「最近、仕事のやる気が起きない」…管理職世代を襲う〈男性の閉経〉の正体【医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「男性の閉経」とも呼ばれている男性の更年期障害。その症状は多岐に渡り、仕事のパフォーマンスに影響を与えることも少なくありません。男性更年期障害が仕事にどのような影響をおよぼすのか、また、その対策について、日本初の男性更年期障害クリニック「オトコノクリニック」を開院した中村有吾院長が解説します。

「男性更年期障害」とは?

男性更年期障害は「男性の閉経」とも呼ばれており、中年期以降の男性においてホルモンバランスの変化によって生じる、一連の身体的および心理的症状を指します。この現象は、女性の更年期障害と類似しているものの、発生メカニズムや症状には異なる点があります。男性では、主にテストステロンという性ホルモンの減少がその原因とされています。

原因は?

男性の性ホルモンであるテストステロンは、性的機能、骨密度、筋肉量、赤血球の生成、さらには心理状態にも影響を与える重要なホルモンです。男性の場合、30歳をピークにテストステロンの産生が徐々に減少し始め、年齢とともにその減少は続きます。

しかし、すべての男性がテストステロン減少による顕著な症状を経験するわけではありません。男性更年期障害が起こる具体的な原因は、ホルモン減少だけでなく、ストレス、生活習慣、疾患の有無など、多岐にわたります。

主な症状

男性更年期障害の症状は個人差が大きいですが、一般的には次のようなものがあります。

・疲労感
・睡眠障害
・鬱状態やイライラ感
・性欲の減退
・勃起機能の低下
・集中力の低下
・体重増加
・筋肉量の減少と脂肪の増加
・骨密度の低下

これらの症状は、テストステロンの減少以外にも、加齢に伴う身体の変化やストレスなど、複数の要因が絡み合って発生する可能性があります。

症状には個人差が大きい

男性更年期障害は、中年期以降の男性にみられる一連の症状であり、テストステロンの減少が主な原因とされています。しかし、症状は個人差が大きく、診断や治療には個々の状態を考慮することが重要です。生活習慣の改善や適切な医療介入によって、多くの場合、症状の管理と生活の質の向上が可能です。

男性更年期障害に対する理解と適切な対応が、中高年男性の健康維持には不可欠です。

男性更年期障害が仕事におよぼす影響

前述のとおり、男性更年期障害は、テストステロンという男性ホルモンの減少によって引き起こされる症状のことです。さまざまな症状を引き起こし、これが仕事へも影響することがあります。特に40代後半以降の管理職世代の方が更年期障害になりやすく、

①イライラしやすくなる

②やる気が起きない

③物忘れや集中力の低下

といった症状は、職場でのパフォーマンス低下や人間関係に悪影響をおよぼす可能性があります。

①イライラしやすくなる

テストステロンの減少は、感情のコントロールを難しくさせることがあります。これは、ストレス耐性の低下や、些細な問題に対しても過剰に反応してしまう原因となり得ます。職場では、チームメンバーや上司とのコミュニケーションにおいて、このようなイライラが摩擦や誤解を生むことがあります。特に、プレッシャーの高い環境や締め切りに追われる状況では、感情の管理がさらに困難になることも。

②やる気が起きない

男性ホルモンの減少は、一般的な意欲の低下を引き起こすことが知られています。これには、仕事へのモチベーションの低下も含まれ、タスクへの取り組みに対する意欲が湧かなかったり、仕事に対する満足感が得られにくくなったりします。この状態が続くと、パフォーマンスの低下につながり、キャリアの進展にも影響をおよぼす可能性があります。

③物忘れや集中力の低下

テストステロンの減少は、認知機能にも影響をおよぼします。これにより、物忘れが増えたり、集中力が維持できなくなったりすることがあります。仕事では、これらの症状がミスの増加や生産性の低下を引き起こす可能性があります。特に、複雑なタスクや細かい注意を要する作業を行う場合、これらの症状は大きな障害となり得ます。

更年期障害の症状を改善するには

これらの症状に対処するためには、まず医療機関を訪れ、症状の原因を正確に把握することが重要です。テストステロン補充療法などの治療が適切である場合もあります。また、ライフスタイルの改善、特に定期的な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理が有効となります。

職場では、タスクの優先順位をつける、短い休憩を取りながら作業する、仕事の進め方に変化をつけるなど、自分に合った働き方を見つけることも大切です。また、職場の同僚や上司に状況を説明し、理解と支援を求めることも、心理的な負担を軽減するうえで助けとなります。

男性更年期障害は、多くの男性が経験する可能性のある自然なプロセスです。症状による仕事への影響を最小限に抑えるためには、自身の体と心の変化を理解し、適切な対処を行うことが重要です。これにより、仕事の質を維持しながら、更年期を健康的に乗り越えることが可能になります。

中村 有吾
オトコノクリニック院長/なかむら産業医療コンサルティング事務所代表産業医

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