「神戸ワイン」事業を白鶴酒造が継承へ 神戸農政公社と協議始める 製造設備の老朽化など背景

左から白鶴酒造の森伸夫執行役員、神戸農政公社の福島国武常務理事、神戸市経済観光局の安岡正雄局長

神戸市の農家が栽培するブドウのみを使って神戸農政公社(同市)が製造、販売する「神戸ワイン」の事業を日本酒メーカー「白鶴酒造」(同市)が継承する協議を始めていることがこのほど分かった。今年秋に契約を結び、12月、白鶴酒造が事業を継承する予定。同月以降、白鶴がワインの販売をスタートし、2025年度以降は製造も手掛ける方針だ。

神戸農政公社と白鶴酒造、神戸市経済観光局が会見で明らかにした。神戸ワインは1984年10月の発売以来、約40年にわたって、神戸市の外郭団体である同公社が製造と販売を行ってきたが、製造設備の老朽化や多様化するニーズへの対応などから近年、民間活力を求めて事業パートナーを探していた。以前から取引のあった白鶴酒造に打診し、継承の基本合意に至ったという。

【写真】神戸ワインの主力商品が並んだ会見場

神戸農政公社は事業譲渡後も、ブドウ農家の栽培支援とブドウの買い取りを継続する。今後は白鶴酒造と協議を進めながら、同公社職員を白鶴に派遣するなどして醸造技術の引き継ぎを行う。事業の譲渡額は未定という。

神戸ワインは神戸市北区・西区にある約40ヘクタールの農園で作ったブドウを原料に製造。雨が少なく日照時間が長い神戸の気候が栽培に適しており、「酸味が特徴の質の高いワイン」(同公社)に仕上がるという。年間流通量は約20万本で、2019年のG20大阪サミットでも提供された。

白鶴酒造は1743年創業の老舗だが、ワイン製造は今回が初めて。会見で白鶴酒造の森伸夫執行役員は「これまで培われてきた神戸ワインを引き継ぐ責任がある。課題は多い」と述べ、神戸農政公社の福島国武常務理事は「神戸ワインをさらなる高みに押し上げてもらえると期待している」と話した。

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