吉柳咲良が『ブギウギ』に新風を吹き込む ミュージカルで鍛え上げられた歌声と表現力

朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)の第117話に吉柳咲良が登場した。ブギブームが下火となりつつある中、スズ子(趣里)は年末の歌番組のオファーを受ける。そこで登場するのが、吉柳咲良演じる若手の有望株、水城アユミだ。

明言されてはいないものの、水城アユミの人物像は戦後を代表する歌手・美空ひばりを彷彿とさせる。そのため、ブギの女王から戦後歌謡界の女王への世代交代を予感させる存在になりそうだ。

吉柳咲良自身、若手俳優の有望株といえる。吉柳は12歳からミュージカル『ピーター・パン』でピーター・パンを演じ、2022年8月に卒業を迎えるまで主演を務め続けた。ピーター・パンに抜擢された頃の歌声や表現力にはまだあどけなさが残っていたものの、その後、さまざまなテレビドラマや映画に出演してきたことでその歌声と表現力は確かな成長を遂げている。

吉柳はドラマ『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(NHK BS)で、昭和を代表する歌手・山口百恵を演じていた。劇中、「スター誕生!」予選会場で吉柳が演じる山口は、宇野祥平演じる阿久悠から「歌は諦めたほうがいいかもしれないね」と言われてしまうが、ライバルの酒井政利(三浦誠己)に見出され、歌手として鮮烈なデビューを果たす。情感あふれる歌声とクールでミステリアスな雰囲気をまとう山口を、吉柳は見事に演じ切った。阿久悠の言葉に悔しさを滲ませる表情や、歌い出しのきわどい歌詞に困惑する面持ちなど、吉柳が表現する感情の揺れ動きに心を掴まれる。そして山口百恵本人の歌声にも劣らない歌唱力にも引き込まれた。「スター誕生!」予選会場での歌声には初々しさが感じられる一方、「青い果実」の歌唱シーンでは、その歌詞に戸惑いを覚えるという場面があったことを忘れさせるほど、芯のある歌声を披露した。

そんな吉柳が、美空ひばりを彷彿とさせる若手歌手・水城アユミを演じるのだ。おのずと期待値は高まる。また吉柳は朝ドラ登場に先駆け、3月12日放送の『うたコン』(NHK総合)にて、男性歌謡グループ・純烈とトランペット奏者・MITCHとともに、スズ子のモデルである笠置シヅ子の「ヘイヘイブギー」を熱唱。貫禄すら感じさせる歌声に、SNS上でも絶賛の声があがっていた。

なお、吉柳は自身のYouTubeチャンネルで中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」 や山口百恵の「イミテイション・ゴールド」などをカバーした「歌ってみた動画」をあげている。同じくYouTube上では、ミュージカル『ピーター・パン』や『デスノート THE MUSICAL』でヒロイン・弥海砂役を演じた際の歌唱なども視聴できるので、その歌声が気になる人はぜひ聞いてみてほしい。

5月から上演されるミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で、吉柳はヒロイン・ジュリエット役を務める(奥田いろはとのWキャスト)。今後もますます活動の幅を広げ、人々を魅了していくことが期待される。スズ子と対峙する水城アユミが『ブギウギ』の世界にどんな影響をもたらすのか、楽しみだ。
(文=清水久美子)

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