萌え系パチンコはいかにしてユーザーに受け入れられたのか その歴史を振り返る

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今、パチンコホールにはいろいろなアニメ版権の機種が設置されている。エヴァンゲリオン、花の慶次、北斗の拳、あとはなんだろう。天才バカボンもあるし、炎炎の消防隊なんかもある。

さらにいつからか、萌え系のパチンコ、パチスロもだいぶ増えていた。女の子がいっぱい出てきて、きわどい衣装やポーズで「ちゃんす!」みたいなことを言うような台だ。

ここに挙げたものは大抵アニメ化されている人気タイトルが元なんだけど、これも20年以上前はなかなか珍しいことだった。というのも、これ以前はそもそもアニメ版権の機種が珍しく、あったとしても割と硬派なものばっかりだったからである。(文:松本ミゾレ)

昔はアニメタイアップ台そのものが珍しかった!

僕がパチンコホールで遊ぶようになったのは、2003年からなんだけど、その当時ホールには、『海物語』だとか『大工の源さん』だとか、今でもシリーズは存続している機種の始祖たちが設置されていた。

海物語はたしか2002年の冬に『新海物語』となり、ドット絵からポリゴンに移行したんだけど、これが遊びやすいスペックってこともあって全国的に人気に。あっという間にあちこちで看板機種として扱われるようになった。

で、この頃にはアニメタイアップの機種というものは既に存在していたんだけど、『コブラ』とか、割と男性が好むかっこいい版権モノだらけだった。あとは各メーカーがオリジナルのキャラを活躍させる機種がほとんどだった。

一方でテレビ番組や映画タイアップ機種はアニメ系よりも目立っていた。『必殺仕事人』とか『ジュラシックパーク』、『ゴジラ』、後は『バットマン』辺りが有名だったはず。総じてなんかこう、当時18歳ぐらいの僕からすると「パチンコってかっこいい台が多いな」という印象だった。

パチスロだって同じようなもの。大体はどのメーカーも自社オリジナルの機種をリリースし、既存の版権にはあまり頼らない様相であった(そもそもパチンコもパチスロも、当初は版権などに頼らない完全自社製作のものが当たり前だった)。

そんな中、アリストクラートという会社が、『巨人の星』とタイアップして作った機種があり、これもやっぱり男ウケする硬派な漫画・アニメなので、ホールにも結構上手く溶け込んでいた。タイアップ系は他にも『ガンダム』、『旋風の用心棒』あたりを打った記憶がある。

やっぱりこの頃はパチスロコーナーにも、今よりも台のデザインも大人しく、わけのわからない爆音も光も発しないシックでオシャレな台が多く、かっこいいと思える台が多かった。

2003年には『パチスロ北斗の拳』が登場し、これが物凄いヒットとなる。冒頭でも挙げた北斗の拳シリーズの現在に至るまでの乱発も、ひとえにこの初代がヒットしたからこそ。この機種も演出はすこぶる硬派で媚びがなく、中押し消化ではリプレイすら目押しの必要があるなど、当時のパチスロユーザーウケしまくりなマシンに仕上がっていた。

なんかこう、あの頃まだ若かったってのもあるんだけど、パチンコホールにいるお客たちって、みんなかっこよく見えていたんだよね。ビタ押しできる人ばっかりだったし、僕もリプレイ外しとか下段チェリービタとかで獲得枚数増やして遊ぶ自分が、なんとなくかっこいいとうぬぼれていたし。

加えて設置機種がなんかセンスあってかっこいいものばかり。あの頃僕は、パチンコホールにいることで妙に大人になったような、そういう満足感を得ていた気がする。

だからこそ拒絶反応が出た萌え台…

しかし、時代は変わるもの。昔のパチンコホールは、お客もなんかワルの雰囲気が漂うあんちゃんに、3つぐらい前科がありそうなおじさんばっかりだったし、店員ですらパンチパーマだったり、客の前でタバコ吸ってコーヒー飲むような横柄な奴が多かった。

ところがこの空気も2000年代の中ごろにはホテル並みの接客を標榜する大手に押される形で姿を消していき、客層も徐々に徐々に入れ替わることになる。

その入れ替わりのきっかけとして機能していたのが、萌え台ではないだろうか。そもそも今はホールの人気看板機種であるエヴァ。アレだって最初はなかなかユーザーには受け入れられない、萌え台という扱いを受けていた。「こんな恥ずかしい台打てねえよ」という人、多かったのだ。僕も「なんでこんな女の子がわちゃわちゃする台を打たなきゃならんのか」と敬遠していた。今とはえらい違いである。

これに続く形で『サクラ大戦』とのタイアップ機種も登場したが、あの当時はまだ許されていた、ホールからのセールスメールでわざわざ「サクラ大戦は全部高設定です」みたいな煽りがあっても、誰も座らないという状況が本当にあったのだ。それぐらい、従来型のユーザーは、いわゆるアニメやゲームの、それも女の子がアイコンの機種を敬遠していた。

それがいつからか、なんちゃらエンジェルとかなんとかハロウィンみたいなタイトルの、メーカーオリジナルの萌え台が登場するまでになり、2010年代ぐらいにはもう萌え台はしっかり独自のファン層を囲い込むことに成功しているんだから、世の中分からないものである。

残念ながら僕は未だに萌え台にアレルギーがあり、「なんでわざわざこんなの打たないといけないんだ」と思うものだから実際触りもしない。だけど僕の周りのパチスロ仲間なんて、普通に萌え台を楽しんでいるもんね。

それこそ先日、5ちゃんねるにも「昔のパチンコっていうほどアニメ系の萌台なかったよな?」というスレッドが立っていた。スレ主の言いたいことというのは、概ね僕がここまでに主張してきたようなものだろう。

ここには、萌え台が今のようにパチンコホールに欠かせないものになったことについて考察する書き込みもあったので、引用させていただきたい。

「大体エヴァのせい」
「まどマギぐらいからおかしくなった」
「戦国乙女(というタイトルの、女性武将が主役の機種)が最初に出た時は打つの恥ずかしかったなぁ…」

と、こういう具合にエヴァが先陣を切って萌え系の導入を加速させたという意見はやっぱりある。

「アレは萌え系の作品ではないのに」と思う方もいるだろうけど、そこはそれ、パチスロオリジナルの演出でそれっぽいエッセンスが加えられているので、やっぱり僕もエヴァ以前と以後では何か空気が変わった感はおぼえていたところ。

まずエヴァの導入によってアニオタっぽい人がホールにやってくるようになったもんね。
それだけでも当時は凄い変化に思えた。

その変化は個人的には嫌なものだったけど、結局そこからアニメ系のタイアップも加速したし、萌えが受けるとなると萌えの記号を組み合わせたオリジナルの機種を作るメーカーも出てきた。

設置機種のバリエーションが増えたのは間違いない。今はクイーンズブレイドとか、一騎当千とか、その辺の版権を扱ったちょっとエロいパチンコ台もコアな人気がある。これらを打っている中高年も一定数いるので、みんなどっかのタイミングで慣れたか、諦めたんだろうなぁ。

……僕が若い頃憧れたホールの、鉄火場みたいな雰囲気でビタ決めてたかっこいい兄ちゃんが、今は萌え台をナビに従って打ってるなんてこともあるのかも。

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