【3月19日付社説】プーチン氏5選/国際的な信任は得られない

 2022年2月のウクライナ侵攻開始以来、初めてのロシア大統領選で、現職のプーチン氏が通算5回目の当選を果たした。ほかに共産党の下院議員や極右、自由民主党の党首ら3人が立候補したものの、プーチン氏が9割近くの得票率で圧勝した。

 今回の大統領選は、侵攻に反対の立場で立候補を目指した元下院議員が中央選管に候補者登録を拒否された。反戦を訴える候補者は一人もおらず、侵攻の是非は議論されなかった。ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東部・南部4州の占領地では、武装した兵士が戸別訪問し、銃を突きつけ投票を強制した。民主的に行われた選挙でないのは明らかだ。

 2000年の初当選以来、政治の実権を握り続け、反政権勢力を弾圧し、国民やメディアへの言論統制を強化してきた。選挙直前には、最大の政敵とされた反政府活動家が収監先の刑務所で亡くなるなど、不審な出来事もあった。

 プーチン氏は「この選挙は、国民からの信頼の結果だ」と勝利を宣言した。自身の意に沿わない人物は排除し、自由や公正さを欠いた選挙で国民から「信任」されたと主張しても、国際的な信用は決して得られない。大国の指導者として恥ずべき事態だ。

 プーチン氏は勝利宣言で「ウクライナ侵攻を目的達成まで続ける」とも明言した。停戦交渉については「交渉は拒まないが、ロシアの安全保障確保が前提だ」との姿勢を崩していない。

 侵攻開始以降、欧米諸国や日本が経済制裁を科しているものの、原油や液化天然ガスなどの輸出は順調で、戦時経済体制であっても国民生活への影響は少ないとされる。こうした経済状況もプーチン氏の強硬な姿勢の背景にある。

 侵攻が長期化するなか、圧勝したプーチン氏はさらに軍事力を強化し、欧米との対決姿勢を強めていくだろう。停戦への道筋が簡単につくとは思えない。

 ウクライナでは多数の民間人らが安全を脅かされ、犠牲になっている。国際社会は経済制裁の強化を含め、あらゆる外交努力を尽くし、一刻も早い停戦や終結を実現しなければならない。

 プーチン氏は北大西洋条約機構(NATO)の拡大阻止を掲げてきた。しかし侵攻以降、北欧のフィンランド、スウェーデンが新たに加盟し、対ロ包囲網がさらに強化される結果となった。

 世界の分断や緊張感の高まりを招いているのは、独裁や侵略をやめないプーチン氏である。即刻、そうした政治をやめるべきだ。

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