ドローンにより災害時の巡視を迅速かつ効率的に行うための技術、現場試行での成果

第4回現場ニーズと技術シーズのマッチングでは、各現場ニーズ提案者の現場にて、現場試行を実施した。その中から、災害時の巡視を効率的かつ迅速に実施できる技術という現場ニーズについて、現場試行結果を紹介する。

現場ニーズ概要

災害発生時の点検は限られた職員で対応しているため、全体の網羅に時間を要し、職員の負担も増加している。河川区域内の状況をドローン等により迅速に把握し、被害発生箇所に集中して職員が点検するなど、効率的な点検が可能となる技術が求められる。

防災向け自動航行ドローン(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ)

技術シーズ概要

防災ドローンを自動で航行できるため、人によるドローン操作が不要である。また、ドローンによって河川の現地状況を自動撮影でき、撮影した動画・画像はLTE通信等を活用して、ライブ配信・共有することができる。

ドローン技術の概要
現場試行状況の写真

現場試行結果(防災向け自動航行ドローン)

新技術(防災向け自動航行ドローン)は、従来技術(職員による点検)に比べて、ドローンの機体や運行管理費等のシステムの導入費用および運用費用が増加する一方、車両燃料費や巡視員の人件費等が低減する。

パトロール車による巡視では確認できなかったエリアの状況をより迅速に確認できた。巡回ルートの安全性を確認する必要が無いため、被災箇所発見後の迅速な対応が可能となった。

遠方の施設等でもズームにより確実に状況を把握することができた。パトロール車の巡視では確認が難しいエリアもドローンにより上空から撮影が可能だった。自動航行により、誰でも同じレベルで映像を取得できた。

巡回中における二次災害の発生を防ぐことが可能となった。現場や周辺道路、堤内地等を広域で情報収集が可能となり、安全性が高まった。

VTOLの自動航行を活用することで、ドローン操作の人員を確保する必要がなく、また従来技術と比べ巡視員を派遣する必要がない。より広域をより短時間で受信が可能となるため、施工性が高まる。

従来の巡視のパトロールカーからはCO2が排出されるが、ドローンだとCO2や排気ガスの排出が抑えられた。

評価

現場ニーズ提案者の評価は、以下のとおり。

  • 管理区域全域の迅速な状況把握(省力化、効率化、高度化)は十分可能
  • 制度改正及び機体性能(荒天時の運用)の向上を期待
  • NETIS登録に十分な技術

ドローンによる迅速な巡視と状況把握(株式会社 北開水工コンサルタント)

技術シーズ概要

出水や地震による大規模な堤防や河川構造物の変状、河岸侵食・崩落、河道変化等の発生の有無を迅速に把握するために、ドローンによる巡視を実施する。撮影した画像等の情報は、クラウドサーバー等に現地からアップロードし、迅速に情報共有する。

技術の概要図
現場試行状況

現場試行結果(ドローンによる迅速な巡視と状況把握)

撮影は延長10kmに対して1.5~2時間程度を要し、従来(職員による巡視)より作業時間は長くなった。計測は500,000㎡に対して1時間程度を要した。

縦断的に河川区域を飛行することで広範囲かつ的確に現地状況を確認できた。無堤区間等のアクセスが困難な箇所や樹木が繁茂して見通しがきかない箇所も確認できた。計測精度は5cm程度、水面標高の計測精度は5~10cmを確認した。

従来は職員が被災箇所へ立ち入るため、二次災害の危険があった。ドローンでは堤防上からの空撮が可能なため、安全な場所からの状況把握ができた。地震時等は堤防天端等を移動することなく、安全な場所から実施できた。

クラウドサーバーでの情報提供により河川事務所への迅速な報告が可能。現地撮影者のほか、複数名での現地確認が可能となり、見落とし防止や状況把握の迅速性が向上した。

従来は巡視のためのパトロールカーからCO2が排出されるが、ドローンの場合、巡視区間内の移動距離が50%程度削減できた。

評価

  • 災害規模の把握において、効率化、高度化が確認された。
  • UAVは機能により飛行距離が制限されるため、延長が長い場合は効率化の効果が低い。
  • NETIS登録に十分な技術

▶︎国土交通省

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