大自然の野外博物館 「丹波地域恐竜化石フィールドミュージアム」がつなぐ太古と未来

丹波竜の化石発見地として知られる篠山層群エリアでは、恐竜の化石などを通じたSDGs体験型プログラムを実施しています。

2025年の大阪・関西万博開催に合わせて兵庫県で展開されている『ひょうごフィールドパビリオン』。丹波竜の化石発見地として知られる篠山層群エリアでは、恐竜の化石などを通じたSDGs体験型プログラムを実施しています。

【写真】動く恐竜の模型は、鳴き声も迫力満点!

◆世界的にも珍しい「篠山層群エリア」

同プログラムを実施する、丹波地域恐竜化石フィールドミュージアム推進協議会事務局の佐藤美奈さんに話を聞きました。

「丹波竜」は国内最大級の恐竜と言われていて、丹波篠山市から丹波市にわたる篠山層群エリアの地層でその化石が発見されています。ほかにも篠山層群では、多くの恐竜や哺乳類の化石が発見されているのだそう。また、恐竜の化石は人里から遠く離れた場所で発見されることも多いのですが、丹波竜やその他の化石の発見地は人々の暮らしの中にあり、“農村風景と恐竜が共存する”世界的に見ても貴重な地域なのだそうです。

そんな同地域にある恐竜関連の施設を繋いで、広大なフィールドミュージアム=野外博物館と捉え、地元では「丹波地域恐竜化石フィールドミュージアム」と称しています。約10キロメートルの範囲に見学拠点になる施設が点在しており、県内や近隣府県からの手頃なドライブコースに。拠点施設を組み合わせて様々なコースを巡ることも可能です。

佐藤さんに、モデルコースの一例を紹介してもらいました。

まずは『丹波篠山市立 太古の生きもの館』からスタート。丹波篠山市宮田で発見された「ササヤマミロス・カワイイ」や「パキゲニス・アダチイ」の原寸大復元模型、そして兵庫県立丹波並木道中央公園で発見されたトロオドンの2分の1復元模型などが、当時の環境を感じられるように展示されています。

また屋外には、岩石や鉱脈の一部が地表に現れている所も。地層の細部を間近で見られるため、古代に生息した自然や命の跡を見ることができます。同館は兵庫県立丹波並木道中央公園の中にあり、公園の奥には人より大きいサイズの動く恐竜が2体(ティラノサウルス、トリケラトプス)います。迫力のある鳴き声も聞けるのだそう。

また公園内にはサイクルステーションがあり、マイカーを公園に駐車して積んできた自転車に乗り換え、サイクリングしながら周辺地域を巡ることもできます。

次に訪れるのは『元気村かみくげ』です。こちらには丹波竜の実物大モニュメントがあり、目を引きます。のどかな田園風景に立つその姿は、まるで現代にタイムスリップしてきたよう!「撮影スポットとして最適です」と佐藤さん。休日には、篠山層群の恐竜化石をとりまいていた岩石を実際にハンマーで割って、本物の化石を探す発掘体験も実施されています。

『元気村かみくげ』からは遊歩道を歩き、丹波竜の化石発見地まで散策することもできます。遊歩道からよく見える川代渓谷では、春には桜を楽しめるのだそう。発見地では篠山層群の観察と共に、現存する約100年前の水力発電施設の『旧上久下村営上滝発電所記念館』 (登録有形文化財)も見学できます。

佐藤さんは「恐竜がいた1億1千万年前と、100年前に建設された水力発電、そして今の里山の暮らし。壮大な時の流れをひとつの場所で感じることができるのは、なかなかできない体験です」と話します。(遊歩道は現在、橋梁工事のため通行止めとなっていますが、工事中も丹波竜化石発見地までは歩いていくことができます)

そして最後の目的地は『丹波市立丹波竜化石工房 ちーたんの館』。丹波竜の実物大全身骨格模型をはじめ、様々な恐竜やいきものの化石・標本の展示を観察できるうえ、実際に触りながら学習できる展示も多数あります。事前問い合わせで、専属のエデュケーターによる解説を聞くことも可能で、丹波竜や古代の生き物をより深く知り、身近に感じるきっかけにもつながります。(リニューアル工事のため、2024年9月下旬から2025年7月上旬は休館)

◆フィールドミュージアムを通じて考えるSDGs

同プログラムでは、気候変動について考えるきっかけを提供したいという思いも。「丹波竜をはじめ恐竜はなぜいなくなったのかは諸説ありますが、その一つとして気候変動があげられています。今、自然災害や気候変動や急激に進む都市化など世界規模の課題が山積していますが、遠い昔、恐竜が暮らしたのもこの地球です。フィールドミュージアムでは、長い地球の歴史を知って、地球や自然の豊かさを守り、私たちの暮らしとの共存に取り組む輪を未来につなげるきっかけになればと考えています」と佐藤さん。

篠山層群では、丹波竜の愛称で親しまれている「タンバティタニス・アミキティアエ」や、日本最古級のほ乳類「ササヤマミロス・カワイイ」のように、地域の名前が学名につく世界的にも貴重な発見が今も続いているとのこと。同プログラムでは、こうした化石の発掘体験や見学などを通じて、地球の歴史を知るきっかけを提供しています。里山で太古の時代から現代までを体感することで、未来について思いを馳せてみるのもいいかもしれません。

(取材・文=市岡千枝)

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