長生きする習慣は「ストレスゼロの生活を送る」「適度にストレスがある生活を送る」どっち?

(※写真はイメージです/PIXTA)

どうすれば長生きできるのか? それは100歳でも元気でいられるような習慣を選択することです。内科専門医・秋津壽男氏の著書『100歳でも元気なのはどっち? 長生きする人・しない人の習慣』にはその習慣がまとめられています。それでは、日常生活を送るなかでのストレスについて紹介します。

ストレスはあった方がいい?

現代人とストレスの関係は盛んに議論されてきました。

過度なストレスはさまざまな病気を引き起こす要因になると言われますが、そもそもストレスとはなんでしょうか?

一般的にストレスというと、心身にマイナスの影響を及ぼす出来事や要因を指すことが多いです。

しかし正確には、これは「ストレッサー」とよばれるもので、ストレスとは区別されます。

ストレッサーとは外部環境からの刺激のことで、暑さや寒さ、病気や外傷だけでなく、負荷のかかる運動や人間関係における緊張なども含まれます。

そして、これらのストレッサーに対する心身の反応を「ストレス」といいます。

たとえば、あまりのうれしさに涙が出たり、寒さで鳥肌が立ったりすることも「ストレス=反応」なのです。

つまり、ストレス(反応)がないということは、ストレッサー(刺激)に鈍感になっている状態です。これは、体内に侵入する細菌やウイルスを排除する免疫力が減退している状態とも置き換えられ、放っておくとウイルスに侵されてしまう可能性があります。

それゆえ、適度にストレスがある環境は、実は歓迎すべきと言えます。心身への適度な負荷は、脳が活性化され、仕事の効率が上がるという研究もあります。

しかし一方で、過剰なストレスが続く環境では、そのストレスに体が適応できず、自律神経系や内分泌系に異常が生じます。ストレスの多い現代社会では、こちらのほうが問題と言えます。

では、私たちは、ストレッサーが溢れる環境の中で、どのように暮らしていけばいいのでしょうか。

笑う門には「健康」来たる

まずは、免疫力を養うことです。免疫力を養うために手っ取り早い方法として、よく笑うことがあります。

つくり笑いであっても「はっはっはっ」と声をあげて笑うと、ストレスによって減退してしまうNK(ナチュラルキラー)細胞がいきいきと働くようになると言われています。

NK細胞とは、血液中のがん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ攻撃するリンパ球で、これは我々の体にもともと備わっている生体防御機構において重要な役割を担っています。

NK細胞は血液中に存在するリンパ球の10~30%を占め、活性化型レセプターと抑制型レセプターという2種類のセンサーが備わっています。ウイルス感染細胞やがん細胞と出合うと活性化型レセプターから信号が入って相手を攻撃します。しかし正常細胞と出合ったときには抑制型レセプターから信号が入るため、攻撃することはありません。

ここで、1991年に吉本興業株式会社の「なんばグランド花月」で行われた、NK細胞と笑いの関係についての興味深い実験結果をご紹介します。

がん患者を含む19人(20~62歳)に漫才、漫談、吉本新喜劇(計3時間)を鑑賞してもらい、その前後で血液検査を行ったところ、被験者の7割以上で血中のNK細胞の活性化が確認されました。

このNK細胞は加齢やストレスが原因で活性が低下することが知られていますが、笑うこと以外にも、次に挙げる6項目を心掛けることで、活性を高めることができます。

① バランスの良い食事

② 質の良い睡眠

③ 適度な運動

④ 保温に努める(冷えを防ぐ)

⑤ 喫煙を控える

⑥ 適度な飲酒

また、心身への影響をできる限り少なくするために、自分が受けているストレッサーがどのようなものなのかをチェックして、自分なりにマネジメントすることも大切です。

多忙なタイムスケジュールであれば少しゆるめて、どこかに休養の時間を設けましょう。

精神的な不安が大きい場合は、その不安がどこから来ているのかを見直して発散方法を探すなど、無理のないストレスマネジメントを目指してください。

【ポイント】

適度なストレスは脳を活性化させる一方、過度なストレスはさまざまな病気のリスクを高める。

ウイルスやがん細胞を攻撃する免疫細胞の一種にNK細胞があるが、これは笑うことや生活習慣の改善によって活性化させることができる。

秋津 壽男

医師

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