」となった今回の「ななにー企画会議」。なかでも注目を集めたのが、総合演出の矢部が提案した「メンズアイドルをプロデュース」するというものだ。「#8」でゲスト出演したコムドットに向けて、アイドル論を語っていた3人を見て思いついたのだという。

特に香取は「(コムドットの)みんなってもともと友だちで、とかでしょ? そこから自分たちで作り上げていったでしょ? 僕らは集められて、作る人がいて、この方向で行こうって(舵をとる人がいて)」「YouTubeの人たちって自分たちでやっていかなきゃいけないから、客観的に見れる目を持ったほうがいいかもね」と、熱の入ったアドバイスをしていたのが印象的だった。

そして、当時を振り返った現在も「彼ら(コムドット)が曲を始めるって言ってたでしょ、歌を。『ああ、こういう曲のほうがいいのにな……』っていうのはすごくあったよね。『こんな曲で、こんなテンポの……』って」と、伝えられることがまだまだあったと続ける。ただ、すでに進んでいる話に水をさすようなことは言わないほうがいいと口をつぐんだのだ、とも。稲垣も「慎吾とかそういう才能が(あると思う)。後輩のコンサートの演出とかしていたし」と言うものの、当の香取の表情はあまり晴れない。

その理由は実に明快だった。香取は「ずっと自分が売れていたいから」「自分がどうするか、自分のファンのみなさんがどう思うかっていうことしか考えてない」と言い切る。これまでも香取はバックダンサーたちをオーディションから目をかけ、アドバイスし、成長を見届けてきた経験がある。もはやプロデュース業と言っても過言ではないが、それも“香取慎吾のステージ”をよりよくするためだったと言うから、その徹底したスタンスにあらためて脱帽する。

香取の話を横で聞きながら、稲垣も「人に興味がないんだよね」とぽつり。さらに、草彅も「いやあ、無理ですね。なんかわかんないですね、人にどう言っていいのか」と、こちらもブレのない回答にスタジオからも笑いが起こる。そう、この「ブレない」と思わせるだけのキャラクターを築き上げたのは、他ならぬ彼ら自身。

たしかに、もともとは集められて方向性を決める人がいたところからのスタートだった。だが、ここまでそれぞれの個性を発揮することができているのは、自分自身が何をしたいのかを見極め、厳しくとも突き進んできた道のりがあったからではないか。もちろん、その時の時代の流れや、人との出会い、チャンスをものにする運の強さなど、さまざまな不確定要素もあるが、それでもその根幹に自分が自分らしくあろうというセルフプロデュース力があったからこそだと思うのだ。

きっと彼らが自分自身の考えを貫いてきたことに対する想いやプロセスについて話すことはできても、同じように誰かを活躍させることは難しい。たとえば、稲垣のようにワインや植物、カメラに音楽といった好きなものを突き詰めることは誰かに言われてできるものではないし、草彅の憑依型と呼ばれる演技もそうだ。もちろん、香取の広い視野とその場にかける集中力も。だからこそ、唯一無二の存在感を放つ国民的アイドルとして長く活躍できているのだ。

とはいえ、そんな彼らの生き様をヒントにしたいという若手エンターテイナーは多いはず。グループ全体のプロデュースという形ではなくとも、楽曲やステージ、舞台、映像など、3人がこれまで培ってきたことがエッセンスとなる作品を新たな才能と共に作るという展開はできるのではないだろうか。その制作過程や完成した作品から、3人それぞれの異なる価値観や美意識、表現者として大切にしていることがさらに鮮明に浮き彫りになっていく予感がする。その様子を、ぜひ『ななにー』を通じて見てみたいものだ。

(文=佐藤結衣)

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