昭和の食堂車、千葉へ出発 青森県八戸市で保管「サシ581-31」 ポッポの丘でお披露目予定

クレーンでつり上げられ、トレーラーの荷台に積載される食堂車の車体部分=583系食堂車保存会提供

 高度経済成長時代に日本列島を走り、引退後に青森県八戸市の民有地で保管されてきた「昭和の食堂車」の車体部分(全長約20メートル)が17日夜、トレーラーの荷台に積載され、移設先の鉄道ミュージアム「ポッポの丘」(千葉県いすみ市)に向け出発した。道路使用許可を得て、夜間に平均時速約40キロで計約850キロの道のりを走行。今月下旬にポッポの丘に到着し、月末にお披露目される予定。

 食堂車は1972年製造で特急「はつかり」や寝台特急「はくつる」などとして走り、86年に引退した国鉄の特急形寝台電車の食堂車車両「サシ581-31」。所有していたのは、八戸市で障がい者施設「柿の木苑」を運営する社会福祉法人ぶさん会理事長の豊山信子さん(59)。元施設長で旅行好きだった母の故・くにさんが、施設利用者の就労の場として喫茶店にする構想も視野に国鉄から取得した。だが喫茶店として利用するのは難しく、隣接する民有地で倉庫として使ってきたが近年、老朽化が進んでいた。

 鉄道ファンらにより設立された「583系食堂車保存会」がクラウドファンディング(CF)を実施。整備・修繕費を調達し、この日を迎えた。移送準備は15日にスタート。車体側面には、支援者の名前を列車時刻表の形式で記した掲示などが掲げられた。

 17日は午後9時過ぎ、車体部分がトレーラーで出発した。豊山さんは「やっとここまで来たことに、ほっとしている」と話した。保存会の梅原健一会長(53)=千葉市=は「老朽化が進んでいる。車両がどれだけ頑張ってきたのか、今の状態を知り『みんなの車両』にするため助けていただきたい。到着後は見積もりを行い、長い道のりになるかもしれないが修繕していきたい」と話した。

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