競技人口約1億3000万人のeスポーツ映画、主演の奥平大兼「映画の撮影としてはすごく大変でした」

奥平大兼 撮影:冨田望

『さよなら渓谷』『タロウのバカ』の鬼才・大森立嗣監督が、実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得て、長澤まさみさんを主演に放った衝撃作『MOTHER マザー』。同作で、長澤さん演じる母の呪縛から逃れられない息子役を演じた奥平大兼。奥平さんは、初めてのオーディションで勝ち取ったこの役でセンセーショナルなデビューを果たし、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。また昨年はドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』で、改めて大きな注目を集めた。まだ20歳にして大器の予感たっぷりの奥平さんが語るTHE CHANGEとは。【第2回/全4回】

2020年に映画『MOTHER マザー』で長澤まさみの息子役でデビューを飾り、その後もドラマ『恋する母たち』で吉田羊の息子役、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』で松岡茉優の生徒役、Disney+Starで全世界に配信中の主演ドラマ『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』では中島セナとのW主演を務めるなど、着実にキャリアを重ねてきた奥平大兼。現在は鈴鹿央士とのW主演作『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』が公開中だ。

本作は奥平さんがもともと好きだというeスポーツを題材にした青春映画。「eスポーツ(esports)とは、エレクトロニック・スポーツの略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称である」(※日本eスポーツ連合より)。

競技人口は世界で約1億3000万人。視聴者は4億人とも言われ、オリンピックの正式種目にするための運動まで行われている、注目度も経済効果もうなぎ上りのジャンルである。

――『PLAY!』では奥平さんと鈴鹿さん、そして小倉史也さん演じる、友達でもなんでもなかった3人の高等専門学校生がチームを結成して、eスポーツの全国大会に挑んでいきます。試合の場面は声を出して応援したくなりました。実際の撮影はどのように?

「すごく大変でした。ゲームをやっているところの撮影は、3人分の撮影が必要なので。たとえば練習試合や予選をしているときの3人は、同じゲームに、それぞれ自分の家から参加しているわけなので、撮影も各場所で3人分必要です。だけど声やテンションは合わせないといけない。だから、みんな自分の撮影じゃなくても、撮影現場に来て、別室で一緒にお芝居する必要があるんです」

新鮮だった勝ち負けにこだわらない姿勢

――ひとつのシーンを、それぞれ3人の視点、芝居で撮影する必要がある。

「だからゲームのシーンでは、それぞれ3回本番があったんです。特殊な撮影でした。ゲーム画面も、演技の段階では映像はないので、絵コンテをみながら想像してやっていたんです。みんなでだんだん試行錯誤しながらやるようになっていったりして、特殊でしたけど、面白かったです」

――ゲームを題材にした映画で、ゲームしているお芝居ですが、実際はゲームしている感覚ではなかったかもしれないですね。

「そうですね(笑)」

――絵コンテを見ながらだったとのことですが、出来上がりを観たときは?

「こうなってるんだ!と。ゲーム画面がついた状態になっていたので。想像以上にクオリティがすごくて、当たり前ですけど、すごく面白かったです。それにそもそも大画面でゲーム画面を観るということが、今までになかなかないことだったので、その新鮮さもとても感じました」

――特殊な撮影だったとのことですが、今回の作品に出たことで、ほかに何か気づきや発見はありましたか?

「タイトルにもある“勝つとか負けるとかは、どーでもよくて”という部分です。勝ち負けにこだわらない姿勢というのは、今までにもあったことかもしれないけれど、意識したことはあまりなかったし、新しい価値観として、改めて自分の中に入ってきた気がします」

――奥平さん自身、「勝ち負けはどちらでもいい」と考えるようになったということでしょうか?

「勝ち負けも大事だと思います。ただ、“勝ち”とか“負け”とか2つの価値観だったところに、勝ち負けも重要だと思うけれど、そうじゃない“勝つとか負けるとかは、どーでもよくて”という新しい価値観が加わった感じです。だから何が一番ということはないんですが、新しいものが入ってきたという意味で、変わったかなと思います」

映画の裏話を披露してくれた奥平さん。凸凹トリオのような3人が挑む試合のシーンは、つい声を出して応援したくなってしまうが、その熱演の裏には絵コンテを観ながらの芝居や、3度にわたる本番があったとは驚きだ。

奥平大兼(おくだいら・だいけん)
2003年9月20日生まれ、東京都出身。2020年、『MOTHER マザー』で長澤まさみ演じる秋子の息子・周平を演じてデビュー。同作にて第44回日本アカデミー賞新人俳優賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン 新人男優賞、第63回ブルーリボン賞新人賞、第30回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞した。2023年度は、『あつい胸さわぎ』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』『ヴィレッジ』『君は放課後インソムニア』にて第15回TAMA映画賞最優秀新進男優賞に輝いた。ほか主な出演作に映画『マイスモールランド』『パレード』(Netflix)、ドラマ『恋する母たち』『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』など。鈴鹿央士とW主演を務める映画『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』が公開中。3月26日にドラマ『ケの日のケケケ』(NHK総合)が放送予定。

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