20代、3人に1人は好意的…「デジタル給与」のメリット・デメリットまとめ

最新の意識調査や利用者の声もチェック

2024年3月11日〜31日まで、東京都が「暮らしを応援!TOKYO元気キャンペーン」を実施中。

都内対象店舗でキャッシュレス決済サービス(au PAY、d払い、PayPay、楽天ペイ)を利用すると、決済額の最大10%がポイント(1サービスにつき上限3000円分)で還元されるものです。

数年前と比べて、格段に利用者が増えた印象のあるキャッシュレス決済。

そんなキャッシュレス決済口座に給与が振り込まれるのが「給与デジタル払い(デジタル給与)」です。

普段キャッシュレス決済を利用している人は、とくに気になるのではないでしょうか。

今回は「デジタル給与」についてみていきます。若者世代の本音や、給与デジタル払いのメリット・デメリットもあわせて確認しましょう。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

そもそも「デジタル給与」って?

デジタル給与とは、金融機関の口座ではなく、〇〇ペイといったキャッシュレス決済口座を管理する「資金移動業者」のキャッシュレス決済口座に給与を振り込む仕組みのこと。

この仕組みを利用すると、銀行口座から引き出すことなく給与をキャッシュレス決済としてダイレクトに利用できるようになるのです。

また、賃金の一部を指定の資金移動業者口座で、その他は銀行口座などで受け取ることなども可能です。

ちなみにデジタル給与の背景にはデジタル化の推進と、金融機関口座を作るのが難しい外国人材を確保する目的があります。

経済産業省「消費者実態調査」キャッシュレス決済の要点まとめ

デジタル給与と切り離せない関係であるキャッシュレス決済。

まずは、経済産業省が行ったキャッシュレスの利用実態が網羅的にまとめられた調査、ポイントを確認していきましょう。

キャッシュレス決済「浸透率」:「7~8割程度以上の利用」全体の54%

【性別・年代別】キャッシュレス決済利用者の割合

調査の結果、日常生活において「7~8割程度以上キャッシュレスを利用する」と回答した人が全体の54%でした。

キャッシュレス決済が浸透していることがうかがえます。

お釣りなどでかさばる現金と違い、とにかく支払時や履歴確認時など「利便性」の高いキャッシュレス決済。

スマホの高い普及率とも関連性がありそうです。

キャッシュレス決済と「支払い額」との関連性:1000円以下で使用割合が増加

また、その他の質問において、タッチ決済の利用に意欲的な人ほど「1000円以下」の決済で現金を使用する割合が低下していることがわかりました。

さらに別の質問を分析したところ、フルキャッシュレス層であっても74%は現金を持ち歩いていることが判明しています。

ここから「現金がなくても生活できる」と感じている人は少数派であり、コンビニや駅などの少額・高頻度の買い物においてキャッシュレス決済が選択されているといえるでしょう。

そんなキャッシュレス決済のなかでも、多くのアプリ・サービスがある「モバイル決済」に対してどのような利用意識、不安な思いがあるのでしょうか。

【現役世代】20代「デジタル給与」に関する意識調査

株式会社学情は、20代の仕事観を探るため「デジタル給与払い」に対する意識調査を実施しました。

デジタル給与払いに対して利便性を感じているのか、20代が重要視するポイントが明らかになりました。

調査概要は以下の通りです。

  • 調査期間:2023年5月16日~2023年5月24日
  • 調査機関:株式会社学情
  • 調査対象:20代社会人
    (20代専門転職サイト「Re就活」/Webメディア「20代の働き方研究所」のサイト来訪者)
  • 有効回答数:530名
  • 調査方法:インターネットでのアンケート調査

※各項目の数値は小数点第二位を四捨五入し小数点第一位までを表記しているため、択一式回答の合計が100.0%にならない場合あります。

デジタル給与払いに対する20代の価値観は?

20代「デジタル給与払い」の希望割合

活用したいかをたずねた結果は「活用したい」14.7%、「どちらかと言えば活用したい」18.3%。

デジタル給与払いが可能な場合に希望したい割合は全体の約3割程度でした。

一方で「どちらかと言えば活用したくない」「活用したくない」割合はあわせて45.5%と、希望する割合より多い結果となっています。

デジタル給与払いになると入金の手間が省けると感じる方がいる一方で、現金確保もできる銀行口座利用のままで良いと感じる方の方が多いのが実態ではないでしょうか。

【20代】デジタル給与払いにおける給与の希望受け取り回数は?

