First Love is Never Returned、jo0ji、離婚伝説ら出演 満員のO-EASTを揺らした『Spotify Early Noise Night #16』

Spotifyが注目するアーティストを一堂に会したライブイベント『Spotify Early Noise Night #16』が3月15日、東京・Spotify O-EASTにて開催された。

『Spotify Early Noise Night』は、Spotifyがその年に躍進を期待する新進気鋭アーティストを10組選出するプレイリスト『RADAR: Early Noise』と連携し、不定期で行われているライブイベントである。2017年5月よりスタートし、これまでにあいみょんやSTUTS、羊文学、SIRUPなど様々なジャンルのアーティストがブレイク前に出演しており、回を増すごとに注目を集めてきている。

今年の『RADAR: Early Noise 2024』には、MFS、音田雅則、サバシスター、JUMADIBA、jo0ji、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN、tuki.、十明、First Love is Never Returned、離婚伝説の10組が選出された。この日のイベントには、その中からサバシスター、jo0ji、First Love is Never Returned、離婚伝説の4組に加え、昨年の『RADAR: Early Noise 2023』に選出されたFurui Rihoが出演、満員となったフロアにフレッシュな演奏を届けた。

定刻となり、最初に登場したのはFirst Love is Never Returned。NYにボーカル留学経験を持ち、巷では早くも「恋する歌声」などと評されるKazuki Ishidaを中心に、北海道は札幌で結成された5人組である。

まずは「シューズは脱がないで」からこの日のライブをスタート。コロナ禍における活動休止状態から新体制となり、3カ月連続リリースの第1弾となった楽曲だ。〈Spot light 浴びるまで シューズは脱がないで〉という歌詞は、再び音楽に向き合う彼らの決意表明とも取れるもの。何よりKazuki Ishidaが持つ、艶やかで伸びのある歌声に改めて驚かされた。

また『RADAR: Early Noise』のプレイリストにもセレクトされた「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」では、サビの4つ打ちキックに合わせて全員でジャンプ。さらに、「僕らにとって大切な楽曲をやりたいと思います」とKazukiが言い、〈目元だけ見て恋をした僕らの出会いは 口元をみて本気になって 愛に変わった〉とコロナ禍での恋をメロウに綴るR&Bチューン「Twenty-Twenty」をしっとりと歌い上げた。

続いて登場したのは jo0ji。漁師の父親を持ち、自身もアーティスト活動の傍ら地元である鳥取の漁港で働く異色のシンガーソングライターだ。この日のサポートメンバーは、1st EP『475』(2023年)で共同編集者として迎えたWONKの井上幹(Ba)と江﨑文武(Key)、そして松浦千昇(Dr)という強力なメンツ。「明見」は祭囃子の強烈なシャッフルビートと篠笛の音色がヘヴィでラウドなロックサウンドを導き出し、その上で jo0jiががなるように歌い上げる。ハスキーだが芯があり、高域の倍音成分を豊かに持つその声は唯一無二。ジョニー・ロットンやリアム・ギャラガーをも彷彿とさせる、不敵な佇まいで歌う姿に目は釘付けだ。最後は友人のために制作したというノスタルジックな名曲「不屈に花」を歌い上げ、大きな拍手と歓声が響き渡るなかステージを後にした。

この日特に盛り上がったのは離婚伝説。一風変わったこの2人組のユニット名も、マーヴィン・ゲイによる1978年発表のアルバムタイトル(原題は『Here My Dear』)から拝借した……といえばピンとくる人も多いだろう。肩まで届きそうなパーマヘアにティアドロップのサングラス、長身をデニム・オン・デニムで包んだカリスマティックな存在感の松田歩(Vo)、その隣で髭にサングラスという風貌の別府純(Gt)がテレキャスターギターをファンキーにかき鳴らす。

サポートメンバーにドラム、ベース、ギターそしてキーボードを迎え、まずは「あらわれないで」から。透き通るような美しいファルセットボイスがフロアに響き渡り、別府の精緻なカッティングがグルーヴを刻む。とびきりキャッチーなスキャットが耳に残る「スパンコールの女」を経て「愛が一層メロウ」のイントロが流れ出した途端、フロアの熱気が一気にアップ。延々と繰り返されるサビの〈愛が一層メロウ〉を、全員でシンガロングし一体感を高めた。そして、ラストの「メルヘンを捨てないで」のアウトロ中に松田がステージを去ると、別府の強烈なギターソロタイムへ。最後の最後まで観客にインパクトを残した。

ここで登場したのは、冒頭で述べた通り昨年の『RADAR: Early Noise 2023』に選出されたFurui Riho。ドラム、ギター、キーボードを従え、まずは2022年のアルバム『Green Light』から「青信号」を披露。ソウルフルなハイトーンボイスとアクの強いラップをスムーズに行き来しながら、〈NO NO NO NO no more cry yeah / NO NO NO NO nobody can stop me〉と歌うこの曲は、「自分の道は自分で切り拓こう」というメッセージが込められたガールエンパワメントな曲だ。

「これマジなんだけど……ほんっとうにマジなんだけど、『RADAR: Early Noise』に選んでもらって私、人生変わりました。ありがとう!」と、今日の出演アーティストたちへのエールにも取れる感謝の言葉を述べるとフロアからは温かい拍手と声援が巻き起こる。そして、〈We are we are we are / もう1人じゃない〉と歌う「We Are」でコール&レスポンス。最後に披露した「Purpose」のサビでは、「お手を拝借!」と叫びハンズアップを促すなど、初見のオーディエンスを前に貫禄すら感じさせるパフォーマンスを披露した。

そして、この日最後に登場したのはサバシスター。2022年に結成され、わずか2年でPIZZA OF DEATHとマネージメント契約を果たし、さらに先日3月8日(サバの日)にポニーキャニオンよりメジャーデビューしたばかりのスリーピースバンドだ。

Spotifyのロゴを描いたスケッチブックを掲げ、サポートメンバーのサトウコウヘイ(Ba)と共に現れたなち(Vo/Gt)、るみなす(Gt/Cho)、ごうけ(Dr/Cho)の3人。1stフルアルバムタイトル曲「覚悟を決めろ!」で幕を開けたライブは、ツンのめるようなシャッフルビートの「ナイスなガール」、疾走感あふれる「スケボー泥棒!」と畳み掛ける。日常の中から拾い上げたテーマを独特の視点と切れ味鋭い言葉で綴る歌詞、それを歌い上げるポップでキャッチーなメロディ、そして同期演奏を使わずたった3人(+1人)で作り上げる鉄壁のバンドアンサンブルは、同世代の若者たちだけでなく90年代メロディックパンク世代のハートも鷲掴みする。

「いいことも悪いことも、全部受け入れて生きていきましょう」、そうなちが叫んで「タイムセール逃してくれ」を演奏し、本編は終了。鳴り止まぬアンコールに応え「サバシスター's THEME」で、この日のイベントを締め括った。

この日出演したどのアーティストも、これまでありそうでなかったオルタナティブな感性を持っており、それが今度どのように開花していくのかが今から楽しみになるような、実に有意義なイベントだった。

(文=黒田隆憲)

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