前人未到の八冠として臨んだ栃木県日光市での大一番で、藤井聡太(ふじいそうた)棋王(21)が貫禄を見せつけた。17日に指された将棋の第49期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第4局。昨年と同じ日光の地での2年連続白星を受け、藤井棋王は「昨年がタイトル獲得で、今年は防衛できた。また印象深い対局になった」と語った。会場ではプロ棋士による大盤解説会が開かれ、来場者は藤井棋王に「おめでとう」と万雷の拍手を送った。
17日夜。挑戦者の伊藤匠(いとうたくみ)七段(21)を退け、初防衛を果たした。自身初の持将棋(じしょうぎ)(引き分け)から3連勝。藤井棋王は記者会見では「どの将棋も難しかった。なんとか結果を出せてうれしい」と振り返った。
1年前より成長した点に時間配分の上達や戦型の幅の広がりを挙げた。本県でのタイトル戦は1月の王将戦(大田原市)も制し、通算4戦4勝と好相性だ。
会場となった日光市鬼怒川温泉大原、「日光きぬ川スパホテル三日月」では、プロ棋士による大盤解説会が開かれ、約150人のファンが戦況を見守った。
壇上に大きな将棋盤が置かれ、小山市出身の長谷部浩平(はせべこうへい)五段(29)らプロ棋士が次の手を予想し展開を解説。大型スクリーンに対局室の様子も映しだされ、一手一手に注目した。
午後7時過ぎに勝負が決し、藤井棋王が会場に現れると、来場者たちは拍手で迎え、「おめでとう」と口々に声をかけた。
藤井棋王ファンの東京都港区、主婦新井雅恵(あらいまさえ)さん(55)は16日から会場のホテルに滞在し対局を見届けた。「楽な戦いではなかったが今回も魅力的な将棋だった。初防衛に立ち会えて胸がいっぱいです」と満面の笑みだった。
会場では「第14回とちぎ将棋まつり」も開かれ、プロ棋士による指導対局や小学生の将棋大会も行われた。藤井棋王は「たくさんの人に来ていただいた。栃木県の将棋の盛り上がりを実感している」と話した。
(井上裕史(いのうえやすふみ)、〓木澤良太(はのきざわりょうた))