[ドローン活用の現在値]Vol.02 災害地におけるエンジンドローン機の優位性を考える

震災で見えてきたこと

被災地での活動は、平常時の点検や測量調査ではない。災害時という緊急事態だ。今回現地で活躍したドローン企業の関係者からは電源の確保は死活問題だったという。「電気がなければ意味がなかった…」との意見が多く上がった。

ドローン企業が集合した輪島市役所は幸いにも通電していた。そのため持ち込んだポータブル電源は、結果、使用することはなかったという。

もし電気がない現場であればどうなっていたのだろうか?想像するだけで暗澹となってしまうが、その状況でもエンジンタイプのドローンであれば、電源やバッテリーが入手できない場合も十分なフライトは可能だ。

ヤマハ無人ヘリコプターFAZER R G2

今回活躍したエンジンタイプの機体は、ヤマハの無人ヘリコプター「FAZER R G2」だ。今回は物資輸送を担当したが、インフラの点検や空撮も可能だ。衛星通信によるフライト制御や映像伝送もできるので、LTEがない環境でも迅速な状況把握ができる。

エンジンタイプのメリットである長距離、長時間飛行をもってすれば、孤立集落の空撮業務や崖崩れのオルソ化もマルチタスクを一回のフライトで行うこともできるだろう。汎用性の高い燃料であるガソリンでフライト可能なため、適応力は高い。

DRONE.jpでは、エンジンドローンを折に触れて取り上げている。中でもPRODRONEとヤマハのエンジン機が活躍する記事には予想以上の人気アクセスがあった。今回は、2024年現時点で様々な課題を解決するエンジンドローン機についてフォーカスする。

※ヤマハの無人ヘリコプター「FAZER R G2」は、自衛隊からの依頼のために機密事項で開示可能な情報がなかった。

ドローンの災害時における利活用の可能性といくつかの課題

災害地が半島という特性上、非常に陸路が限られている。その上、港は破壊されている。一般的に言うと海路も閉ざされ、空路しか選択肢がない場合、機動性の高いドローンは初期動作において役に立つことは、今回のドローン救助で見えてきたことだろう。

一方でいくつかの課題もあり、有人機、特に大型輸送ヘリコプターである「CH-47」は、この災害の中、雨や風が強い場合でも問題なく飛んでいた事実がある。

物資をどんどん運んでいる中、ドローンは雨や風の場合は飛行できない。また、ポテンシャルの割に準備とオペレーターに多くの人間が必要になる。なおかつ発電機を8機持ち込んだという話も聞かれた。

電源確保と充電の功罪

発動発電機でバッテリーを大量充電する場合も

現場での災害協定エリアの分担などの実情もあり、充電が困難であった場所もあったともいう。ともすれば貴重な電源をドローンが独占してしまうことになりかねなかった危惧もある。例えば、1時間半の充電で10分間の飛行が可能とすると大量のバッテリーが必要になってしまう。結果、1日中発動発電機で発電を行い充電した企業が多かったようだ。

持ち込んだ大容量電源バッテリーは、停電はしていなかったために結果未使用になった

物流重量物ドローンは大型でかなり人手がいることも周知の通りだ。重い荷物を持ち上げて運搬用ホイスト装置がないというところがあったり、様々な課題が各社を悩ませたという。ガソリンを使用し発電機で充電をして飛行させる、そこには多くのバッテリーと人員が必要になる。様々な課題を上げてもらううちに、ガソリンそのものを内燃機関のエネルギーとして飛行させる方が高効率ではないかと思える。

海外ではすでにエンジン機が採用されている事例もある。山岳での捜索救難活動と緊急医療支援を行うスイス・エア=レスキューでは、エンジン機「RGA-UAV-T1A」を導入し捜索救難活動を行っている。

エンジン駆動シングルローターの有用性

PRODRONEシングルローターエンジン機PDH-GS120

PRODRONE社の「PDH-GS120(以下:GS120)」も1つの解決策にもなるだろう。エンジン機は、ガソリンを燃料に内燃機関で飛行するため、充電の必要はなく充電問題は解消できる。さらに全天候ドローンの開発も待たれるが、GS120は雨の場合でも飛行可能だという。さらにシングルローターは、マルチコプターよりも断然風に強い。

GS120は、シングルローター特有の優れた飛行性能と高い耐風性能を有する機体として長距離物流や沿岸警備で活躍しており、7kgのペイロードで1時間のフライトを実現している。搭載物も運搬ボックスの他に2眼カメラジンバルなど使用目的に合わせて、物資搬送や測量など自在にカスタマイズが可能だという。 GS120はユーザビリティに優れている。ハイエースに2機搭載可能で、1人で可搬可能だ。ペイロードは7Kgだが、監視用に飛行させた場合は、1時間半から2時間と発災直後の長時間測量が可能だ。

PRDODRONEの戸谷社長から以下の様にコメントをいただいた。

PRODRONEでは、平時、災害、防衛の三分野でドローン開発を進めています。

GS120の機体は、これまでタクティカル向けに出荷されていました。民間向けには販売していなかったのが実情です。

長らく沖縄県竹富町において離島間配送の実証実験を行っていました。ペイロード10kgを搭載しての飛行にも問題なくスムーズな飛行をこれまでに重ねてきました。

物資輸送などについては船舶が利用されることが多く、台風などの悪天候が続くと物資の供給が一時的にストップしてしまいます。

やはりその際に有効活用できるのが内燃機関をもつエンジン機であるGS120ですね。PRODRONEが培ってきたシングルローター機の技術力の高さを、民間へも届けようと思っています。

GS120は、長距離物流実証実験において1時間超の海上オートフライトを完了するなど実績を積んでいる。またタクティカル用にすでに納品され活躍しているようだ(詳細は機密事項で開示していない)。

今回の取材に答えていただいた皆様には感謝しかない。各コメントは、個々の意見や経験に基づいており、各企業の公式なコメントを意味するものではないことをご理解いただきたい。

今回地震発生が1月1日、ドローン部隊の現地入りが6日と、発災から5日経っての動きだった。この空白の5日間に、ドローン部隊がエンジン機で被災地に入ったらどのような活動ができたのだろうかと思う。今回の災害救助で多くのドローンの利活用が実証されたが、まだまだ課題は多い。編集部では引き続き追いかけていきたい。

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