奈緒、『春になったら』で考える“死”と“結婚” 現場では「とにかく元気でいること」を大切に

“3カ月後に結婚する娘”と“3カ月後にこの世を去る父”の3カ月間を描くドラマ『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)。いよいよその“3カ月”が終わりを迎えようとしている。娘・瞳役の奈緒と父・雅彦役の木梨憲武による、本当の父娘のようなやりとりに毎話泣かされる本作。最終回に向けて、瞳の結婚式と雅彦の葬式への“カウントダウン”が始まっている。24年ぶりの連ドラ主演となった木梨と共にW主演を務めた奈緒に、座長としての心構えや自身の「結婚」と「死」についての考えを語ってもらった。

ーー民放GP帯連続ドラマ初主演となった2022年10月期の『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)を皮切りに、『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)、そして今回の『春になったら』と、コンスタントに連続ドラマで主演を務められていますね。

奈緒:今回もそうなのですが、毎回お話いただいた時は「私でいいんですか?」という気持ちで……こればっかりは、きっと何回やらせていただいても最初はそう思ってしまうのかなと。というのも、『あなたがしてくれなくても』のときは、『ファーストペンギン!』の経験があったので、「少しは自分の中で安心感みたいなものが芽生えるかな」「不安が少なくなったりするのかな」と思っていたのですが、やはりそうではありませんでした。

ーー2回目だからといって“慣れ”みたいなものはなかったと。

奈緒:違うチームで新しいものを作ることになるので、やっぱりどうしてもドキドキします。ただ、もちろんどの作品でも自分の役への責任は変わりませんが、主演を任せていただいたことで、より作品全体への責任感も芽生え、その分やりがいも感じられました。みんなで乗り越えたときがどれだけ幸せかということも経験させていただいたので、緊張感や不安な気持ちは、結果的にいい形に結びつくものとして、受け入れられるようにはなってきました。

ーーそれはいい傾向ですね。

奈緒:あと今回は、以前ご一緒した『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)のスタッフさんが多いので、嬉しい再会もあり、そういう意味での安心感はありました。

ーー主演という立場だと、やはりお芝居以外のことも考えたりされるんですか?

奈緒:特に何かをするというわけではないんですが、自分の中でひとつ意識しているのは、とにかく元気でいること。自分に優しくすることを含めて、現場のみなさんがどうしたら元気でいられるかを考えるようにしています。自分が笑うことによって周りが笑顔になってくれると嬉しいですし、そういう空気感を大切にしたいです。私自身も、今までの現場で座長の笑顔に救われる瞬間が今までたくさんあったので、今の自分にできる唯一のこととして、とにかく元気で、笑顔でいることを心がけています。

ーーW主演の木梨憲武さんの存在も含めて、本当に楽しそうな現場ですね。

奈緒:木梨さんが本当に面白くて。お芝居というより、現場で笑いすぎて、終わると脱力してしまうくらいです(笑)。そういう意味での体力づくりも必要でした。

ーー奈緒さんのお芝居は人を惹きつける力があるなと毎回作品を観ていて感じるのですが、ご自身の中で何か意識していることはあるんですか?

奈緒:私はあまり器用なタイプではないので、逆にその不器用さを大切にと言いますか、あまり背伸びせずにやれたらいいなと毎回思っています。台本があるのでもちろんセリフを覚えたりするわけですが、そのシーンを撮る瞬間だけは、先のことは何も考えずに、とにかく役と一緒に迷ったり悩んだりできたらいいなと。本気で迷ったり悩んだりする人間らしさはずっと大切にしたいです。

ーーそれこそ『春になったら』の瞳は、父の死に直面し、毎回迷ったり悩んだりしています。奈緒さん自身はこの作品を通して「死」についてどういうことを考えましたか?

奈緒:私は幼い頃に父を亡くしているんです。なので、生まれたときから身近な人の「死」がわりと近くにあって。20歳になって大人の仲間入りをしたときに、大人になったってことはいつか自分もいなくなっちゃうんだよなということを考えたことがあったんですよね。自分がいなくなってしまう瞬間に着々と近づいているんだな……と感じてしまって。

ーーなるほど。

奈緒:でも、「死」について考えることは一般的に縁起が悪いとされていますが、「死」は生きることの延長線上にあるものなので、後悔なく笑って幸せな死を迎えるためにどう生きるか、みたいなことを考えるのは、個人的に結構好きなんですよね。母とも、よく母の死について一緒に考えたりするんです。どういう遺影がいいかとか、日常会話で楽しく話したりしています。

ーードラマでは、雅彦の「死」と対照的に、瞳の「結婚」が描かれています。「結婚」について考えたりすることはありますか?

奈緒:もう29歳なので、いわゆる結婚適齢期に自分が差し掛かっている実感はあって、結婚についても考えてみたことがあったんです。本当に真剣に考えてみて、私自身は今は手放すことを選択しました。

ーー結婚しないと?

奈緒:絶対に“結婚”したいかと言われると、そうではなくて。私の周りでも、高校時代の親友や身近な友達が結婚という選択をするようになって、友達の結婚をきっかけに改めて自分の結婚について考えてみたんです。そして前向きに今は自分から「結婚」という言葉を手放そうと思いました。何がきっかけになるか分かりませんが、自分の中で結婚したいと思う瞬間まではあまり考えずにいようと。結婚して家族をつくることを目標にして、素敵な出会いに巡り合ったお友達もいますし、カズくん(濱田岳)と出会ったことで結婚したいという気持ちが芽生えた瞳もいる。自分自身がどんなタイミングで「結婚」とまた向き合うことになるかはわかりませんが、今は瞳を通して家族になることの尊さを改めて感じています。

(取材・文=宮川翔)

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