妊娠がわかったものの、「出産にはお金がかかると聞いて不安」「貯金が少なくて足りるかわからない」「理想的な貯金額はいくら?」といった金銭面の悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
出産には多額の費用がかかります。ただし、国の制度で受け取れる手当や助成などもあります。
この記事では、妊娠~出産にかかる費用と、出産前に貯金しておきたい金額の目安を紹介します。
この記事でわかること
- 出産にかかる費用相場
- 出産費用を準備する際の注意点
- 費用を用意できないときの対処法
出産にかかる費用相場
出産にあたっては、妊娠中に定期的に受ける検診の費用、分娩時の入院費用、産まれてくる赤ちゃんに必要なものをそろえる費用など、さまざまなお金が必要になります。
ここでは3つの時期に分けて、それぞれどんな費用が、いくらかかるのか紹介します。
- 出産前
- 出産時
- 出産後1年間
出産前にかかる費用
妊娠してから出産するまでにかかる費用として代表的なのが、「妊婦健診」の費用です。
妊婦健診は、母親と赤ちゃんの健康状態を確認し、安全に出産するために重要なものです。基本的には保険適用外となり自費で支払う必要があります。ただし、母子手帳が交付されたあとは、自治体が支給している妊婦健診の補助券などが利用できるため負担が軽くなります。
妊婦健診の費用は地域や医療機関によって異なりますが、目安は以下の通りです。
1~2回目の検診で妊娠の確認が取れたあとに母子手帳が交付されるため、それまでは1回あたり1万円程度の自己負担が発生します。全部で14回ほど受診するのが一般的です。
妊婦健診の費用は、合計5万~10万円程度は必要と考えておきましょう。
そのほか、人によってはマタニティグッズ(マタニティウェア、マッサージクリーム、抱き枕など)の購入費として2,000~2万円程度かかる場合もあります。また、里帰り出産など遠方での健診や出産を予定している場合は、交通費がかかる点も考慮しておきましょう。
出産時にかかる費用
出産時には「入院・分娩費用」がかかります。産院によっても異なりますが、厚生労働省の調査によれば以下の通りです。
50万円程度が平均的な水準ですが、年々上昇傾向にあります。無痛分娩は追加で10万~15万円ほどかかるのが一般的です。また、個室での入院などオプションを選択した場合も、別途料金が必要になります。
ただし、出産にあたっては、加入している健康保険組合から出産育児一時金として50万円が給付されます。出産時の費用はこの50万円で大部分をカバーできるため、過度に心配する必要はないでしょう。
また、会社に勤めていて育児休業をとっている場合には、出産手当金を受け取れる可能性があります。1日あたりの支給額は標準報酬日額の3分の2相当で、受け取れる期間は仕事を休んだ日数や出産日によって変わります。
正常分娩(医学的な処置なしで自然に出産できた場合)は健康保険の適用外ですが、帝王切開が必要になった場合など正常分娩以外(異常分娩)は健康保険の対象になります。異常分娩の場合、民間の医療保険に加入していれば手術給付金や入院給付金を受け取れる可能性もあります。
なお、出産でもらえるお金については、こちらの記事『出産でもらえるお金一覧』も参考にしてください。
出産後1年にかかる費用
子どもが産まれた直後~1歳になる頃までにかかる費用を確認しましょう。目安は以下の通りです。
ベビーカーやベビーベッドなど購入するものの値段によっても変わりますが、トータルで50万円程度かかるといわれています。
ただし、これらの費用は妊娠中の費用や出産時の費用と異なり、節約する余地があります。費用を抑えたいときは、セールなどのタイミングを狙って買う、中古品やレンタルを利用するなどの工夫をしてみましょう。
出産前の理想的な貯金目安は?
