スイスのメディアが報じた日本のニュース

スペイン向け「エミ・カフェ・ラッテ」の製造過程。欧州初のチルドカフェとなった同製品は、今はスペインやオーストリアなどでも人気商品となった (Keystone)

スイスの主要報道機関が先週(3月11〜17日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。 ※SWI swissinfo.chでは毎週月曜日、スイスの主要メディアが報じた日本関連ニュースのまとめ記事を配信しています。こちらからニュースレターにご登録いただければ、記事の配信と同時にメールでお届けします。 今回ご紹介するのは①防衛費増額には経済改革が不可欠②移民と同性婚で支持広げる日本維新の会③日本から発想を得たチルドカフェの大成功―です。 防衛費増額には経済改革が不可欠 ドイツ語圏の日刊紙NZZは13日、「超高齢化と経済衰退 地政学的な地位を固めるなら、日本は動かねばならない」と題するマルコ・カウフマン・ボッサール氏の論説を掲載しました。同氏は2004~07年にドイツ語圏各紙の東京特派員を務めたことがあり、2022年からNZZ特派員チームを率いています。 記事は日本株式相場が過去最高値を更新するなか、名目国内総生産(GDP)が世界4位に転落したという事実から日本は目を背けていると指摘しました。2010年に中国に抜かれた時は、「ニッポンはまだ自身や世界と闘っていた」が、今は儀礼的な注意喚起がなされるにとどまっています。 出生率は1.2と低く、人口減少を移民で補うことにも抵抗があり、女性の労働市場への統合も遅れているのに、「日本の経済衰退は、政治エリートにとって多少面目を失うことを意味するにすぎない」と記事は指摘します。経済ランキングの低下を単純に受け入れ、「多文化主義からも程遠い」とも揶揄しました。 一方で、日本は孤立したわけではなく、反対に外交政策を強化しています。2023年4月には「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を導入し、「同志国」の軍に防衛装備品などを無償提供する道を開きました。カウフマン・ボッサール氏はこれを「平和憲法を理由に安全保障政策の責任を負うことを長らく躊躇してきた日本にとって、これは量子的飛躍に相当する」と評価します。 しかし「長期的には、経済的重要性の喪失と野心的な外交・安全保障政策の共存はうまくいかない」と指摘。地政学的野心の実現に経済力は不可欠であり、「最終的に経済の構造的問題に取り組むことは避けられない」と結びました。(出典:NZZ/ドイツ語) 移民と同性婚で支持広げる日本維新の会 12日のNZZには馬場伸幸氏率いる日本維新の会の躍進を解説する記事が掲載されました。執筆者はNZZと独紙ハンデルス・ブラットの東京特派員のマルティン・ケリング氏です。 まず、同党は「西側諸国の右翼・ポピュリスト(大衆迎合主義)政党とは大きく異なる路線を辿っている」と指摘。国内政策では軍備増強など右派の要素があるものの、経済政策では市場主義を掲げ、社会政策では移民受け入れや同性婚を支持するなどリベラル派の立ち位置にあります。 裏金問題による自民党離れが維新への追い風となるものの、全国レベル、特に大都市以外の地域では「自民党との差別化が難しくなっている」とも指摘。両党とも保守党を自認しており、馬場氏によると最大の違いは「抜本改革への意欲」だといいます。 また維新の躍進の背景には日本の「西側民主主義国とは大きく異なる政治文化がある」と分析。上智大学の中野晃一教授の言葉を引用し、「不満を持つ人々はデモや暴動を起こす代わりに、政治に見切りをつけるかポピュリスト政党に投票する」と説明しました。 維新が全国的にも自民党に代わる政党になれるかどうかは、「自民党が今後どうなるか次第」だと予測。昨年の地方選挙で岸田文雄首相の支持率低下を背景に維新が躍進したことを引き合いに、4月に行われる衆議院補欠選挙は「自称革新者たちが勢力を増すのか、失速するかの分水嶺になる」と締めくくりました。(出典:NZZ/ドイツ語) 日本から発想を得たチルドカフェの大成功 スイスの乳製品メーカー「エミ(Emmi)」のチルドコーヒー「エミ・カフェ・ラッテ」が15日、発売から20周年を迎えました。スイスの農業新聞、シュヴァイツァー・バウアーは17日、同製品が日本にインスピレーションを得た商品であることを紹介しました。 同社の企画部隊が「インスピレーションを求めて」日本を訪れたのは2000年代初頭。当時の欧州にはなかった「冷たいコーヒー」の存在を始めて知ったといいます。焙煎から製造、100%スイス製牛乳などにこだわって製品開発に取り組み、2004年3月に欧州初のチルドカフェを発売。「外出先でつめたいコーヒーを楽しむという新しい楽しみの習慣」を生み出しました。 訪日当初は「それほど成功を確信していなかった」ものの、今ではスイス、スペイン、オーストリアのインスタントコーヒー市場で第1位の人気商品に育っています。(出典:シュヴァイツァー・バウアー/ドイツ語) 【その他、スイスで報道されたトピック】 話題になったスイスのニュース 先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス最高裁、自殺ほう助事件の無罪判決を支持」(記事/日本語)でした。他に「『巨根すぎる』ネズミでスイスの学術誌が炎上」(記事/日本語)、「チューリヒ大が大学ランキングから脱落」(記事/英語)も良く読まれました。 意見交換 日本語を含む10言語に対応した意見交換ページで、世界の読者やswissinfo.chの記者と意見を交換しませんか?下のリンクからお気軽にご参加ください。 今日のテーマ:あなたにとって「尊厳ある死」とは? ご意見やご感想、取り上げて欲しいテーマなどのご要望がありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお寄せください。 次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は3月25日(月)に掲載予定です。 校閲:大野瑠衣子

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