6年で119人が離職 和歌山県田辺西牟婁地方の公務員、20~30代が7割

和歌山県田辺西牟婁地方の普通退職者数

 和歌山県田辺・西牟婁地方の1市3町の職員で、2018年度以降の自己都合(普通)退職者が23年度末の見込みを含めると6年間で計119人に上ることが分かった。若い年代や、勤続年数が短い人の割合が多い傾向が浮かび上がった。

 紀伊民報が4市町に普通退職者の状況を取材し、集計した。離職によって欠員が生じると、残った職員の業務量が増えて組織としての対応力が減り、やるべき業務を先送りするなど、住民サービスにも支障が出かねないとされる。

 119人を年代別に見ると、20代が37.8%(45人)、30代は34.4%(41人)で、全体の7割強を占めている。採用からの年数別で集計すると、5年未満が34.4%(41人)、5~10年未満が22.7%(27人)、10~15年未満は17.6%(21人)だった。

 市町別で若手の退職者の割合が高いのは白浜町だ。毎年4月1日時点の職員数は310人前後。18~23年度の普通退職者は見込みを含めて計40人で、単純に計算すると6年間で約13%が辞めていることになる。町によると退職の理由はさまざまだが、多くは転職先を決めてから退職しているという。

 若手の離職防止につなげる試験的な取り組みとして、白浜町は本年度、新規採用職員1人につき勤続10~20年ほどの職員2人を相談者にする制度を実施。各組が原則月1回、面談してきた。担当者は「新人が気軽に相談でき、かつ先輩職員側に指導力を培ってもらおうと考えた取り組み。課題を洗い出し、継続できるか検討する」と話している。

 田辺市の6年間の退職者数は計46人で、4市町では最多だった。ただ、職員数に占める割合は約5%。

 田辺市は昨年10月に「秋採用」を実施。当初の採用枠「3人程度」に対し、90人が申し込んだ。期待できる受験者が多かったこともあり、10人を採用した。

 担当者は「慣れない時期ではあったが、たくさんの方に来てもらえたので良かった」と振り返る。他の自治体からの問い合わせもあったという。

■識者「迎える姿勢を」

 自治体側はどう取り組むべきか。公務員の働くモチベーションなどを研究している国際短期大学(東京)の砂原啓毅教授は「若者の働く意識の変化も踏まえると、民間も含めた人材確保競争で、自治体は相対的に難しい立場にある。今後は職員が定年まで勤め上げることを前提にしない方がいい」と指摘。採用活動の展開に当たっては、公務員の仕事に関心がある人の相談に応じたり、インターンシップを受け入れたりするなど「迎えに行く姿勢」を強めるべきと提案する。 ◇

 全国的に見ると、普通退職者は増えている。総務省の調査によると、22年度に退職した地方公務員は4万6103人。5年前の17年度は3万2290人だった。30歳未満の割合は22年度で39.5%、17年度は36.9%だった。

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