福島県会津若松市、入湯税引き上げ検討 東山、芦ノ牧温泉 放置旅館解体の財源 市議会、陳情を採択

 福島県会津若松市で入湯税引き上げに向けた動きが出ている。市議会は2月定例会議最終日の18日、引き上げを求める陳情を採択した。増額分(超過課税分)を市内の東山、芦ノ牧の両温泉地に振り分け、放置された旅館・ホテルの解体や魅力的な景観形成の財源とする内容だ。県によると、県内の市町村で入湯税の標準税額150円から引き上げたケースはない。市内の観光振興の基盤となっている温泉地からの提案を受け、市は市税条例の改正を検討している。

 2022(令和4)年に合わせて60万人近くの宿泊客らを迎えた東山、芦ノ牧の両温泉観光協会が連名で陳情書を市議会に提出した。休廃業後に放置された建物が観光地全体の景観を損ね、倒壊の危険性も高まっていると指摘。官民一体で魅力的なまちづくりを進めたいと訴えた。

 市によると、残存する大型の旅館・ホテルは少なくとも東山で4施設、芦ノ牧で2施設存在する。休廃業から30年以上が経過した施設もあり、窓ガラスの割れや外壁の傷みが目立っている。

 市や両温泉観光協会で構成する市温泉地域活性化検討会は昨年2月、現状の打開につなげようとアクションプランを策定した。これらの施設を2027年以降に解体させる工程を掲げている。一つの施設を解体・撤去するには少なくとも数億円規模の費用がかかると見込む。

 市の入湯税収は2022年度が7860万円で、新型コロナ禍前の2019年度は1億596万円。税収はすべて市の一般財源に組み込まれ、市全体の観光振興などに充てられている。現行の枠組みでは両温泉地に充てる資金を十分に確保するのは難しく、関係者からはプランを実行に移せないとの声が上がっていた。

 室井照平市長は定例会議の新年度施政方針で、温泉地の景観改善や付加価値を高める支援の必要性を強調した。東山温泉観光協会の平賀茂美会長は、緑地や防災広場の整備を求め「計画的な財源があれば、10年先、20年先の温泉地を創造できる。市内全体の集客に結び付くはずだ」と話した。県旅館ホテル生活衛生同業組合の木村泰司事務局長は「建物の解体に頭を悩ませる温泉地は県内でも少なくない。先行事例になる」と期待した。

 

■「協力したい」9割超宿泊客調査

 東山、芦ノ牧の両温泉観光協会は今年1月から2月にかけ、宿泊客に入湯税引き上げに関するアンケートを実施した。「使途が明確であれば協力したい」との回答が9割を超えた。

 加盟する旅館・ホテルに宿泊した958人(県内502人、県外456人)から回答を得た。入湯税引き上げに「協力したい」とした宿泊者のうち、引き上げ分の妥当額を「150円」としたのが39.5%で最も多かった。次いで「100円」が29.3%だった。

 

※入湯税 地方税法に基づき、鉱泉浴場の利用者に課す税金。利用された施設側が特別徴収義務者となり、所在自治体に納税申告する。会津若松市では東山、芦ノ牧の両温泉地を中心に27施設が課税の対象となっている。国で定める標準税額は1人につき1日150円だが、自治体が税額を変更できる。全国各地で税額引き上げが導入されている。北海道釧路市では一部の条件を除き、一般宿泊客の入湯税を150円から250円に引き上げた。

© 株式会社福島民報社