複数回に分けての「デジタル給与払い」希望回数

デジタル給与払いが可能な場合に「複数回に分けて受け取りたい」と感じている人の割合は33.3%となりました。

デジタル給与払いの利便性を更に享受する活用方法として、自身の支出のタイミング等に合わせて複数回に分けて受け取りたいと感じている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

また、「どちらかと言えば月1回受け取りたい」、「月1回受け取りたい」と感じている割合は合わせて約4割おりました。

月1回のデジタル給与払いにより、給与を得た感覚を実感しやすい方が良いと感じている方もおります。

「デジタル給与払い」に対して不安を感じている方の意見についても探っていきましょう。

20代が抱える「デジタル給与」への本音

「実際に自分が利用するか分からないが、新しいことを積極的に取り入れる企業は好感が持てる」

「給与の受け取り方の選択肢が、複数用意されているのは嬉しい」

「社員の利便性を高めようと新しい方法を導入する企業は、働きやすい環境なのではないかと思う」

同調査では、上記のような声がまとめられていました。概ね好意的だといえるのではないでしょうか。

実際、企業がデジタル給与を導入したら「好感が持てる」と回答した20代は18.1%。

「どちらかと言えば好感が持てる」33.0%を合わせると20代の半数はデジタル給与に親しみを持っているといえるでしょう。

それでは「デジタル給与」のメリット・デメリットをチェックしていきましょう。

デジタル給与のメリット3つを解説

キャッシュレス決済が広がっているなかで「デジタル給与」には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

デジタル給与のメリット1:手間や手数料がかからない

デジタル給与払いでは、給与がそのままキャッシュレス決済口座に振り込まれます。

通常チャージするのに必要な手間や手数料がかかりません。

もちろん現金も下ろさずにすむため「休憩時間がATMに並んでいたら終わってしまった」ということもなくなるでしょう。

デジタル給与のメリット2:金融機関の口座を開かなくてもいい

デジタル給与では金融機関を介さずに給与が振り込まれるため、口座を所有する必要がありません。

母国語以外の言語圏において、金融機関で口座を開くのは難しいもの。

言語の壁を感じる外国人にも優しい支払い方法といえるでしょう。

また、外国人労働者を確保しやすくなることは企業側にとっても大きなメリットとなりえます。

デジタル給与のメリット3:送金の手数料が比較的小さくなる場合がある

企業側のメリットは外国人労働者の面だけではありません。

給与を送金する際のコストが比較的少なくすむケースが増えるためです。

給与を金融機関に振り込む場合、一般的に手数料がかかります。

支払う人数によっては大きなコストになる場合もあるでしょう。

その点、資金移動業者であれば比較的手数料を抑えて給与を振り込むことができるケースもあります。

デジタル給与のデメリット3つ

一方「デジタル給与払い」には、デメリットもあります。確認しておきましょう。

デジタル給与のデメリット1. セキュリティ面に不安がある

デメリットとして、セキュリティ面の不安があげられます。

口座の乗っ取りや心当たりのない出金など、給与が不正に引き出される可能性があるでしょう。

また、企業側からすると指定した資金移動業者に従業員の個人情報が集まるため、情報流出のリスクも考えられます。

デジタル給与のデメリット2:人件費がかかる

指定の資金移動業者を利用することで「人件費がかかる」という企業側のデメリットもあります。

デジタル払いを希望する人と、これまでどおり銀行振り込みを希望する人、それぞれに対応する必要があります。

そのため、どうしても人件費がかかってしまいます。

デジタル給与のデメリット3:口座の上限額がある

資金移動業者の口座上限額は、100万円以下に設定されています。

そのため上限額を超えた場合には、あらかじめ労働者が指定した銀行口座などに自動的に出金されます。

この際の手数料は労働者負担となる可能性があるため、指定の資金移動業者や勤め先に確認する必要があるといえるでしょう。

また、送金の必要性が高まるとせっかくの「口座不要」のメリットが薄れてしまう可能性があります。

ポイント還元などメリットも! 動向をチェックしながらキャッシュレス決済を検討して

海外と比較すると、日本におけるキャッシュレス比率は大きいとは言えません。

しかし、増加率や意識調査の結果をみると利用傾向が高まっている様子が伺えます。

2021年時点の利用したい割合は26.9%でしたが、今後の動向にも注目していきたいものです。

2021年時点:給与デジタル払いが可能になったら制度を利用したい?

はじめてのことは何でも難しく感じがちですが、キャッシュレス・スマホ決済などは実際にやってみるとその簡単さ・利便性に驚くでしょう。

まだ発展途上といえる「デジタル給与」ですが、企業側が導入したタイミングで検討してみるのもよいかもしれません。

参考資料

  • 東京都「暮らしを応援!TOKYO元気キャンペーン」
  • 株式会社学情「3人に1人は「デジタル給与払い」の活用を希望。「キャッシュレス決済サービスに直接入金されたら便利だと思う」「現金をほとんど使用しない」の声」(PRTIMES)
  • 厚生労働省「賃金のデジタル払いが可能になります!」
  • 厚生労働省「賃金移動業者の口座への賃金支払いについて 課題の整理⑦」

© 株式会社ナビゲータープラットフォーム