ALS嘱託殺人、医師の大久保被告の弁護人が控訴

大阪高裁

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた医師大久保愉一(よしかず)被告(45)の弁護人が18日、懲役18年とした京都地裁判決を不服として、大阪高裁に控訴した。

 公判で被告は、女性の殺害を認めた上で、「願いをかなえるためだった」と説明。弁護側は、被告の行為に嘱託殺人罪を適用することは自己決定権を保障した憲法に違反するとして、無罪を主張していた。

 5日の地裁判決は、病状を正確に把握しないまま、秘密裏に殺害した被告の行為に社会的相当性は認められないと判断。「生命軽視の姿勢は顕著で、強い非難に値する」と断じた。

 判決によると、知人で元医師山本直樹被告(46)と共謀して2019年11月30日、ALSを患っていた京都市中京区の林優里(ゆり)さん=当時(51)=の自宅マンションで、林さんから頼まれ、胃にチューブで栄養を送る「胃ろう」から薬物を投与し、急性薬物中毒で死亡させた。

 同時に審理されていた山本被告の父親=当時(77)=に対する殺人罪も、地裁は有罪認定した。

© 株式会社京都新聞社