開栓後の〈日本酒〉を美味しく堪能するための「保存方法」と「注意点」【専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

少しずつ味わって楽しみたい「日本酒」。一度封を開けたら、どれくらいフレッシュな美味しさを保てるのでしょうか?葉石かおり氏監修、近藤淳子氏著の『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、詳しく見ていきましょう。

日本一大酒飲みの県は?

日本一大酒飲みの県について、日本酒の消費量データから分析しましょう。

2016(平成28)年の国税庁統計によりますと、日本酒の1人当たりの消費数量はトップが新潟県、2位秋田県、3位石川県、4位山形県、5位福島県という結果でした。酒造数が1位の新潟県は、消費量でも首位です。

2020(令和2)年の1人当たりの消費量は、1位新潟県、2位秋田県、3位山形県、4位福島県、5位石川県となっています。

酒どころの東北や日本海側で消費量が多く、焼酎王国である九州は少ない傾向があるようです。ただ、佐賀県だけは全国平均を上回っていました。佐賀県には、鹿島市と嬉野市の蔵が一体となって開催される「鹿島酒蔵ツーリズム」という大盛況のイベントがあります。2019(令和元)年には、鹿島市の人口約3万人に対して、2日間で約10万人もの観光客が訪れたほどです。私もお猪口と地図を片手に、長い行列に並んで新酒を堪能したり、情緒豊かな武家屋敷や白壁の酒蔵通りを散歩したりと、楽しませていただいたことがあります。

アルコール全般の1人当たりの消費量(2020年)は、1位東京都、2位高知県、3位青森県、4位秋田県、5位富山県。コロナ禍以前は首位の東京に続いて、大阪府、神奈川県、愛知県などがランキング(2017年)されており、コロナ禍における都市圏への飲酒量の大打撃が伺えます。

ところで、大酒飲みといえば、最初にイメージするのは「高知県」という方は多いのではないでしょうか? コロナ禍以前は、高知県の消費量ランキングは決して上位ではなかったのですが、2020(令和2)年には2位に大躍進しました。

高知県といえば、「べろべろの神様」という大人の酒遊びがあります。「Shikoku Sake Trip 4県の蔵元と四国の酒を旅しよう♪」という四国の酒蔵が東京に大集合するイベントで司会をした際、高知県の蔵元が主導し、参加者たちと一緒に盛り上がったゲームです。

まず、5~10名くらいの男女でチームを作り、輪になります。次に皆でお題を決めて、歌を歌いながらコマを回します。お題は、「一番、お酒が強いのは誰?」「今日一番のモテ男(女)さんは?」など、その場が盛り上がるような内容を出し合います。そして「べろべろの神様は正直な神様よ(お題)の方へとおもむきゃれおもむきゃれ」と皆で声高らかに元気よく歌います。回るコマが止まったとき、コマの指し示す方向にいた人が、可杯(べくはい)でお酒を飲み干すというものです。

可杯とは、高知県の伝統酒器のこと。おかめ(20ミリリットル)、ひょっとこ(50ミリリットル)、天狗(144ミリリットル)のお面の形状をした酒器3種類があります。一番小ぶりのおかめは唯一、テーブルに置くことができるので、一気に飲み干さなくても大丈夫。ひょっとこの口には小さな穴があり、お酒が注がれ始めたら指で押さえていないと漏れ出してしまうため、なみなみと注がれるまで指を離せなくなります。天狗は長い鼻先までお酒が入り、通常のお猪口の3倍以上の量が入るビッグサイズ。しかもテーブルにも置けないので、手に持ったまま飲み干さなければいけない状況に追い込まれます。

意中の女性に天狗が当たってしまったら、すかさず男性が身代わりに飲んでその女性を守ったり、あっけらかんと飲み干す人に人気が集中したりと、様々な人間模様が浮き彫りになるのも可杯の魅力かもしれません。

高知県のべろべろの神様のおかげで、初対面の参加者同士の距離が一気に縮まったのはいうまでもありません。

日本酒に「賞味期限」はある?

開栓前の日本酒であれば、賞味期限はありません。ほとんどの食品や飲料には賞味期限が記載されていますが、日本酒には表示義務はなく、開栓前の日本酒であればアルコールの殺菌作用によって腐ることがないため、長期間の保存が可能とされているからです(蔵のポリシーで、賞味期限が設けられている稀なケースもあります)。

ただ、日本酒は非常にデリケートな酒質なので、①光(日光)、②温度、③酸素の影響を受けやすいことを覚えておくと良いでしょう。

例えば、夏場に直射日光の当たる室内に置きっぱなしにすると、日光と温度の影響を受けて、「老香(ひねか)」という、腐った沢庵のようなオフフレーバーが発生し、酒質が劣化する可能性があります。また、日本酒を長時間開栓したままにすると酸化が一気に進み、鼻につくような酸っぱい匂いがしてくることもあります。

特に火入れをしていない生酒は酒質が変化しやすいので注意が必要です。私は、生酒(四合瓶)ですとフレッシュ感を楽しみたいため、開栓後3日以内くらいで飲み切るようにしています。火入れされている日本酒は常温保存でも大丈夫ですが、光と温度には気を付けた方が良いので、季節を問わず冷蔵庫に入れています。

日本酒は、しっかりした環境で保管して、ベストな状態で楽しみたいものです。

万が一、酒質が劣化してしまった場合は、お風呂に入浴剤として入れると、アミノ酸によるお肌の美容効果が期待できます。煮物や炒め物の味わいをマイルドにしてくれる効果もあるので、料理酒としても活用できます。

近藤 淳子
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
副理事長、フリーアナウンサー

葉石 かおり
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
理事長 酒ジャーナリスト、エッセイスト

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