日銀が大規模緩和策を修正、17年ぶり利上げ 国債買い入れは継続

Takahiko Wada

[東京 19日 ロイター] - 日銀は18―19日の金融政策決定会合で、大規模金融緩和策の修正を賛成多数で決めた。物価2%目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと判断、マイナス金利を解除して無担保コール翌日物金利をゼロー0.1%程度で推移するように促す方針に変更した。イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の枠組みを撤廃する一方、市場で不連続性が生じないように国債買い入れは継続するとした。

日銀の利上げは2007年2月以来、17年ぶり。

YCCを撤廃し、今後は短期金利の操作が主たる政策手段になる。日銀当座預金の超過準備にプラス0.1%の付利を実施することとし、この付利を指標に、無担保コールレートがゼロー0.1%程度で推移するよう市場調節を行っていく。

新たな金融市場調節方針は賛成7・反対2で決定。中村豊明委員は、上場投資信託(ETF)買い入れの終了には賛成だが、マイナス金利政策は「業績回復が遅れている中小企業の賃上げ余力が高まる蓋然性を確認するまで継続すべきだ」として反対した。野口旭委員は、賃金と物価の好循環の強まりを慎重に見極めるとともに、金融環境に不連続な変化をもたらすリスクを避ける観点から「長短金利操作とマイナス金利政策の同時撤廃は避けるべき」として反対した。

新たな市場調節方針や付利金利は21日から適用する。マイナス金利の解除に伴い、貸出増加支援オペ、被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペは貸付利率をゼロ%から0.1%に引き上げる。貸付期間1年で実施する。

<ETF、新規買い入れを終了>

長期国債の買い入れは、これまでとおおむね同程度の金額で継続する。長期金利が急速に上昇する場合には、毎月の予定額にかかわらず、機動的に買い入れ額の増額や指し値オペ、共通担保オペなどを実施するとした。

日銀は足元で月間6兆円程度の長期国債を買い入れている。実際の買い入れは、これまで通り、ある程度の幅を持って予定額を示し、「市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していく」とした。

新たな長期国債の買い入れ方針は賛成8対反対1で決定。中村委員は金融市場調節方針と同様の理由で反対票を投じた。

長期国債以外の資産買い入れのうち、ETFや不動産投資信託(REIT)は新規の買い入れを終了する。CPや社債については買い入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買い入れを終了するとした。

長期国債以外の資産買い入れの終了方針は全員一致で決定した。

<物価目標「見通せる状況に至った」>

日銀は声明文で、賃金と物価の好循環を確認し、展望リポートの見通し期間終盤にかけて「2%物価目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」と明記。これまでの長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みおよびマイナス金利政策は「その役割を果たした」とした。

金融政策の先行き指針を一新し、今後は引き続き、2%物価目標の下で経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営すると表明。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば「当面、緩和的な金融環境が維持する」とした。

これまで、先行き指針にあったマネタリーベースの増加方針を示すオーバーシュート型コミットメントは「その要件を充足したものと判断する」として削除された。

<景気の現状判断は後退>

日銀は、景気の現状判断について「一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復している」として1月の展望リポートで示した「緩やかに回復している」との表現から後退させた。生産や個人消費の判断を引き下げた。

一方、今年の春季労使交渉については「現時点の結果を見ると、昨年に続きしっかりとした賃上げが実現する可能性は高い」と指摘。日銀の本支店による企業へのヒアリング情報でも、幅広い企業で賃上げの動きが続いていることがうかがえるとした。

(和田崇彦)

© ロイター