[Alexandros]が3月16日、17日に東京・青山学院記念館にて凱旋ライブ『[Alexandros] Back To School!! celebrating Aoyama Gakuin's 150th Anniversary』を開催した。
メンバーの川上洋平（Vo/Gt）と磯部寛之（Ba/Cho）の母校であり、バンド結成の地でもある青山学院大学。青学でのライブは当初2020年3月に開催が予定されていたが、コロナ禍の影響で中止に。大学が創立150周年を迎えるタイミングでついに実現した今回のライブは、4年越しのリベンジ公演となった。
2日目公演、ステージにかけられた紗幕に映し出されたのは、キャンパスを舞台にしたアニメーション。その直後、メンバー4人のシルエットが浮かび上がり「Burger Queen」が演奏される。会場を埋め尽くしたオーディエンスが歓声を上げるなか、幕が振り落とされて[Alexandros]の姿が露わになった。1曲目は「Aoyama」。軽快なバンドグルーヴと〈It’s gonna be alright〉というラインが響くこの曲で始まるライブは、おそらくこの日が最初で最後だろう。
「Welcome to Aoyama！」（川上）というシャウトの後は、最新曲「todayyyyy」。磯部がシンセベースで、生々しいバンドサウンドを彩る。リアド偉武（Dr）がリズムをつなぎ、「Dracula La」へ。川上もギターを響かせ、鋭利にしてしなやかなアンサンブルが出現する。観客も体を揺らし、間奏のコーラスでは大合唱が生まれた。
「楽しいね！ テンションぶち上げていこうぜ！」という川上の煽りに導かれたのは、白井眞輝（Gt）のギターリフを軸にした「Droshky!」。パーカッシブなビート、サビに入った瞬間に解放されるメロディがめちゃくちゃ気持ちいい。さらに圧倒的な疾走感に貫かれたサウンドとともに〈言葉 さえも いらない 今は／理由なきその声を〉という言葉が広がった「無心拍数」によって、ライブは早くも最初のピークを迎えた。
ここで川上が、今回のライブについてあらためて語り始めた。4年前にデビュー10周年のタイミングで予定していた青学凱旋ライブは、コロナ禍の影響で中止に。その後も紆余曲折ありながら、ようやく青学に戻ってこれたことに「青学関係者のみなさん、そして来てくれたみなさんのおかげです！」と声を張り上げた。
「この間、決して悪いことばかりではなくて、いろんな曲ができて。コロナ禍になっていちばん最初にできた曲をみなさんの前で演奏できることを嬉しく思います。よかったら一緒に歌ってください」という言葉に導かれたのは、「rooftop」。リフレインされるピアノのフレーズとアコギが絡み合い、美しくも切ない音像が立ち上がる。白井のリリカルな雰囲気のギターソロも心に残った。
この後も[Alexandros]の多彩かつ奔放な楽曲が次々と披露された。「（青学は）おそらく日本一、いや世界一おしゃれな場所にあると思います。我々の曲のなかでも、とびっきりおしゃれな曲を披露したいと思います！」（川上）と紹介されたのは、ダンサブルなビートが心地好い「VANILLA SKY」。ド派手なレーザーライトとともに放たれた「Boo!」でダイナミックにして鋭利なサウンドを叩きつけ、さらに「Kill Me If You Can」、「Starrrrrrr」とアンセムを連発。ライブが進むにつれてメンバー全員のプレイがしっかりと噛み合い、スリリングかつ爆発的なロックチューンへと昇華させる。ステージが溢れ出す高揚感は、絶対にこのバンドにしか生み出せない。「青学！！」と叫び、会場の興奮をさらに引き上げる磯部の佇まいも文句なくかっこいい。
