首都直下地震の被害 推計1001兆円 土木学会が試算「適切な対策を」

30年以内に70%の確率で発生すると言われる首都直下地震について、土木学会は、被害の推計が1001兆円に上ると発表しました。ただし対策に21兆円以上を投じれば、被害額をおよそ4割減らせると指摘しています。

(京都大学大学院 藤井聡教授)
「何もしなければ本当にひどいことになるというのが、我々のストレートな気持ち」

内閣府の推計では死者が最大2万3000人、全壊や焼失する建物が最大61万棟と、阪神・淡路大震災を大きく上回る被害が想定されている、首都直下地震。経済的な被害も甚大で、土木学会は今、起きた場合の道路や建物などの「資産被害」を合わせた経済的被害について、20年間で1001兆円に上ると発表しました。

政府が公表している資産被害47兆円をもとに、道路の損傷や、生産施設の被害を通して、経済活動が低迷することで生じる経済被害が909兆円。さらに、港湾に関する交通が寸断される影響として45兆円で、合わせて1001兆円と推計しました。またこのほか、税収の減少や必要となる復興事業費を合わせた国と地方自治体の財政的な被害は、389兆円に上るということです。

しかし、公共インフラについて事前の防災対策に21兆円以上を投資し、無電柱化や橋の耐震補強、さらに港湾エリアの液状化対策などを進めれば、経済的な被害を369兆円減らせるということです。また自治体の財政的な被害も151兆円、圧縮できると指摘しています。

今回の推計を取りまとめた京都大学大学院の藤井聡教授は、適切な防災投資が必要だと強調しています。

(京都大学大学院 藤井聡教授)
「適切なインフラ投資を行うことで、減災できるということなので、第一に被害の深刻さをしっかり受け止めて頂きたい。それに対してしっかりとした対策を行えば、大きく軽減することができるということを国民に認識して頂きたい」

今回の発表について、首都直下地震が起きれば被災者となる都民は…

(都民)
「防災対策をすることで、建築業界から景気がよくなって、周りに波及するなど上手な使い方をすればいいと思う」「あまりにも高すぎて想像がつかない。建物や学校などが壊れないような対策とか、看板でも何でも倒れないようにしてほしい」「日本は災害が多い国ですし、そうしたところ(防災対策)にお金を回せるように働きかけるのは大事だと思う」

甚大な被害が予想される首都直下地震ですが、少しでも被害を減らすために国や自治体の備えは急務となります。そして私たち一人ひとりもできる限りの備えはしておきたいところです。

個人の災害への備えについてこのような調査結果があります。主にインターネットでのリサーチ調査を行うマクロミルが20万人からの回答を得たアンケートの結果ですが、まず避難場所や避難経路の確認をしているかについては、「十分できている」が8.2%、「ある程度できている」が34.6%となっていまして、6割弱の人は準備が不十分という結果でした。家具の置き方の工夫や非常用持ち出し袋の準備、家族同士の安否確認の方法などでは、全て6割以上で「準備が不十分」だということが分かりました。

さらに、こちらの安否確認方法について世帯ごとに細かく回答を見てみましょう。全体では、準備をしていると回答したのは合計で35%でしたが、単身世帯においては「十分できている」が5%、「ある程度できている」が18.4%となり、合計23.4%となっています。これは家族などがいる世帯よりも10から20ポイントほど低い結果となっていて、単身世帯の災害対応が進められていないという課題が浮き彫りとなっています。

そして最後に、備蓄についての複数回答のアンケート結果では、懐中電灯は唯一50%を超えていますが、それ以外は水で37.2%、非常用食品で26.3%など全て4割に届いていない結果となりました。

能登半島地震では断水による飲み水不足や孤立化による食糧不足なども問題になっています。備えは災害の発生前にしかできません。今できる備えを進めていきましょう。

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