【裏金問題】堂々巡りで何も進まず(3月19日)

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は依然、実態解明にはほど遠い。18日の衆院政治倫理審査会が注目されたものの、疑問は残ったままだ。岸田文雄首相と野党側の国会でのやり取りは堂々巡りが続く。政治資金規正法改正など本丸の議論にいったい、いつ入るのか。政治改革に向けた国会審議は進展せず、入り口で空費している印象を拭えない。

 安倍派が資金の還流を復活させた経緯に関し、派閥の会長代理を務めた下村博文氏は還流額を議員個人のパーティー収入に上乗せし、合法的に処理する案が幹部協議の場で出たと記者会見で明かしていた。政倫審では「合法的」の説明に割り切れなさが残り、誰の提案かも結局、分からずじまいだった。

 幹部協議を巡り、安倍派座長を務めた塩谷立氏は、還流を復活させる方向で話し合われたと、先の政倫審で説明している。事務総長だった西村康稔氏、当時参院側会長の世耕弘成氏はいずれも結論は出ていないと証言するなど、食い違いは生じたままだ。

 野党は、世耕氏らの証人喚問と森喜朗元首相の聴取を求めている。真相の徹底究明が規正法改正の前提だとの主張は理解できる。ただ、自民は実態調査と説明責任、野党は責任追及の形式的な実績づくりで終わるようでは、むしろ国民の信頼や期待は失われるだけだろう。国民の納得のいく形で決着を付けるよう政府、与野党に改めて求めたい。

 17日の自民党大会で、岸田首相は関係議員を厳しく処分し、党と政治改革を断行すると表明した。前日の全国幹事長会議では、一連の対応への批判が相次いだ。不満のはけ口で終わるのか。本県を含め党の自浄能力を引き出す地方組織の存在意義も問われる。

 現下、日銀の大規模金融緩和政策の先行きと国民生活への影響が焦点となっている。国際情勢を見れば、ロシア大統領選でプーチン氏が通算5選を決め、新たに6年の覇権体制を敷く。北朝鮮は弾道ミサイルを新たに発射し、日韓米へのけん制を強めている。

 重要課題は内外に山積している。国政の停滞は許されない。政府、与党は緊張感をもっと高めて政治改革に対処すべきだ。国民は野党の動向を含め、厳しく注視し続ける必要がある。(五十嵐稔)

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