高砂熱学工業/月面用水電解装置が完成、水素・酸素生成へ世界初の挑戦

高砂熱学工業は18日、世界初となる月面での水素・酸素生成ミッションに向け、月面用水電解装置フライトモデルが完成したと発表した。宇宙開発ベンチャーのispace(アイスペース)が進める民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2で、2024年冬に月着陸船(ランダー)に搭載。月面環境下で水素・酸素の生成に挑戦する。
月面用水電解装置は、大きさが縦300ミリ、横450ミリ、高さ200ミリで重量が10キロ以下。地上向け水電解技術を応用し、月面への輸送費削減のため小型化した。▽水を電気分解して水素と酸素を生成する電解セル▽電気分解に必要な水と生成した酸素をためるタンク▽生成した水素をためるタンク▽装置全体を制御する電気ユニット-などで構成する。地上から月までの輸送時や月面環境下での耐震性、耐熱・耐寒性を担保。重力が地球と比べ約6分の1ほどの月面でも作動する流体制御や機械的強度も確保した。
同ミッション2では、高砂熱学工業が開発した月面用水電解装置で水素・酸素の生成実験を行う計画。月面に到着後、地上から持参した栗田工業の超純水を活用し、「水素と酸素を作り圧縮する」という運転と停止を繰り返す。ランダーから供給される電力で水を電気分解し、水素と酸素を生成。水電解装置の運転操作や状態監視はランダーの通信設備を通じて行う。
同日、東京都内で完成報告会見を開いた。高砂熱学工業の小島和人社長、加藤敦史研究開発本部カーボンニュートラル事業開発部水素技術開発室担当部長、ispaceの袴田武史代表取締役兼最高経営責任者(CEO)、栗田工業の鈴木裕之執行役員イノベーション本部長、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の稲谷芳文名誉教授が出席。ミッション概要を説明した。トークセッションも行い、今後の展望や宇宙ビジネスの可能性を語った。
会見で小島社長は「月面で氷から水を作り、水から水素と酸素を作る技術を目指す。ただ当社だけではできない。ispaceらと手と手を取り合っていく」と述べた。袴田代表取締役は「宇宙に生活圏を作りたい。そのために高砂熱学工業の技術は不可欠だ。次のミッション2はミッション1の知見を生かし水電解装置の試験と成果を確認するよう努める」と意気込んだ。

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