資産運用をしなくては……でも、「SNS広告の儲け話」は信じていいの?

お金を引き出せない

どのような流れで被害に遭ったのか、まず、手口を知っておきましょう。

【まずは登録】
興味を持った人に、情報を受け取るために会員登録をさせます。その後、情報を共有するためのグループチャットに案内をします。

【チャット内で洗脳】
チャットで、次々にどれだけ稼いだという成功体験を聞くと、自分も稼ぎたいと思うのが世の常。被害者を、稼ぐ方法を知りたい気持ちにさせておいて、FX取引に誘います。

【お金を振り込む人と分かれば・・次々と要求】
FX口座を開設したら、『個人名義の口座』に証拠金を入金するよう要求してきます。振り込むと、運用により利益が出ているように見えてきます。利益分は、実際に出金ができます。よって、儲けるために、さらに高額な入金をしてしまうのです。

【出金できない。FX業者もグループの誰とも連絡が取れない】
そして、「いざ出金」となったら、税金や証拠金を支払うよう請求されます。請求に従って支払っても出金できず、FX業者ともチャットメンバーとも連絡を取れなくなります。お金を取られておしまいです。

だましの手口は変わらない

登録した人をグループチャットで洗脳。その前は、登録した人をステップメールで洗脳と、方法は違っていますが、洗脳をすることには違いありません。ただ、チャットであればリアルタイムでの成功談を聞くことになるので、よりリアル感が増します。

これにより、「知りたい」「自分も儲けたい」という気持ちを高まらせ、口座開設、そして支払わせます。

当初は「利益が出ているし、実際に出金もできる」のは、ポンジスキームの常とう手段です。これによりすっかり信じて、さらに高額な入金をしてしまうのです。

しかし、高額な入金をしてしまうと、今度はいろいろ難癖を付けて、なかなか出金させてくれなくなります。さらに支払いを請求する場合もあります。しかし、お金は出せません。

そして、お金を集めるだけ集めた事業者は逃げていきます。運用方法がFX取引であったり、暗号資産のマイニングやアービトラージであったりするなど、さまざまな方法がありましたが、本当に儲かる方法なら、事業者が逃げる必要はありません。

確実に儲かる話はない

「確実に儲かります」はありません。よって、この言葉が出たら疑いましょう。さらに、チェック事項は以下のとおりです。

まず、日本人相手に金融商品取引を業として行う場合、必ず、日本で金融商品取引業の登録をしなければなりません。登録業者の確認は、金融庁ホームページで行うことができます。

必ず、取引をする前に、登録があることを確認しましょう。確認できなければ、決して取引をしてはいけません。特にインターネットを通じたやりとりでは、相手が見えません。本当にある業者なのか確認できないような相手に、お金を渡してはいけません。

そして、FX取引は、証拠金の最大25倍の取引ができるため、利益が出ると大きいのですが、損失も大きく出ます。いきなり借金を背負ってしまうことだってあるのです。FX取引の仕組みが分かっていないまま、契約するのは危険です。

FX取引は、各ネット証券で取り扱いがあります。初心者向けに仕組みや説明、電話やチャットで相談できるサポートサービスもあります。FX取引をお考えなら、ネット証券のホームページなどで知識を得るところから始めましょう。怪しい業者とは関わりを持たないことが肝心です。

また、通常FX業者が『個人名義の口座』を使って入金させることはありません。個人名義の口座、FX業者以外の名義の口座の場合は、詐欺の可能性があります。絶対に振り込まないでください。

不安に思ったら、お金を支払う前に消費者ホットラインまたは、お近くの消費生活センターへ相談しましょう。

出典

独立行政法人国民生活センター 令和6年1月24日 報道発表資料 SNS 上の投資グループで勧誘される詐欺的な FX 取引トラブル -その仲間、信じて大丈夫?-
内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 資産所得倍増に関する基礎資料集 (令和4年10月)

執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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