親ガチャ怨念ホラー映画『オンマ/呪縛』は鬼より怖い“母の呪い”描く米初の韓国系女性監督作ホラー!製作はサム・ライミ

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サンドラ・オー主演「親ガチャ」ホラー

韓国系カナダ人俳優サンドラ・オーといえば、現在シーズン19が放送中の米人気ドラマ『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』(2005年~)での活躍だろう。サンドラは同作でゴールデン・グローブ賞テレビ部門の助演女優賞を受賞。その名を知らない人はいないほどのスター俳優となった。

それ以前にも名作ロードムービー『サイドウェイ』(2005年)などで知られていたが、人気シリーズへの出演により急激に知名度が上がったため当時はメンタル面でバランスを取るのに苦労したそうだが、いまやハリウッドで活躍するアジア系俳優の代表格。出演作は多い方ではないが、彼女が出演していると安心するというか、作品の強度がぐっと上がるような存在感を多方面で発揮している。

そんなサンドラ・オーが主演したのが、サム・ライミ製作のホラー映画『オンマ/呪縛』(2022年)。タイトル通りオンマ=母親が重要なテーマになっていて、アジア系ファミリーの親子の絆もとい“呪い”が巻き起こす怪奇現象を描いた、言うなれば“親ガチャ”ホラーである。

母の束縛は愛か、呪いか

サンドラが本作で演じるのは、幼い頃に実の母親から酷い仕打ちを受けた過去を持つアマンダ。今は母親と絶縁し、娘のクリスと共にアメリカで養蜂農場を営み、なかば自給自足のような静かな生活を送っている。ある日、そんな彼女のもとを叔父が訪れ、長らく疎遠になっていた母親の遺骨を置いて帰ってしまった。それ以来、アマンダは母親の幻影に惑わされるようになり、自分もかつての母親のようになってしまうのではないかという恐怖に怯えはじめ……。

「母の愛=呪い」をテーマにした毒親映画は少なくないが、本作はライミらしい超常現象ホラーに仕上がっている。監督・脚本は自身も韓国系アメリカ人であるアイリス・K・シムで、長編監督デビュー作にして韓国系女性として初のアメリカ製ホラー映画監督だという。そんなシム監督がアジア系アメリカ人としての人種的アイデンティティを模索し、若い頃の自分が積極的に知ろうとしなかったルーツの文化、そして母と子の関係を掘り下げるための物語として観ることができる。

アジア系ならではの慣習や複雑な母子関係

劇中には韓服(ハンボク)も登場するし、韓国流の故人の弔いなど、シム監督は家族間のしがらみだけでなく、幼い頃に見てきた祖国の文化への敬意も表している。もちろん日本文化との共通点もあり、若い世代が感じる慣習への意識のズレなどは、多くの人が共感を覚えるところだろう。最近のA24作品などに見られる、どこか突き放したような醒めた態度は薄く、主人公たちを応援したくなるような仕上がりだ。

ゆえに本作は、ホラー映画としては非常に観やすい部類に入る。映像的に新鮮な驚きがあるわけではないが、なにより母の呪いに翻弄されるサンドラ自身がめちゃ怖い。なにかと親に気を遣うアジア系ならではの“しがらみ”も身につまされるところがあり、親子関係を重荷に感じたことがある人はもちろん、欧米の友人・知人との家族観にギャップを感じたことなんかがある人などは、とくに感情移入できてしまうかもしれない。

『オンマ/呪縛』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年3月放送

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