アングル:マグニフィセント・セブン内の格差拡大、適正価格見極めが焦点に

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米国株式市場の上昇をけん引してきた超大型7銘柄「マグニフィセント・セブン」内の格差が鮮明になりつつある中、切り上がった株価のバリュエーションが適正かどうかが焦点となっている。

LSEGデータストリームのデータによると、7銘柄の今後12カ月の予想PER(株価収益率)は33倍と、2022年末の26倍から上昇。年初から7%超上昇しているS&P総合500種は構成銘柄の予想PRが約21倍と、マグニフィセント7を大きく下回る。

昨年は投資家がマグニフィセント7の強固なバランスシートと各市場での優位な地位を踏まえ、株を買い上げた。今年に入り投資家はより選別的になり、電気自動車(EV)大手テスラやIT(情報技術)大手アップルの見通しが不透明になると売りを浴びせる一方で、半導体大手エヌビディアを買い増し上昇に拍車をかけた。

ボストン・パートナーズのグローバル市場調査担当ディレクター、マイク・マレーニー氏は「このようなバリュエーションになれば失敗も失望も許されない」と語った。

テスラはEV需要を巡る懸念を背景に年初から35%急落し、S&P500構成銘柄の値下がり率トップとなっている。年初の予想PERは65倍だったが、現在は約50倍まで低下している。

アップルは中国事業の不振で年初から10%下落し、時価総額国内トップの地位をマイクロソフトに明け渡した。PERは29倍から25倍に低下した。

一方、エヌビディアはAI半導体で先行していることが強材料となり年初から約80%急騰。PERは約35倍となっている。AIへの期待感からメタ・プラットフォームズも約40%上昇、PERは24倍となった。

昨年はマグニフィセント7が軒並み上昇。アップルは約50%、エヌビディアは230%超の値上がりした。S&P500種に占める7銘柄のウエートが高いため、同指数の上昇率(24%)の6割強をマグニフィセント7が占めた。

投資家は、エヌビディアがAI半導体での大きなリードを長期的な優位性確保につなげられるかどうかを見極めようとしており、18日に開幕する同社の開発者会議に注目する見通し。

バファロー・ラージキャップ・ファンドのポートフォリオマネジャー、ケン・ローダン氏は「私たちはAIによる前例のないサイクルのさなかにあり、このテクノロジーの大きな過渡期がもたらす機会を最大限に生かすことに苦心している」と話した。

LPLフィナンシャルのチーフ株式ストラテジスト、ジェフリー・バックバインダー氏は、堅調な収益がマグニフィセント7のバリュエーションを支えてきたが、成長軌道は今年後半あるいは来年序盤に緩やかになるはずだと予想。

7銘柄の直近12カ月のPERが41倍と、S&P500種(23倍)の約2倍にあることに触れ、成長が鈍れば「市場はこのグループにPER2倍の価格を支払いたくなくなるかもしれない」と語った。

それでもなお、多くの投資家はマグニフィセント7のバリュエーションに強気なままだ。JPモルガンのストラテジストは、7社のうち5社が過去5年間のPERの中央値を下回る水準にあり、7銘柄の市場全体に対する相対的水準は数年前よりも割安と分析した。

エヌビディアのPERは、アナリストが同社の利益予想を引き上げてきたのに伴い、1年前の60倍近くから低下している。

しかし、アップルとテスラの株価は最近、長期トレンドを示す200日移動平均線を割り込んだ。他の5銘柄は同平均線を上回っているが、今後下回る銘柄が増えれば市場にとって「警告のサイン」となると、シティグループのアナリストは指摘。

ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニアグローバル市場ストラテジスト、サミール・サマナ氏はマグニフィセント7が「下落し始めればこのところのユーフォリア(陶酔)とも言える市場心理が急転する可能性がある」と語った。

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