「排外主義の塊のような法案」永住許可の取り消し制度、弁護士らが反対の記者会見

記者会見で、永住許可の取り消し制度成立に不安の声を上げるアダム・ブラウンさん(左)とミンスイさん

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永住許可の取り消し制度を盛り込んだ入管難民法改正案が閣議決定されたことを受け、外国人支援に取り組む弁護士や永住者たちが3月19日、東京・千代田区の参議院議員会館で記者会見を開いた。

永住者たちは、取り消し制度の導入により日本での生活基盤を失い、家族らと離別することへの不安を訴えた。

何が問題になっている?

政府は15日、外国人技能実習制度に代わる新たな「育成就労制度」を創設する入管難民法の改正案を閣議決定した。

法案には、永住許可を得ている外国人が税を納付しなかったり、拘禁刑に処されたりした場合、永住資格を取り消すとの内容が盛り込まれた。さらに、在留カードの常時携帯など入管法上の義務を遵守しない場合も、取り消しの対象となる。

現在の制度でも、永住者の在留資格を一度得たからといって、永住許可を受け続けることができるわけではない。虚偽の申請をしたり、1年を超える懲役や禁錮刑に処され強制退去となったりした場合などは、永住資格を失う。

法案の規定について、丸山由紀弁護士は記者会見で、「失業や病気、高齢化などによって生活状況が変わり、税の納付が難しくなることは誰にでも起こり得る。日本国籍者と同様に、督促など税に関する法規で対応すれば足りることだ」と強調した。

加えて、拘禁刑に処された場合も取り消しの対象となることについて、「これも日本国籍者と同様の刑罰とその後の社会での更生で十分であり、それ以上の処分は外国籍者に対する差別だ」と指摘した。

法案は、永住資格を取り消す場合、法相の職権で別の在留資格への変更を許可すると定めている。これに対し、丸山弁護士は「資格変更の判断は職権で行われるため、中長期の在留資格が許可されるとは限らない」と問題点を挙げた。

「永住許可取り消しは、『外国籍の人に対しては一生管理を続ける』という制度に他ならない。永住者という、最も安定した在留資格をやっとのことで得た人でも、国の方針を変更してその地位を剥奪できるようにするというのは本当に恐ろしいこと」(丸山弁護士)

「家族にも取り返しのつかない損害」

記者会見では、日本で暮らす永住者たちも発言した。

イギリス国籍を持つアダム・ブラウンさんは、2009年に来日し、日本国籍の妻と子どもの家族3人で暮らしている。

「日本は私の故郷であると実感し、日本社会に貢献できることを誇りに思っています。だからこそ今回、永住資格の取り消しに関する法案が突然出されたことを、深く憂慮しています。息子は『パパ、(イギリスに)送り返されちゃうの?』と私に尋ねました。親として子どもにそのような質問されて、胸が苦しくなりました」

ブラウンさんは、自身と同じように永住者として日本で家族と生活する人々に言及し、こう訴えた。

「日本に強い帰属意識を持っている人たちの在留資格を取り消すことで、当事者のみならず家族にも取り返しのつかない損害を与えます。家族そのものを崩壊させ、これまで築いてきた平穏な生活が一瞬のうちに破壊されかねません。決して大げさではないと思っています」

ミャンマー出身のミンスイさんは、「外国人であっても、日本の社会をある部分で支えています。税金を滞納する場合、日本人と同じように元々ある法律で対応するので良いのではないでしょうか」と疑問を呈した。

オンラインで発言した中国出身の永住者。家族と離れ離れになることの不安を訴えた

オンラインで発言した中国出身の永住者は、「いつしか自分や周りの永住者の人が永住資格を取り上げられ、家族が離れ離れになるかもしれないと考えると不安です」と訴えた。

駒井知会弁護士は、「永住者として日本に根付いて暮らして来た人々を使い捨てにする国で、誰が幸せになれるのかということを問いたい。こんな排外主義の塊のような法案は、絶対に通してはいけません」と述べた。

永住許可の取り消し制度をめぐっては、日本弁護士連合会東京弁護士会も反対する会長声明を発表している。

(取材・執筆=國﨑万智@machiruda0702

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