被害者を「運び屋」に利用も…覚醒剤密輸グループトップ逮捕で分かった「国際ロマンス詐欺」悪の錬金術

歌舞伎町を拠点する覚醒剤密輸グループのトップ逮捕でロマンス詐欺のあくどすぎる一端がみえてきた(momo / PIXTA)

今月7日、警視庁は覚醒剤約5.7キロをイスラエルから密輸したとしてナイジェリア国籍の無職・エボ・ジェレマイヤ容疑者(56)を覚醒剤取締法違反容疑(営利目的輸入)で逮捕したと発表した。エボ容疑者は歌舞伎町を拠点とするナイジェリア人グループのトップと見られており、逮捕に至ったのは、恋愛感情を利用した『国際ロマンス詐欺』が端緒だったという……。

社会部記者が言う。

「エボ容疑者と思(おぼ)しき人物は架空の黒人男性を名乗り、21年ごろから会員制交流サイト(SNS)を通じて30代女性とやり取りを続けていました。そして、〝いつか一緒に住もう〟などの言葉で女性を惑わし、信頼を得た上で女性が勤務する会社事務所に覚醒剤の入った荷物を送りつけました。荷物を送られた女性は中身が何なのかは知らなかったようですが、22年6月に覚醒剤取締法違反容疑(営利目的輸入)で逮捕。ですが、逮捕後に不起訴となり釈放され、その後の捜査でエボ容疑者の存在が浮上しました」

23年の被害総額は約177億3000万円

ナイジェリアが発祥とされる『国際ロマンス詐欺』を利用した密輸入事件――。

警察庁によると恋愛感情を利用した『国際ロマンス詐欺』による被害総額は23年には約177億3000万円に上っており、看過できない状態になっているという。

「被害者の多くはSNSやマッチングアプリなどで知り合った異性から複数回のやり取りを経て当人と接触する前に〝将来のため〟などと投資を持ちかけられたり、現金や仮想通貨を送金したりすることを要求されています。ロマンス詐欺は日本だけではなく世界的にも存在していますが、日本で行われているロマンス詐欺は日本語でやり取りが行われているケースが多いため、背後には日本人役を供給する暴力団の存在も見え隠れします」(同前)

金銭要求でなく、覚醒剤の送り先として利用した「珍しいケース」

今回のケースでは金銭を要求される代わりに覚醒剤の送り先として利用された「珍しいケース」(捜査関係者)だというが、こうした事態に警察庁の露木康浩長官は、7日に行われた定例記者会見で「1日あたりに換算すると、毎日1億2000万円以上の金銭がだまし取られているきわめて憂慮すべき状況。新たな警戒の空白とならないように各種対策を強力に進めたい」と述べ、各都道府県警に対し、国際ロマンス詐欺の抜本的対策を強化するよう指示を出した。

偽装結婚など利用で在留資格獲得も

「逮捕されたエボ容疑者らのグループの多くは偽装結婚などを利用して在留資格を得ているものも多いようです。警察は今後、グループの実体解明を含め背後関係などの突き上げ捜査を行う方針です」(前出の社会部記者)

国際ロマンス詐欺。恋愛感情を極度に悪用した犯罪であり、徹底解明が強く期待される。

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