“有害”「モペッド」が今春に大粛清!? 明確に“原付き”扱いとなり「ペダルのみの走行」でも摘発へ

国民生活センターでは道交法の基準に不適合の中国製モペッドへの注意を呼び掛けてきた(国民生活センターHPより)

軽微な交通違反で「青切符」を交付し、反則金を納付させる交通反則通告制度の対象に自転車も加えられるなどの道路交通法一部を改正する法律案が3月5日、閣議決定。開会中の国会に提出され、成立すれば、交付から2年以内に施行される。これに関連し、違法乗車が急増しているペダル付き原付きバイク「モペッド」がこの春、大粛清されるという。

警察庁によると、2023年に全国の警察が摘発したモペッドの交通違反は345件。これは、前年の96件から約3.6倍増。違反の内訳は、無免許運転111件、ウインカーやミラーなどの装備がない整備不良102件、歩道走行などの通行区分違反45件がトップ3だ。

いずれの内容も、交通ルールをしっかり認識していればクリアされる基本的な違反といえる。逆にいえば、この内訳にこそモペッドが交通ルールを荒らす問題児となっている元凶が集約されている。

なぜ”確信犯”が後を絶たないのか

どういうことか。そもそもモペッドは道交法上、50cc以下の原付きバイクと同じ扱い。つまり、16歳以上でなければ乗車できず、公道を走るには運転免許はもちろん、ヘルメット着用、方向指示器等装着、ナンバープレート、自動車損害賠償責任保険(自賠責)加入も必要だ。

ところが、摘発された多くの運転者は、「摘発はされないと思っていた」と話すという。その理由は、街中でまるで自転車に乗るようにモペッドを乗り回す運転者が珍しくないからだ。東京都内なら、公道を歩いていれば、1日に1回以上はノーヘルでモペッドを乗り回すシーンに出くわす。

そうなってしまう原因のひとつはその見た目にある。ペダルがついていることから見た目は自転車で、さらにネット等での販売では意図的なのか「電動アシスト自転車」として販売されているケースも少なくない。その結果、購入者が自転車と都合よく勘違いして乗車しているのだ。

自転車と見紛う外観で中国から流入し、定着した

「現在問題となっているモペッドはもともと中国が日本の電動アシスト自転車をまねて開発したんです。インホイールモーターのため、外観からはモーターが見えず、ペダルもあり、自転車と見紛(まご)うことが問題で、これが日本に大量に流入し、いつの間にか定着しました。区分上は明確に50cc以下の原付きなのですが、電動アシスト自転車として売られたり、購入者も十分に認識しないまま購入、乗車して、『知りませんでした』ととぼけたりしていたわけです」

こう解説するのは、道交法改正にも有識者として名を連ねる、自転車活用推進研究会理事長の小林成基氏だ。

約30年前に日本で誕生した電動アシスト自転車を模倣するように中国でモーター付き自転車が生まれ、それが日本にネット販売等を経由して流れてきた車両。それが、昨今、トラブルを多発している有害モペッドなのだ。

国民生活センターは、再三にわたり、こうした道交法の基準に不適合の中国製モペッドを「電動アシスト自転車ではない。乗れば違法の可能性」と警告してきたが、ネット販売する事業者などは販売を継続。こうした抜け穴に加え、警察も電動アシスト自転車との見分けが難しく、摘発を効果的に行えない事情も重なり、モペッドはこれまで、わが物顔で交通規範を乱してきた。

警察庁の発表では、2023年のモペッドによる交通違反は345件だが、小林氏は「これはあくまで検挙された数字ですが、実際には逃げている人もかなりの数いるでしょう」と、モペッドの”大暴走”を指摘する。

「知りませんでした」は排除。この春大粛清へ

その上で、この春からモペッドの取り締まりが大幅に強化されることを予告する。

「法改正により、モペッドは”明確に”原付き(原付き1種=50cc以下)扱いとなります。ということは、仮にペダルだけの走行であっても、無免許、ノーヘルメットは違反ということ。問答無用です」と小林氏。自転車のように手軽に乗れ、それでいて、動力で走行できる快適な乗り物――。そんな都合のよい勘違いをして、必要条件を満たさずに乗り回していた悪質モペッドドライバーを、今回の法改正で満を持して駆逐するのだ。

さらに小林氏は次のように宣告する。

「これからもルールを無視してモペッドに乗ろうとしているなら、首を洗って待っておいた方がいいと思います。警察はまず、取り締まりを徹底するために、モペッドに違法に乗車していると摘発されるということを知らしめていくことになります。Xデーはもうこの春です」

3月下旬から、4月の春の交通安全週間(6日~15日)にかけ、警察による違法なモペッドドライバー取り締まりが大々的に行われるという。

悪者扱いのモペッドも正しく乗れば快適なモビリティだ

約30年前に日本で誕生した電動アシスト自転車は、いまや自転車の主役といえる存在になった。それに便乗するように中国から入ってきたモペッドが、自転車と原付きの区分を混乱させ、”違法乗車”を助長。さらに23年7月には無免許で乗車できる電動キックボードも走行可能になり、いま日本の公道は混沌(こんとん)の極みにある。

この状況を整理するために改正される道交法。それを徹底するための土壌づくりに、まずはモペッドをターゲットにした、車歩道のトラブル排除へ向けた粛清が今春から大々的に実施されることになる。

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