耽美的なSEとグリーンを基調にしたライティングに導かれた「In your face」で極上のサイケデリアを演出したのち、激しく点滅する照明のなかで「Claw」へ。強度を高めたギターサウンドによって、瞬く間にまったく違う世界へと誘われる。尖りまくった音像と〈Get in to Get Out to Get it to Get up to〉というラインが互いを高め合う「Stimulator」を挟み、「最高のラブソングを捧げます」（川上）という言葉から「Girl A」へとなだれ込む。様々な時期の楽曲をシームレスにつなげ、“今”の[Alexandros]をダイレクトに見せつけるステージはまさに圧巻。演奏のダイナミズムやアレンジの構築を含め、既存曲がしっかりとアップデートされていたことも記しておきたい。
ここで川上と磯部がバンド結成当初のエピソードを語った。青学を受験した時からお互いを認識していて、最初はどちらも「気に入らないヤツ」と思っていたこと。大学1年の終わり頃に学食で会話し、「意外といい奴かも」（磯部）と印象が変わり、その後に川上が磯部をバンドに誘ったこと――。「しかも（留年で）2年多く学校に行きまして（笑）。学費を払ってくれた親にも感謝です」（川上）という言葉から、「風邪をひいた時の歌」。風邪をひいた時に実家で食事をして、親のありがたさをあらためて実感する……という歌を軽やかに歌い上げ、会場全体を温かいムードで包み込んでみせた。
「夢のような2日間を過ごさせてもらってます」「偶然や縁があってこうやって4人でバンドをやっていて。バンドが誕生した地でこうやってライブをやっているのは、幸せなことであり、不思議なことであり、すごいことだなと。ありがとうございます」「でも、まだまだ満足はできてなくて。やっぱりぶっちぎりで一番になりたい。改めてここで宣言します。我々は世界一になります」（川上）
感謝と決意の意思を示したあと、ライブは一気にクライマックスへ。鋭利なグルーヴとラウドな爆発力がぶつかり合う「Mosquito Bite」、繊細なギターアンサンブルからはじまり、圧倒的なスピード感に貫かれたバンドサウンドへと移行する「閃光」、そして最高のライブアンセム「Waitress, Waitress!」へ。興奮と解放感が同時に渦巻くなか、本編は終了した。
アンコールではまず、川上がひとりで登場。「ひとりでやろうとも思ったんですが、もうひとり呼びます。ギターと言えば……磯部寛之！」とアコギを持った磯部がステージに呼び込まれた。ふたりで演奏された曲は、「Adventure」。観客がコーラスパートを担う“セッション”も、ひとつのマイクでふたりが歌をのせる姿もまた、青学ライブだけの特別なシーン。「こんな豪華なギターデビューをさせてもらって俺は幸せ者です」と言う磯部にとっても、記憶に残る演奏だったと思う。
白井、リアドも再びステージに上がり、4人で未発表の新曲「Jullius」を披露。オルタナ経由のロックンロールでありながら、髄所に独創性に富んだアイデアが反映され、他のどこにもない、[Alexandros]の音楽へと結びつく。この曲を聴いて筆者は、彼らのクリエイティビティがさらに自由に広がっていることを確信した。
「まだどこかのタイミングで青学に戻ってこられたらと思っています」「青学のマスコット（EAGOという鷲＝イーグルをモチーフにしたキャラクター）、何だか知ってますか？」「我々も日本一、みなさんを遠くに飛ばせるバンドだと思ってます」というMCに導かれたのは、代表曲のひとつである「ワタリドリ」。最後に2010年リリースの初めてのシングル曲「city」を放ち、ライブはエンディングを迎えた。
5月15日に約2年ぶりとなるニューシングル『SINGLE 1』をリリース。そして、6月には東京、名古屋、大阪、福岡のライブハウスを巡るツアー『SINGLE 1 TOUR』の開催も決定。さらに10月26日、27日には野外で行う初めての主催フェス『THIS FES ’24 in Sagamihara』も控えている。記念すべき“青学凱旋ライブ”を成功に導いた[Alexandros]はここから、活動のギアを一気に上げることになりそうだ。
