上に媚び、下請けを叩いて出世した人に訪れる寂しい余生…孤独な老後を回避するため「今すぐやめるべきこと」

(※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代にひたすら「上下関係」を重んじて出世した人ほど、定年後は寂しい生活を送ることが多いようです。定年後を孤独に過ごす人と、多くの友人らに囲まれて過ごす人の違いはどこにあるのでしょうか。本記事では和田秀樹氏の著書『老化恐怖症』(小学館)から一部抜粋し、定年後も豊かな人生を実現するために現役時代からできる準備について解説します。

「上に媚びて出世した人」の落とし穴

定年前後の男性がよく口にする不安の一つに、「仕事以外に付き合いがないから、定年後は孤独になりそうで怖い」というものがあります。このテーマは、50代以下の人にもよく考えていただきたい問題です。

一般的に、若い頃は組織内で出世して偉くなるために、上司に気に入られるよう、あるいは嫌われないように、相手に媚びる態度をとる人が割と多いと思います。その一方、部下には偉そうにする人が多いわけです。

さて、そのようにひたすら「上下関係」を重んじてサラリーマン人生を送ってきた人は、晩年になってどうなるでしょうか。

高齢者を専門にした医療現場で長年勤めていると、引退後、何らかの病気になって入院した時、家族以外に見舞い客が来なかったり人が寄りつかない患者さんと、割と見舞い客が多く訪れる患者さんの2パターンがあります。

傾向として、見舞い客が寄りつかない患者さんのほうが、現役時代の社会的地位は高かったりします。よくよく観察すると、現役時代に上に媚びるのに必死で部下を可愛がらなかった人は、自分が病に倒れた時には頼りにしていた上司はすでに他界しているケースも多く、その結果、寄ってきてくれる人がいないことが往々にしてあるのだと気が付きました。

反対に、上に楯突いたかどうかは別にしても、部下を可愛がっていた人の場合は、定年後も当時の部下が寄り付いてくれるようです。入院中の様子を見ても、やはり、人間関係は上下で考えないほうが、後々になって孤独にならないと言えそうです。

「会社人間」をやめるべき理由

定年後に孤独にならないためには、いわゆる「会社人間」であることをやめなければいけないと思います。昔からよく言われていることではありますが、会社に尽くしすぎるとろくなことになりません。それは、プライベートの人間関係が希薄になるから、という理由だけではありません。

例えば、最近の急激な物価上昇を受け、日本の大企業には賃上げの動きが出ています。一方、中小企業でその動きがなかなか見られないのは、ほとんどの大企業が下請けを買いたたいているからだと言えるでしょう。

こうした「大企業」と「下請け企業」の上下関係は、日本経済全体の効率化を阻むものとして批判されています。当然、その構造は、そこに勤める社員同士の関係をも縛るものです。会社の指示に従って、ただ下請けをたたいていれば、会社を辞めた後は「嫌われ者」になるだけでしょう。

もし、定年後に起業を目指すのであれば、社内で上司に媚を売ったりしている場合ではありません。遅くとも50歳を過ぎたら、「会社を使って人脈を作る」くらいのことを考えておくほうが得策のはずです。

下請けをたたいて会社を儲けさせたところで、その会社が定年後まで特別な計らいをしてくれるわけではありません。だけど、下請けの取引先にちょっとでも利益を還元できるように仕事ができれば、ひょっとしたらその会社に好条件で再就職できるなど、定年後にそれ以上のものが返ってくるかもしれないということです。

これまで会社内の人間関係を大事にしていたところから、「自分自身の将来のためには下請けと仲良くするほうがいい」と考え方を変えられるかどうかは、その後を大きく左右するでしょう。

営業職の場合、それまで会社の〝手先〞であったがために、取引先に嫌われていると自覚しているようなら、新たな取引先を見つけてこれまでとは違う営業スタイルを試してみるのも一手です。

終身雇用・年功序列で企業年金がたくさんもらえた時代と違い、会社が死ぬまで面倒を見てくれるわけではないのに、会社にそこまで尽くす意味があるのか。一度立ち止まって考えてみてはどうでしょうか。

和田 秀樹

精神科医

※本記事は『老化恐怖症』(小学館)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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