前述の費用相場をもとに、出産までに用意しておきたい金額はいくらなのか算出してみましょう。
出産に必要な費用の相場
- 出産前にかかる費用:10万~20万円
- 出産にかかる費用:50万円
出産にかかる費用と受け取れる金額が同程度になる場合もあります。いずれも人によって差が大きく、異常分娩の場合は出産費用がかさみます。また都市部の場合は、出産費用が高くなる傾向にあります。そのため、できれば50万円程度、理想的な出産前の貯金額を見積もるなら100万円程度用意しておくとよいでしょう。
なお、専業主婦やフリーランス(自営業者)が出産する場合は、出産手当金はもらえません。会社員や公務員などの場合より多めに資金を準備しておくのがおすすめです。
出産手当がもらえないケースについては、こちらの記事『出産手当金がもらえないケース』も参考にしてください。
出産費用を準備するときの注意点
出産にかかる費用を準備する際に知っておきたい注意点は、以下の通りです。
- 産まれ月によっては育休が長引く可能性がある
- 産院によって出産育児一時金の受け取り方が異なる
- 出産にかかる費用は多めに準備しておこう
産まれ月によっては育休が長引く可能性がある
産後、早めに仕事に復帰して収入減を回避しようと考える人もいるでしょう。しかし、子どもの産まれ月によっては育休が想定以上に長引く可能性があります。
例えば保育園の入園時期は4月、入園の申し込み時期は10~11月頃までが一般的です。
なお、園によっては「生後○ヵ月以上のみ可」など月齢による入園制限があります。早生まれの場合、誕生時点ですでに入園の申し込みが締め切られていることが多く、希望の時期に入園できない可能性が高いです。ただし、誕生前でも申し込みできるケースや、空きがあれば4月以外の途中入園が可能な場合もあります。
保育園に入れない場合は育休が長引き、育児休業給付金の金額に影響したり、元の収入に戻るまで時間がかかったりする可能性があることも考慮しておきましょう。
産院によって出産育児一時金の受け取り方が異なる
出産育児一時金は通常、産院に直接支払われ、実際にかかった分娩費用と相殺されることが多いです。これを「直接支払制度」「受取代理制度」といいます。出産時に50万円近い金額を自分で用意しておかなくても、差額分を支払うだけで済むため負担を軽減できます。
しかし、中にはこれらの制度に対応していない産院もあります。その場合、いったん自分で全額を支払ったあとで、健康保険に申請して出産育児一時金を受け取る形になります。
どちらの場合でも、結果的に支払う費用は同じです。しかし、現金の準備ができない場合には、制度に対応していないと困ってしまうでしょう。出産を希望する医療機関が対応しているかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
出産にかかる費用は多めに準備しておこう
前述の通り、出産のための貯金額は50万~100万円程度が目安です。しかし、多めに用意しておくに越したことはありません。
高額療養費など、想定外の事態が発生した場合にも頼れる制度はあります。しかし、いつどのようなイレギュラーが起こるかわかりません。
また当然ながら、出産後は子育てが始まります。多めに貯めておいた分は、将来かかるであろう教育費の支出に回すこともできます。出産前に貯金の習慣を身につけておくと、今後も役に立つでしょう。
出産費用を準備できないときはどうする?
「貯金なしで出産の時期を迎えてしまった」「手持ちの資金ではどうしても足りない」など、必要なお金が用意できないときの対処法を紹介します。
- 国の制度を利用する
- 親や親族に相談する
- フリーローンやカードローンを利用する
国の制度を利用する
お金が準備できずに困ったときは、まずは利用できる国の制度がないか確認してみましょう。
出産費貸付制度(全国健康保険協会)
全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している人は、出産育児一時金が支給されるまでのつなぎとして、無利子でお金を借りられる「出産費貸付制度」を利用できます。
協会けんぽ以外の健康保険でも、同様の制度を実施している場合があります。
国の生活福祉資金制度
国の生活福祉資金制度は、低所得者世帯などが利用できる貸付制度です。
一時的に生活が苦しくなったときに利用できるので、医療費がかさんだ場合などに役立ちます。
このほか、自治体によってはさらに独自の支援制度を用意している場合があります。自治体の公式サイトや、市区町村役場の窓口などで確認してみましょう。
親や親族に相談する
自力で資金を用意するのが難しい場合は、親など周囲の人を頼るのも1つの方法です。
親なら「子が困っているなら助けてあげたい」「孫の出産費用を出してあげたい」と考える人もいるでしょう。親に頼れない場合は、その他の親族や友人・知人に頼る方法もあります。
国や金融機関から借りるのと違い、金額や金利、返済方法などに融通が効きやすい点はメリットといえます。しかし、もし返済できなかった場合は、人間関係が悪化するリスクもあります。借りた場合は、誠意を持って確実に返済するようにしましょう。
医療ローンやフリーローンを利用する
医療ローンやフリーローンを利用する方法もあります。医療ローンやフリーローンは、銀行や消費者金融などの金融機関でお金を借りられるサービスのことです。
インターネットで申し込めるなど手軽ですが、金利が高い点がデメリットです。
医療ローンやフリーローンは利用する金融機関によって、金利や借りられる金額、借りるまでのスピードに差があります。どこで借りるか検討する際は、複数社を比較して自分に合ったところを探すようにしましょう。
ローンを比較するなら、クラウドローンがおすすめです。クラウドローンでは、匿名で登録するだけで、複数の銀行からローンのプラン提案を受けられます。
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まとめ
出産には、妊娠中の妊婦健診費用、出産時の分娩費用、出産後の育児費用などさまざまな費用がかかります。しかし、国や自治体が用意している支援制度なども多数あります。受け取れる一時金や給付金の金額をあらかじめ把握しておくと安心です。
出産前に用意しておきたい貯金額は、目安として50万~100万円です。しかし、これはあくまで最低限の金額です。多いに越したことはないので、できるだけ早くから計画的に貯めていくようにしましょう。
資金が不足するときは、国の制度や金融機関のローンを活用するといった対処法もあります。
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