一青窈 25年前の女優デビュー作『珈琲時光』を振り返る

歌手の一青窈が、17日、都内で行われた「映画に愛される街、TOKYO!ーアート・キッチュ・エキゾチズムー」の開催を記念したトークセッションに出席した。同企画は、世界中の映画作家が東京を舞台に撮った映画の特集上映。同日一青窈が女優デビューを果たした『珈琲時光』(2003年公開)上映され、当時のエピソードを語ってくれた。

作品のオファーが来たことについて聞かれると「新宿のホテルに監督に呼ばれまして、呼ばれたホテルが映画に出てくるような古いホテルの一室で、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督監督と通訳さんがいまして、延々と監督の夢を聞き続けました。それがオーディションみたいで、意外なシュールなオーディションを受けたことを覚えています」と回顧した。女優をやってみようと思ったきっかけについては、「演技というより、ミュージシャン以外の人とやるセッションだなというふうに掴んだときに、これは楽しいと思えて、もっとカチカチの監督さんで、きちんとした演技を求められていたら、たぶん今まで続けてこなかったと思います。監督のおかげです」と監督に感謝した。

撮影について聞かれると「周りがベテランの役者さんばかりだったので、しかも自分が歌手というのもあって、土俵がここじゃないというのもあったので、失敗してもいいやって、みんながなんとかしてくれるみたいな感じでした」と語った。『珈琲時光』というタイトルなのに、なんと一青窈は珈琲が飲めないそうで、「牛乳ばかり飲んでいるんですよ。印象としては牛乳なんですよ。牛乳が毎日当たり前のようにあるものでした」と明かした。印象に残っているシーンについては、「今作は25年ぶりの上映だれることになったが、「電話のシーンで実際に電話をかけてくれたんですよ。今って電話をしている演技だけで、私は実際にしゃべっていたので、すごくやりやすかったですね。制作側が素人をいかに女優にしたてるかということを考えてくれたと思います」と明かした。

当時の台本がかなり薄かったことに驚かされたそうだが、「セリフがほぼなくて、アドリブで動いてくれって感じだったんですよ。設定とか背景とかが書いてあるけど、雨だったら雨のシーンにしたり、天気も自然に任せていましたね。ここで作りこんでも、本番で変わっちゃうので、あまり予習もしないで、その場の土壇場の動きを面白がっていました」とコメントした。共演者の小林稔侍の思い出について聞かれると「愉快な人でしたね。出演者にいたずらをするんですよ。足の裏をくすぐってきたりしてきました。そこで自分を立て直すのが大変でした」と話した。続けて「稔侍さんが昭和のお父さんみたくて、ビール飲んで扇風機があって、野球を見ているシーンがあって、すごく好きで、昔はこうだったねとか、それぞれの懐かしい風景が入っているので、そういう意味では安心しましたね」と語った。

最後に一青窈は「私は映画が好きでひとりで単館の映画館に行っていたんですよ。映画館では無言ですし、孤独になる時間を持つという意味で映画館ってすごく貴重だと思うので、こうやって皆さんが足を運んでくれることがうれしいです。たくさん映画を映画館で観てほしいです」と呼びかけた。

© 株式会社ジェイプレス社