【発達障害】自閉スペクトラム(ASD)の子によくある“4つの困ったケース”と上手な解決法

【画像】『マンガでわかる 発達障害の子どもたち』より

発達障害の中でも理解されづらいのが、ASD(自閉スペクトラム症)のコミュニケーションです。

「普通わかるでしょ?」ということが分かりにくく、周囲の大人の混乱を招きがちです。

「発達障害は少数派の種族のようなもの」と、信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授の本田秀夫先生は話します。

だから多数派のように生きるのではなく、特性を理解し、そのまま成長していける環境をつくること。無理に多数派になろうとすると、心の健康に悪影響が出てしまいます。

この記事では、本田先生の書籍 『自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』より、自閉スペクトラムの子の一見“困った”行動と上手な対処法を紹介します。

困ったケース1:特定の子と一緒になるといつもケンカになる

マンガ:フクチマミ

普段は穏やかなのに、気の合わない友達と一緒にいるとトラブル多発。友達を叩いてしまったり、ケンカになったり…。

自閉スペクトラムの特性がある子の場合、特定の子と一緒にいるときにはイライラして、衝動的に相手を叩いてしまったりすることがあります。その場合はマンガのように先生が真ん中に入り、合わない2人の接点を減らして、無用なトラブルを減らすことを考えましょう

問題を起こしてから反省させるのではなく、子どもたちの様子をよく見て、問題が起こりやすい場面を減らすのがポイント。

これは家族で買い物に行くときにも有効です。

自閉スペクトラムの特性がある子どもは、興味がある物を見るとつい手を出して触りたくなってしまうことがありますが、初めから子どもを連れて店に入らなければトラブルは起きません。学童期までは『トラブル回避』優先でかまわないのです。

困ったケース2:いたずらを注意すると調子に乗る

マンガ:フクチマミ

部屋の電灯のスイッチを入れたり、切ったり。親から注意されることも楽しんでいる…!?

自閉スペクトラムの特性がある子は、特定のものごとにこだわりを持ち、それに基づいて行動パターンをつくります。この場合はスイッチを押したときの感触や音などが好きで、それを何度も体験したくて、操作を繰り返しているのかもしれません。こういうときは言葉で注意するのではなく、環境を調整することをおすすめします。

マンガ:フクチマミ

例えばスイッチにカバーをかけて、ボタンが見えない状態にすればむやみに押すことも減るはず。大人は操作できるように上側だけ空けておきましょう。

次第に「スイッチは大人がつけるもの」と納得するようになります。

困ったケース3:学校生活にいつまでたっても慣れない

マンガ:フクチマミ

入学から数ヶ月経っても、教室から飛び出したり、立ち歩いたり。先生は「そのうち慣れてくる」と言うものの…。

『最初が肝心』とは多くの子どもに言えることですが、自閉スペクトラムの特性がある子には特に当てはまります。『苦手なことでも少しずつ』の方針はうまくいかないことが多いです。

徐々に慣れさせるよりも、最初から子どもが参加しやすい環境を用意したほうがうまくいきます。

例えば特別支援学級では、子どもの好きな本を席に置いておくのもいいでしょう。

マンガ:フクチマミ

『こういう活動なら集中して取り組めそう』という見通しで授業を準備すると問題行動は減ります。子どもをよく見ている学校では、早ければ1日から2日、長くても1カ月程度で子どもが落ち着いてきます。

最初が肝心な行動パターン。スムーズにそのパターンを身に付けられれば、その後もストレスなく学校や幼稚園生活を送ることができます。

困ったケース4:生活ルーティンが身につかない

マンガ:フクチマミ

お風呂の時間、歯磨き、宿題など声がけしないと動かないのはどうして?

その子にとって、生活の流れがわかりにくいのかもしれません。そういう場合視覚的な情報を活用してみましょう。わかりやすいスケジュール表をつくって視覚的に生活ルーティンを明示します。ただ注意しているだけでは中学年になっても高学年になっても、この悩みが続いてしまう場合もあります。

マンガ:フクチマミ

「そんなにお膳立てして将来のためにならないのでは?」と思うかもしれませんが、「視覚情報」に頼るのは、実は大人も同じ。契約など重要な事柄は全て書面にしています。

自閉スペクトラムの特性がある子には、視覚情報を活用したほうが行動しやすくなる子が多いです。早くから支援を受けて、視覚情報に慣れ親しんでいったほうが、むしろ自立が進みます

自分に合った方法を早く理解することができると、生活がスムーズになり、成長とともに活動の幅も広がっていきます。

「自閉スペクトラムタイプの子育ては、親の願いよりも子どもの気持ちやペースが優先。心の健康が全ての土台です」と本田先生。

苦手なことを無理強いするのではなく、その子らしく楽しく生きていける力を。それが親と子の幸せにつながっていくでしょう。

著者:本田秀夫
精神科医、医学博士。信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。2023年より長野県発達障がい情報・支援センターセンター長。発達障害に関する学術論文多数。
日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。

漫画:フクチマミ
マンガ家・イラストレーター。『おうち性教育はじめます』シリーズ、『マンガおさらい 中学英語』シリーズ(以上、KADOKAWA)、『マンガで読む 子育てのお金まるっとBOOK』(新潮社)、『マンガでわかる 散らからない仕組み』(主婦の友社)など

(ハピママ*/ 庄司 真紀)

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