本格的な就職活動が始まる前の大学1年生から参加できる3カ月以上の「長期インターン」。短期インターンと違い、社員と同じ業務にあたり、給与も発生します。特にアフターコロナの今、就活生からも企業からも引き合いが増えています。
需要が高まる長期インターンについて、「中日BIZナビ」の大森準編集長に解説してもらいました。
キーワードは「ガクチカ」
――アフターコロナの今、なぜ長期インターンの需要が高まっているのでしょうか。
中日BIZナビ 大森準編集長:
「就活生や企業ともミスマッチをより少なくしたいというのが背景にあります。また、コロナ禍で3年間、失われてしまったというのも理由の1つです。そこでキーワードになるのは『ガクチカ』です」
――「学生時代に力を入れたこと」(ガクチカ)ですね。なぜ「ガクチカ」がキーワードになるのでしょうか。
「コロナ禍では授業はリモートになり、サークル活動なども制限されました。就活の面接の際に多くの企業が聞く『ガクチカ』が“なにもない”という学生が多くいるのです。そこでじっくり臨める長期インターンは『ガクチカ』として自分をアピールする題材になり、ほかの学生と差別化できるので人気になっています」
「会社のことを知れるのはインターンならでは」
実際に長期インターンに参加する2人の学生に話を聞きました。
岐阜県可児市のキャンピングカーメーカー「トイファクトリー」で長期インターンとして勤務する鈴木ひとみさんと松久美羽さん。トイファクトリーの実車に触れて、特徴や使い心地を体感するのも仕事の1つです。営業社員とともに商談に臨んだときの客とのコミュニケーションに生かします。
名古屋外国語大3年・鈴木ひとみさん:
「会話を楽しんでくれるお客さまが非常に多いので、会話を楽しむことを覚えたところから、自分が変わりました。営業する楽しさも感じました」
松久さんは今回の長期インターンを通して、卒業後の2025年4月にトイファクトリーに入社しようと決めました。
都留文科大学(山梨県)3年・松久美羽さん:
「この会社の社員にすごく魅力を感じました。社員の知見・経験を吸収した自分の姿を見るのが楽しみです。こうして会社のことを知れるのは、インターンならではだと思います」
「獲得したい」と考える人材に出会いやすい
――長期インターンは企業側も注目しているのですか。
中日BIZナビ 大森準編集長:
「長期インターンの求人サイトを運営している名古屋大学発のベンチャー『One Pile(ワンパイル)』の岩田知旺社長によると、東京などの首都圏ではコロナ禍前から長期インターンが活発でしたが、最近では東海圏でも導入する事例が増えているそうです。
ワンパイルが手がける求人サイト『Job Packer(ジョブパッカー)』は2021年2月の開設以来、東海3県の累計250社ほどが求人掲載をしています。特に従業員数50人以下など小さい事業所の割合が多いと言います。
大手企業などと待遇面を比べられると、中小企業は見劣りしてしまいがちです。その点、長期インターンは会社の雰囲気や強みなどを学生に体感してもらうことで、入社を希望してもらえる可能性が高まります。獲得したいと考える人材に出会いやすいのも利点です」
長期インターンを違う側面で活用している企業もあります。名古屋発祥のベンチャー企業「ベータ」が手がける就職活動がテーマのユーチューブチャンネル「名キャリ」の動画です。就活で使えるテクニックについて話すのは西川千香子さん。2024年4月に専門商社に入社予定ですが、この動画が公開された当時は現役の就活生でした。
西川千香子さん:
「自分の思いを伝えることが苦手だったので、こういった活動の経験を通して、自分の思ったことを自信をもって伝えられるようになりました」
――ベータの取り組みについて、どのように捉えていますか。
中日BIZナビ 大森準編集長:
「ベータでは若者の感性を事業の戦力として活用しています。今後は採用を主目的にインターンを受け入れつつ、戦力としても活用する事例は今後も増えていきそうです。
これまでインターンは、採用に直結させることは禁止されていました。しかし2025年卒の就職活動からは、大学3年の夏以降に一定の条件を満たすインターンに参加した場合、採用選考に利用できるという新ルールが適用されます。この先、長期も含めたインターンはより重要性が増すと思います」