縁日の定番『金魚すくい』の意外な歴史とは 「金魚救いだった?」

みなさんは縁日の定番といったら何を思い浮かべますか?

たこ焼き、綿菓子、金魚すくい、ヨーヨー釣りなど、お祭りの当日にはいろいろなお店が所狭しとばかりに軒を連ねます。

縁日の定番の一つ「金魚すくい」は、一説によると実は宗教的な行事に基づいたものとされています。

今回の記事では、金魚すくいの意外な歴史について紹介していきます。

目次

そもそも縁日ってなに?

画像 : 縁日public domain

縁日は、語源的には「有縁日」や「結縁日(けちえんにち)」の略と言われています。

有縁の日は「神さまや仏さまと縁を結ぶ日」、そして結縁の日は「神さまや仏さまが手を伸ばして世の人々を救おうとする日」とされています。
つまり、縁日とは「特定の仏様や神さまに特別に縁がある日」ということになります。

もともとは平安時代前後を起源とする縁日ですが、広く庶民に広がったのは江戸時代あたり。
かつては年に1回の行事でしたが、参拝者が増えるようになり、月ごとに開催するようになったのです。

縁日の日に神社やお寺へお参りに行くと、普段よりも多くのご利益があるとされています。

例えば浅草の「ほうずき市」は「四万六千日」と呼ばれることからも分かるように、その日にお参りに行くだけで四万六千日分のご利益があると言われています。
四万六千日は、年数に変換すると約126年相当。
生まれた直後から毎日お参りに行ったとしても、生涯かかっても終わりません。

縁日は、ご利益の超バーゲンセールというわけですね。

こういった縁日は、神社やお寺によって決められていることがほとんどです。

例えば、心身の健康を守ってくれる薬師如来は、毎月八日。
天空から人を見守り、方角や人の運命を司る存在である妙見菩薩(ぼさつ)は、毎月一日と十五日。
苦しみを取り除き、お願いを聞いてくれる慈悲深い仏さまである観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)は、毎月十八日。
広い慈悲の心で人々を見守る菩薩様(お地蔵様)は、毎月二十四日。
学問の神様である菅原道真を表す天神様は毎月二十五日とされています。ちなみに二十五日は菅原道真の命日と言われています。

また、おばあちゃんの原宿として有名な巣鴨の「とげぬき地蔵」は、地蔵菩薩と縁のある日、つまり二十四日が縁日になりますが、物足りなくなったのか現在では四のつく日すべてが縁日になっています。当日は多くの露店が並び、10万~15万人という多くの人でにぎわう様子が見られます。

こうして本来は神社やお寺にお参りすることはメインだったはずが、次第にそれを目当てに露店を出す人が増え、賑やかになっていったのです。

今では「縁日=露店」と考える人のほうが多いでしょう。

縁日の定番「金魚すくい」は、元々「金魚救い」!?

画像 : 縁日public domain

縁日の定番「金魚すくい」は、古代から行われている「放生会(ほうじょうえ)」という儀礼がもとになっているという説があります。
これは捕獲した魚や鳥を野に放し、殺生を戒める仏教の宗教儀式のこと。

仏教の経典「金光明経(こんこうみょうきょう)」には、釈迦の前世といわれた流水長者(るすいちょうじゃ)という人物が、水の流れが枯渇して死にかけていた魚を助け、魚たちの命が救われ天界で転生したというエピソードが記載されており、これに由来しています。

そして行事としての放生会が始まったのは、中国の南北朝時代末に天台宗を開いた智顗(ちぎ)の逸話から由来していると言われています。
智顗は、漁民が雑魚を捨てているのを見て憐れみ、自身の持ち物を売って魚を買い取り、池に放したのです。

この逸話はやがて日本にも伝わり、各地で放生会が盛んに行われるようになっていきました。

つまり「生き物を殺さない」という教えに基づいて動物を逃がすという儀式が、時代とともに形態も変化していき、現在の「金魚すくい」の原型となったのです。

今では縁日のエンターテイメントの一つである金魚すくいも、もともとは買った金魚を逃がしてあげる「金魚救い」だったのかもしれません。

おわりに

金魚すくいが縁日の風物詩として親しまれる一方で、その歴史には意外な側面が見えました。

これからは縁日の賑やかな雰囲気の中で、ぜひ金魚すくいの奥深さに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

目からウロコの日本の神様 著:久保田裕道
四万六千日・ほおずき市 – 浅草寺 (senso-ji.jp)

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