『ブギウギ』中村倫也サプライズ起用の裏側 「想像以上に押し出しの強さを発揮された」

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。

第25週、『オールスター男女歌合戦』のディレクター・沼袋勉役で中村倫也が初登場。このタイミングでのサプライズには驚かされたが、制作統括の福岡利武は中村の起用理由についてこう語る。

「お仕事をご一緒したことはありませんが、とても大好きな役者さんで、どこかで機会があればと思っていました。そんなとき、脚本の足立(紳)さんがクセのあるディレクターを書かれてきまして。中村さんにお願いできたら面白いんじゃないかなと思いご相談したところ、『是非やらせてください』とお返事をいただきました」

ビジュアルも話し方も個性の強い沼袋だが、福岡は「モデルとは言いませんが、NHKのドラマ演出家・和田勉さんを彷彿とさせる」とし、「スズ子と若手の歌手をぶつけることを考えた人物で、すごく面白いキャラクターだと思いました。なんとなく扮装も和田さんに引っ張られているのではないか、というところもありますが、そのあたりも含めて視聴者のみなさんに楽しんでいただければ」と語る。

現場の中村も楽しみながら沼袋役に臨んでいたといい、「ダジャレばかり言っているようで、ちゃんと“面白み”がわかっている人を見事に演じてくださいました。押し出しが良くてクセがある、なおかつ面白いキャラクターということで、中村さんのお芝居のうまさが光るんじゃないかなと。想像以上に押し出しの強さを発揮されて、実は少し抑えてもらったくらいなんです。ご本人のプランは、もっとハチャメチャだったと思いますよ(笑)」と印象を明かす。

さらには「沼袋は嫌味なのに、その上を行くクセがある。そんなキャラクターをサラッとやっていただけて、すごくよかったと思います」と続け、「それは中村さんが準備をしてきてくれたからこそですし、趣里さん含め、みんなで大爆笑しながらお芝居をするようなパワフルさが素晴らしかったです」と称賛する。

「この表現が正しいかわかりませんが、中村さんには“なんでもできる素敵な俳優さん”というイメージがありました。今回、こういうクセの強い役どころはどうだろうと思ってお願いしましたが、リハーサルのときに現場の誰もがのけぞるくらい大声でお芝居されていて。人は、声が大きいだけでおかしいものなんだなとわかりました(笑)。あらためて、本当に素敵な方でした」

沼袋は常に“孫の手”を持っているが、そのアイデアについては「演出の福井(充広)が『なにか手に持ちたいですよね』と言ったことがきっかけです。そこで、現場にいろいろなものを用意したところ、中村さんが『孫の手いいな』と。『この人、ずっとこれを持ってるんだろうな』と思える自然な仕草が本当におかしくて、現場も大笑いでした。ちなみに沼袋がかけている眼鏡なども、スタッフが用意した物の中から、中村さん自らが選んだものです」と明かした。

そんな沼袋が企てるのは、『オールスター男女歌合戦』でのスズ子と若手歌手・水城アユミの激突。要となるアユミ役には、ミュージカル『ピーター・パン』などで知られる吉柳咲良が抜擢された。

「ヒロインのオーディションを受けていただきましたが、吉柳さんの歌には勢いがあって、エネルギッシュなところが本当に素敵だなと思いました。年齢的にスズ子役とはいきませんでしたが、台本を作っていく中で、水城アユミ役にはスタッフのみんなからも吉柳さんがいいのではないかと声が上がりましたし、若さが弾けつつ、パンチの効いた感じがぴったりだなと思っています」

週の頭から、さっそくアユミが大和礼子(蒼井優)の娘だったという急展開へ。福岡は「足立さんは当初から“礼子の娘が将来、歌手になってスズ子の前に現れる”というエピソードをやりたいとおっしゃっていました」といい、「アユミが礼子の娘だということで、スズ子はより複雑な心境になる。世代交代を描くという意味でも、単純なストーリーにはしたくなかった、といったところではないでしょうか」と狙いを代弁した。

ブギのブームが下火になり、新星の如く現れた水城アユミ。そこにスズ子がどう向き合っていくのか。『オールスター男女歌合戦』でのパフォーマンスと合わせて、スズ子の決断をしっかりと見届けたい。
(文=nakamura omame)

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