スリランカ、「最低宿泊料金の高騰」により観光客をタイやインドに奪われる

(EconomyNextより)

スリランカの政治・経済・金融に関する情報を中心に取り扱う、スリランカ発ローカルメディア『EconomyNext』より翻訳・編集してお伝えする。

スリランカ、主要産業である観光業が危機に

業界関係者によると、高水準の部屋が低価格で利用できる他国に比べて、スリランカは低価格とは言えない最低宿泊料金のために、企業等の会議、インセンティブ旅行、展示会・イベントに訪れる旅行者を東アジアやインドの競合他社に奪われているという。

スリランカインバウンドツアーオペレーター協会(SLAITO)のニシャド・ウィジェトゥンガ会長は、「業界は昨年、国による最低宿泊料金の提示がされる前に行われた予約の大半を維持することができた」と述べた。

「しかし、来るはずだったMICE※グループがスリランカの予約をキャンセルし、タイやインドの他の地域などに流れていったため、我々は負けてしまった」とウィジェトゥンガ氏はEconomyNextに語った。

※MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で、これらのビジネスイベントの総称。

特にインドからの観光客は、スリランカのMICE、観光産業において重要な役割を果たしている。

5つ星ホテルは10室しか提供されず

スリランカの多くの企業は保護主義に慣れきっており、輸入税で価格を吊り上げ、国家の強制力を使って顧客からより多くの金銭を引き出そうとしている。タイルや鉄鋼はその最も顕著な例の一つである。

タイルや鋼材の価格が高いため、ホテルの建設費が高くなり、レジャー産業の競争力が低下しているとアナリストらは指摘する。しかし、観光産業では、建築資材の場合とは異なり、顧客は国内に閉じ込められることがなく、自由に他の市場に移動することができる。

CECイベント&トラベルズのマネージングディレクター、イムラン・ハッサン氏は、「我が国の最低宿泊料金のせいで業界は東アジアからの団体客を失った」と語った。

ある観光会社は、900人の顧客を迎え入れるための準備をしていた。「そして、それがタイに移ったのだ」とハッサン氏は語った。「このように、我が国の最低宿泊料金では顧客が満足できず、他の国に移ってしまうケースが多くある」(ハッサン氏)。ちなみに、2023年のタイには2,804万人の観光客が集まっており、その勢いは今年も継続している。

かつてスリランカを毎年訪れていたあるグループは、5つ星ホテルの40~50室を占有していた。今回スリランカは、より低い価格を提示して他国と競争した。

「しかし、今年、5つ星ホテルは10室しか提供されていません」とハッサン氏は説明した。「彼らは、宿泊料金があまりにも高くなりすぎて余裕がないため、小規模なホテルに滞在しています」(ハッサン氏)。

「ですが全体として、私たちは政府関連機関と協力して問題を修正しています。モルディブのように需要と供給の状況によって料金が上昇することは気にしていません。私たちが言いたいのは、開かれた市場を維持し続けたいということです」(ハッサン氏)

ラニル・ウィクラマシンハ大統領は、「スリランカは保護主義のままでは前進することはできず、競争に直面することを学ぶ必要がある」と述べた。

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