原発避難、賠償を増額 仙台高裁・宮城県訴訟、国の責任認めず

 東京電力福島第1原発事故で避難区域となり、本県から宮城県などに避難した住民81人が国と東電に計約5億5300万円の損害賠償を求めた訴訟で、仙台高裁の瀬戸口壮夫裁判長は18日、一審仙台地裁判決を支持し、国の賠償責任を否定した。東電には、一審判決を約1400万円上回る約1億5800万円を原告75人に支払うようを命じた。原告は上告する方針。

 瀬戸口裁判長は判決理由で、国は平安時代の津波の知見から東電に津波対策を命じる必要があったとしたが、原告側の主張する原子炉建屋の水密化は「事故前の知見では実施が難しく、津波対策を命じなかったことが著しく合理性を欠いているとは言えない」として国の賠償責任を否定した。

 一方、東電は2002年の国の地震予測「長期評価」に基づき対策していれば、「事故の規模が異なるものになった可能性は否定し難い」と指摘。

 その上で「被災者からすれば原発事故は人災でないかという思いが捨て難く、精神的苦痛が増幅されたことは容易に推察できる」とし、22年12月に見直された国の賠償基準「中間指針」第5次追補を上回る水準を認定した。

 原告側は閉廷後、仙台市で記者会見を開き、原告団長の石井優(ゆたか)さん(76)は「国の責任が認められず、私たちの声が裁判所に届かなかった」と話した。

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