SDGsの坂道

 人と化した「ぜいたく」たちが花園に集い、そこへ来たチルチルとミチルに光の精が「気をつけて」と告げる。「危険なぜいたくもいますからね」。メーテルリンクの「青い鳥」の一場面にある▲花園には「渇いていないのに飲むぜいたく」「ひもじくないのに食べるぜいたく」、それに「何もしないぜいたく」もいる。なるほど、何もせず、うたた寝に誘われる休日のひと時は至上のぜいたくだな…と、つい思いを巡らす▲もちろん、そんなことではない。やろうと思えばやれるのに手をこまねく「不作為」や「怠慢」を皮肉交じりに「ぜいたく」と呼んだのだろう▲国連が17のゴールを設けた「持続可能な開発目標(SDGs)」は言わば人間の「何もしないぜいたく」からの転換を訴えている。「貧困をなくそう」「海の豊かさを守ろう」「つくる責任 つかう責任」…▲どれも「言うは易(やす)し、行うは難し」の険しい坂道を上る営みだろう。きょうは「みんなで考えるSDGsの日」で、企業・団体の努力を紙面の方々(ほうぼう)で紹介している。微力ながら小社もその一つに名を連ねる▲ぜいたくたちの晩さん会の誘いを断り、チルチルとミチルは青い鳥を探す旅を続ける。私たちの坂道の旅もまた、先が急がれる。目標達成を目指す2030年まで残された時間は短い。(徹)

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